A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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帰国した瞬間に感じたこと

2年間のMBA生活を終え、無事に帰国しました。総括は別記事で述べるとして、帰国した瞬間の日本の印象を、忘れてしまう前に、備忘録的に書き留めておきたいと思います。

まず、帰国した瞬間の感想。成田空港に降り立った瞬間の、どんよりとした雨雲、+10℃ほど高い気温と湿気を感じた瞬間に、「ああ、この夢のようなカリフォルニアでの2年間は終わってしまったのだな」、と、一瞬で現実に引き戻されました。これまでも度々米国から帰国する際には、町並みや道、電車や食事などなど、全てのもののサイズが小さくぎゅうぎゅう詰めに見える、という意味での衝撃があったのですが、今回は渡米中に何度か帰国した慣れもあるのか、視覚的な違いはあまり感じませんでした。しかしその分、「もう戻れない」、という意味の、心情的な衝撃を、大きく受けた気がしています。知り合いに、「ベイエリアに住んだことがあるかないかの違いは、その後の人生に大きな影響を与える」と言われたり、妻の元上司が、「今まで世界各地数カ国の海外赴任を経験したが、サンフランシスコから帰任する時だけは、涙が出た」、と言っていたそうですが、その気持ちがよくわかる気がします。

次に、日本でここ数日間に見たもので、2年前(2008年初夏)までの日本の記憶、あるいは直前までの米国生活と比較して、面白いな、と思ったことを、メモで残しておきます。

○ デフレ?
「デフレ」という言葉をネット上で良く目にしていたのですが、とりあえず表面的に感じたことを、下記に並べてみます。

- 東京の家賃: 非常に安くなっていてびっくりしました。まず、礼金。多くてもせいぜい1ヶ月、さらに礼金無しや、フリーレントを1ヶ月つけるような物件が増えていました。2年前は礼金2ヶ月が普通でしたので、礼金無し+フリーレント1ヶ月、となると、初期費用が家賃の3か月分安いというのは、留学直後の身としては非常に嬉しいです。さらに、賃料そのものも、インターネットの時点で「ここでこんなに安いの」、という価格がついていましたが、申し込む段で大家さんと交渉すると、そこからさらに5%ほど値引きされるケースもありました。2年前に米国に出発するときは上昇トレンドにあり、私が住んでいた所など、出た瞬間5%ほど値上げされていた事からは信じられません。この6月下旬という閑散期という条件、かつ不動産屋さんも「賃貸の方はそろそろ底が見えてきた」とのことですが、これだけ安いと、入る方は嬉しいものの、賃貸収入を期待した人には大きな痛手かもしれません。

- 携帯電話: 昨年一時帰国した頃に、販売奨励金が無くなっていて、新規でどんなに安くても5万円くらいしていて、高くて驚いた携帯電話。今回は、機種変更は相変わらず高いものの、新規なら1世代前の最新機種が5千円くらいで入れるセールもあり。また、携帯電話料金を毎月の利用料で後払いするのも普通になっているようで、これだと新機種が頻繁に出たときに買い替え辛い=売りにくい、といった事情も、日本に帰ってきてはじめて理解しました。

- ガソリン: 円高のお陰か、昔ほど安い米国との値段差を感じない気がしました。ただし、セルフのガソリンスタンドがとても増えているようで、こちらはデフレによる賃金減・雇用悪化を象徴している気がします。

- 居酒屋・レストラン: 2年前まで高級居酒屋だったところが、「6pmまでビール1杯98円(しかしお通しが450円もした)」とか、出るときに割引クーポンを一杯くれたり、と、お客さんを増やす工夫が見られます。また、以前は絶対値引きしないような高級レストランでも、ディナーの値段はそのままでも格安なランチを提供していたり、飲み物1杯無料などのクーポンをつけていたり。ラーメン屋さん(実は高級料理になっている気がする)でも、替え玉25円キャンペーンをやっているなど、様々な点で、根本的な部分の値下げをせずに、閑散期のお得感が出てきた気がします。

