A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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IBD体験記(10) プロジェクト(2) Snarewearのマーケティング

続いては、有機綿花の話に並行して行われた、もう1つのプロジェクトについて記録に残しておきます。もう1つ並行してやらざるを得ない羽目になったのは、大人の事情によります。ザンビアの現場側は有機綿花のプロジェクトをやりたくなかったのですが、我々学生は本社側との契約上3週間滞在することは決定していたため、現場から「じゃあ綿花のかわりにこっちをやってくれないか」と提案されたのが、このSnarewearのプロジェクトなのです。ちなみに、Snarewearについては、下記リンクが公式ページになります。

Snarewear公式ページ
Snarewear写真の例

前のプロジェクトとの関連も含めてプロジェクトの背景を記載すると、「野生動物を捕獲して食料にせざるを得ない貧困者たちは、サファリに鉄条網の罠を張り巡らせていました。人間も引っかかって危険なほどの状態でした。そこで、この企業が貧困者を農民にしていく過程で、同時に鉄条網の撤去を行った結果、鉄条網の山が在庫として積みあがりました。ここで、地元の芸術家Misojiさんが、この鉄条網を原料にザンビア人が日常に身につけるアクセサリーを作りはじめました。その際、このアクセサリーには、『Snare(ワナ)』から『Wear(身に着ける)』へ、という願いを込めて、Snarewearという名前をつけることになりました」。つまり、原材料はほぼ無料で大量に手に入り、デザイナーも確保し、アクセサリー製造工場の労働力には今まで狩りをしていた人自身をあてがい、「狩りをやめさせてワナを減らして元ハンターが作ったアクセサリー」、という商品コンセプトもできた状態。

こうして我々に提案されたミッションは、「今後どのようにマーケティングして売っていくか、マーケティングプラン兼事業計画書の形でまとめてくれ」、というものになりました。ザンビアに向けた出発の2週間前に突然、初めてこの話を聞いたときの反応は、下記のものでした。
 - インド人: これはこれで面白そうだけど、綿花の方がインパクトがでかいから、綿花でいいんじゃない?
 - 中国人: 全然動きのない綿花よりも、こっちの方が全然面白そうだ。綿花を辞めてこっちをやろう。
 - パキスタン人: こんな意味不明なプロジェクトの決められ方は無い。やれと言われても、絶対にやらない。
 - 私: 面白そう。どっちみち空き時間の片手間に、丸1日程度で事業計画を書くくらいしかできそうに無いでしょう。であれば、やるやらないで揉めるくらいなら、問答無用で両方やってしまったほうが楽では?
 - 教授: これだけでも大きな1プロジェクトなので、今からこれに時間を割いていたら本来の有機綿花プロジェクトができなくなる。また、今からこの情報収集を開始しても、アウトプットの質は落ちてしまうだろう。一方で、綿花プロジェクトはクライアントの協力を得ないと全く手も足も出ない可能性もある。従って、綿花第一優先はそのままだが、もし綿花でできることが少なければ、代わりにこちらをやっても良い

この教授の意見を踏まえ、やるのかどうか決まらないまま出発。
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最初にザンビアのクライアントオフィスを訪問した時に、「もしどうしても綿花のプロジェクトやりたいなら、Snarewearをやってくれたら、農家にインタビューをセットしよう。」と当然交換条件を出されてしまう。さらに、「Snarewearの生みの親、芸術家のMisojiの家が、農家の近くでロッジ(民宿)を経営しているので、そこの宿も格安で提供できる」。このMisojiのロッジは朝食つきで1泊$30ですが、もしここを断ると、1泊$10だがトイレ電気水道全く無い廃墟のような建物か、1泊$100~300もする高級サファリリゾート(しかも高級といっても最低限の設備)かしかない。

ここでパキスタン人は相変わらず「これは俺は絶対にやらない」という態度でしたが、それ以外の3名で話し合った結果、予算の無い我々には、$30/日でこの設備はとても助かる上、芸術家の家に泊まれるのは面白そう。多少嵌められた感がありますが、「そのプランで行きましょう」、と決定。

すると、「そうか、良かった」と言われた直後に、その場でクライアント側の仮説として、「早速だが、ベストな解としては、例えばニューヨークやパリの美術館で1個$200位で売る販路を確立すること。あるいはeBayあたりで米国や欧州で売れるようにできないか、を知りたい」と言われる。、、、おいおい、そういうことならザンビアに来る前にアメリカで調べた方が良かったじゃん。ただ運良く綿花の調査の仮定で、そういう市場(パーティーでこれらのアクセサリーを身につけて、自然保護に貢献していることを誇示するお金持ちの婦人、とか)はある、と、米国で実際にこの業界でビジネスをやっている人に聞いていました。したがって、グローバル顧客側の調査に関してはその社長に軽くコメントを頂いた後クライアントのNY本社に自力で調べてもらうことにして、私達はザンビア側でできるマーケティング(Web含む)と体制構築に絞ることにしました。

こうして2週目の水曜日に初めてMisojiと会い、彼女が作ったディナーとともに、彼女自身にSnarewearの話をインタビューすることが、本プロジェクトの第一歩となりました。実は、前回の記事で39枚目と40枚目の写真に写っているロッジと食堂、そして43枚目で真っ暗な道端で電話会議をしているところの宿舎が、Misojiの宿なのでした。
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さて、Snarewearの実物の写真を紹介します。まず、Mfuwe空港のクライアントがハチミツとかを売っていた土産物屋さんの一角に、Snarewearのコーナーがありました。
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次に、Misojiのロッジで、その日に並べられていたものを掲載します(写真がMisojiです)。
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ちなみに、ここでの値段は、イアリング/ピアスが$2-$5程度、ブレスレットが$5-$10程度、ネックレスが$15-30程度で、旅行者向けの価格になっています。また、「Snarewear」と書かれた箱は、乾燥したゾウのフンから作られているそうです。草食動物のゾウのフンは、消化し切れなかった強い繊維でできているため、良い紙の原料として使われているのだそうです。
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実は、アフリカ人の芸術家と聞いて、ロッジに行くまでは「どういう気難しい人なのだろうか、ちゃんと会話とかできるのだろうか」という懸念が。が、実際にMisojiに話してみて、それは杞憂で、とても素晴らしい女性でした。元々ジンバブエに生まれ育っていたのですが、大学生の時に欧州に留学し、そこでドイツ人の研究者の方と結婚。こうしてアフリカ人女性として白人社会に入った時に、白人社会とアフリカ側の双方に様々な問題があることを、身をもって体験。その苦労と苦悩が積もって、芸術家になり、アフリカに戻ってきたのだそうです。ちなみに、この夫の方は欧州にいるそうで、年に何回かは一緒にすごすのだそうです。

このように、何名かの孤児を引き取って賄いの従業員として、1泊$30という絶妙な値段で風光明媚なロッジを経営する。そして、世界中からサファリの動物見学にやってくるロッジの宿泊客と様々な会話を楽しみ、情報収集とともに自分のインスピレーションを高めて、芸術活動に没頭する。こういう生き方もあることそのものにまず驚くのですが、実際にこういう生き方ができるアフリカ人女性の、頭の良さと会話の面白さ、我々とは全然違う思想や知識に基づく会話の発展のさせ方に、とても驚嘆しました。彼女の方も、さすがに我々インド人、パキスタン人、中国人、日本人の学生が一度にまとめてやってくる、という状況は大変面白かったらしく、毎晩ディナーでは2-3時間、様々な話で盛り上がりました。

というわけで、すっかりMisojiのファンになった我々は、Snarewearを何個か買うことに。このように、ロッジの宿泊客にMisojiが対面販売をする、というのは、とても有力な営業手法。従って、マーケティング・プランの第1候補として、まずロッジの宿泊客を増やすにはどうするか、次にロッジの宿泊客が口コミでSnarewearを広げるための仕掛け作りをどう考えるか、という線が出てきました。

しかし、ロッジの客には限りがありますし、全てMisojiに頼っていたら商売の規模も大きくなりません。当然、売り上げが増えればその分貧困者を製造工場の工員にすることができる、という考え方なので、もっと急激に売り上げを増やす方法を考えなければいけません。そこで、他社の成功事例は無いか、と思っていると、実はすぐ隣にTribal Textilesという巨大な店がある。綿花インタビューの合間にこちらの店を見学することにしました。
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最初に、事務所に「インタビューさせてほしい」と挨拶に行くと、イギリス人の女性経営者が「今から1時間半くらいなら時間空いてるからOKよ。ついでに、中の工場も見ていって」と言う話に。
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このサファリ周辺ではあり得ないような綺麗な建物の中で、まずは有機綿花プロジェクトの話をインタビュー。前の記事でも書いたように、大量の中古服が流れてくるため、国内の綿製品市場は壊滅しているのですが、こちらのように高級品を観光客に売るビジネスをしているところは話は別。今どのように仕入れているか、この条件がそろえばザンビア国内綿花を買っても良い、といった話は、当然プロジェクトに大変参考になりました。

次に、どのような質の綿布を仕入れているか見るために、原材料の倉庫を見学。
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そして、製品が出来上がっていくステップ毎に進んでいきます。まずは広々としてた染色作業場へ。
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最初にデザインの型どおりに下塗りをして
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次の工程から次々に色が加えられていきます。
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作業場の脇には黒板で連絡事項が英語で記されています。ザンビアは公用語が英語で、少なくとも管理監督者レベルは英語に困らないので、このような指示伝達が比較的容易なようです。
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続いて裁縫作業をしているところを見に行きます。
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ここでも掲示板で、オーダー管理と出来高管理をしていました。
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最後に商店に案内されます。商品の展示場は何部屋にも渡り、まるでIKEAに来たかのように、部屋ごとに別々のインテリアコンセプトが展示されています。
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こうして一通り見学が終了となるのですが、この工場見学兼買い物ツアーのプログラム、大変よく練られているな、と感心しました。まず、社長との会話の中に、「うちでは元貧困者だった貧しいアフリカ人を50人雇って、この品質の布製品を作る教育を施しているのです」というコメントが出てきます。Snarewearも同じなのですが、当然このセールストーク自体の効果が高いと感じました。そして、この工場で働くザンビア人の従業員達の目は、他のどの農家や土産物店の労働者よりも、目が輝いているように見えます。自分が作ったものを実際に買ってくれそうな人が目の前を通る、と言うことで、俄然やる気が出ていることもあるように思いました。こうして、やる気のある従業員と、英国から取り入れた標準作業、品質管理が効いているのか、実際にこのお店の生地の品質はとても高いのです。

他にも、どのように宣伝をしているかについても話を聞きましたが、かなり徹底しています。まず、ルサカの空港でも、Mfuweの空港でも、出発ロビーの一番目立つところに、大きな店舗を構えていて、買い忘れた旅行者に再度売る機会を与えています。そして、飛行機の中に、A41枚でラミネートされたお店と商品の紹介が各座席に置かれています。これを見ると、サファリに行く旅行者向けに、まさに我々が経験した工場見学ツアーを無料で提供しているのです。実際、我々が当日見学を終えた後、数十名の旅行者が次の団体として来ていました。

商品を買うと共に御礼を言い、最後にTribal Textilesの商店内でMisojiのSnarewearを売る可能性があるかどうかを議論。実は、この社長とMisojiとは友達だそうで、ずいぶん前からその計画は立てているのですが、幾つか関門がありその実現には至っていないそうなのです。

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次に週末にサファリへ観光に行った時、泊まったホテルの土産物屋でも、どのようにビジネスをしているか聞きました。サファリ観光に関しては別記事で書きますが、地域で一番有名な大きなホテルで、シーズン中は数百名の単位で泊まるホテルなので、Misojiのロッジよりは来店客が相当多いのです。ただし、その分土産物屋の商品も多種多様で、競争が激しい。ここでは、どのようなコンセプトで商品を選定しるか、陳列場所の優先順位と売れ方、また季節物、セールなどを特設コーナーでやる可能性、などを聞きました。ここからの学びは、世界中どこでも土産物屋の経営手法はあまり変わらなさそう、ということと、とはいえオーナーの考え方次第で、気に入った商品を全面的にサポートする余地はある、ということです。

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このサファリ観光日の日曜日の午後、インド人、中国人と私の3人で、マーケティングプランを練りました。具体的な内容には触れられませんが、メッセージは主に下記の3つで、それを示すための分析を、Tribal Textileやホテルの土産物屋をベンチマークとして行いました。
- 販路は主に(1)サファリ周辺、(2)サファリ以外のザンビア全域、(3)グローバル(ebayのworldofgoods.comやetsyなどe-commerce含む)、の3種類。それぞれの市場規模や客層、競合はこのようになっている。現在の製造原価と固定費を考えると、損益分岐点はこの程度と推測され、各マーケティング手法の肝はそれぞれかくかくしかじかである。ただし、買う気のある観光客が集まる(1)で売れないような状態で、いきなり(2)や(3)に持っていっても、売れる見込みは高くないので、(1)が最重要。
- (1)で売るために足りないものは、XX,YY,ZZであり、このうちXXはすぐできるので直ちに行うべき。YYやZZは、外部の業者を使うことになるため、良い業者の選定に実験が必要なこと、組織体制やルールの変更を伴うこと、それぞれにこれだけのお金と時間の見積もりが必要
- (1)、(2)、(3)の全てにおいて、Misoji側とクライアント側の緊密な連携体制が必要。各々が具体的に行うべきアクションのリストはこれであり、これを相互に監視すること。
 結果、日曜日の深夜に、Word15ページと、パワーポイント3ページの提案書が完成。全く議論に参加しなかったパキスタン人は置いておいて、バックグラウンドも感じ方、考え方も異なるインド人、中国人、日本人による、容易に発散しがちになりそうな議論を、丸半日で報告書作成まで含めてまとめ切れたのは、全員がマーケティング必修授業のRassi教授が使っていたフレームワークに基づいて物事を考えることができたため。チーム内に共通言語があるありがたみと、MBAの知識って役に立つじゃん、と言うことを改めて認識しました。

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提案書を持って、月曜日の朝一にMisojiに会いに行きます。先に工場を案内してもらい、その後、3ページのパワーポイントに基づいて、我々のを議論します。我々の言うこと、内容はとてもよく理解して頂いたのですが、アクション・プランの所になると、次第に顔が曇ってくる。事前に、売り上げとコストの分配の仕切りをどうするか(クライアント/Misoji/他の店においた場合はその店の分/サプライチェーン/広告・宣伝)、ブランドマネジメントをどうするか、といった問題がわかってたので、そちらの問題をどうするかについては提案に含めていました。しかし、やはり、我々のクライアントが非営利/非政府組織として求める目標と、Misojiが芸術家として求める目標の違いが、さほど違ってはいないものの完全に一致することはない、という部分が根本的にあり、我々が提案したアクションについて「やってみる」とは言われたものの、どこまで実現できるかは難しいだろうなあ、という印象を受けました。

この感覚は、最終日に話をしたクライアント側でも同じで、「確かにアクション・プランとして必要なことはその通りだが、恐らくお互いそうならないだろう」とのこと。ただ、「今年の下期にやる別プロジェクトに、このSnarewearのビジネスを一緒に乗せることを計画している。そのたたき台として、このアクション・プランを含めてあなた達の報告書は大変参考になる。」というフィードバックを受けて、ビジネスが先に進んだ意味では意味があったのだと思います。

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実働丸3日間くらいの大変短いプロジェクトでしたが、非常に勉強になりました。まず、今米国で大流行しているフェア・トレードの世界で、アフリカ側で実際に何が起こっているのか、生の現場を見れたことは、大変参考になりました。そして、人生をかけてザンビアやアフリカをより良くしようとしている人々達と、根本的に何が重要なのか、というレベルで真剣に事業計画を議論したことで、結局ビジネスは人次第であること、どんなに良いプランでも、「これをするのがベストだ」、と心から信じきったもので無い限り、その通りには動かないことを学びました。「マーケティングは人生そのものだ」というRassi教授の言葉、今後どんなビジネスに関わるときにも肝に銘じておきたいと思います。
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by golden_bear | 2010-08-28 10:26 | IBD(ザンビアプロジェクト)
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