- コンビニ・ドラッグストア・ファーストフード: 一方、2年前と比べてあまり安くなった気がしないのがこのジャンル。むしろ原材料の高騰などの価格転嫁で、高くなった印象すらあります。その際たるものが、某世界的に有名なハンバーガーチェーン。一見外観で高級路線を追求しているように見えますが、基本的なセットで600円以上する上に、米国に比べてサイズが全然小さいし、肉の味も野菜の新鮮さも米国より全然悪い。それでも昔は「店員さんの動きがこんなに早く無駄がない」というオペレーション面で感動していましたが、ここ3-4年で米国側の各種ストアのオペレーションも大分改善されてきているため、日本だけがとりわけすごい、という気がしないのです。全世界調達していて、円高でこれでは、暴利をむさぼっているのでは、という気すらしてしまいます。そして、このセクターの値引きが無いと、「デフレ=悪」、という論調になりがちな気がします。

○ 新しいもの
留学中に何度か日本に帰っていたり、インターネットのお陰で常に日本語で情報収集ができるため、それだけではわからない新しい点や、米国では無いと思ったものを中心に書いて見ます。

- ラウンドワン: ボーリングの通信対戦。全国の同社系列のボーリング場から、似たようなレベルの選手を洗い出して、リアルタイムで通信で対戦できるそうです。何度かやるとマイ・ボールをとても安く買える、など、継続してモチベーションをあげて、課金する仕組みがそろっています。今まで全くボーリングをやったことの無かった友人が4年前からこれにはまり、通算1,500ゲームくらいやってアベレージ220弱、最高280弱を出すまでになっていて、驚きました。

もちろん将棋や麻雀・RPGはじめ、パソコンによる通信対戦ゲームは15年位前のインターネット黎明期から定番であるのですが、最近の携帯電話化・SNS化・位置情報アプリなどを通じて現実への応用とそれによる課金機会の増加が進む中で、このような現実のゲームに適用されるのは面白い進化と思いました。また、こうして対戦の仲介に公平中立な業者&通信機能が入り、そこに中毒性のある娯楽が生まれることで、今問題になっている野球賭博のような話も、少々抑制が効く可能性があるのかもしれないと思いました。

- ドリンク・スナック菓子など: やはり売り場の棚の印象が1年中ほとんど変わらない米国に比べて、新製品や新パッケージが次々と並んでいる点は、良くも悪くも日本らしいと思いました。そこで、コンビニやスーパーではなく、あえて近所の酒屋で新商品を探してみる。「この新ブランド過当競争を勝ち残ったものは良い商品に違いない」という予想通り、多くの定番商品の中にわずかに残った新商品は、美味しい新食感を達成しているものでした。

- 健康診断・医療: 数年前に訪れたことのある都内の診療所にて健康診断を受けたのですが、閑散期、かつ一番最初の時間に予約できたこともあるのですが、1時間半コースなのに30分で全ての診断が終わりました。全ての機器が新しくなっており、また人の移動の動線を最小限まで削る工夫がなされており、とても無駄の少ない効率のよい健診でした。

このような医療機器・システムは、米国人がお金をかけて進化させていますが、やはり人の動き方の工夫は日本人の方が多少良いイメージがあります。一方、地方の医療の話などを聞いていると、お金もかけず数十年前のままの形で行われているような病院のやり方では、最近の患者さんは不安に思うだろうなあ、という話も色々出てきます。

- WiMAX: これは米国ではまだまだ全く実用化されていない分野なので、新型アンテナとともに電気屋で販促しているところを見ると、おおっ、と目に付きました。値段設定などはもうかなり抑えられている一方、3G~4Gの携帯電話とWifiの両者と競合する技術ですので、結局今後iPadやiPhoneのようなキラー端末が対応するかどうかが、普及の鍵のような気がします。

- 携帯電話: 私自身は今後仕事で使うため、カバーエリアが一番良いキャリアで一番頑丈そうな端末を買わざるを得なかった。この視点で売り場を除くと、2-3世代前までの携帯が並んでいましたが、2年前の機種でも最新版と全く遜色なく使えそう。本屋さんに行っても、iPhone/iPadの情報誌ばかりで、日本のガラケーの中から何を買えばよいのか、どう使えばよいのか、という内容を特集している雑誌が全く見当たらない。ここ2年で日本のいわゆるガラケー(ガラパゴス・ケータイ)には、ハードウェア上の進歩がほとんど止まってしまったことが良くわかりました。誰かがWeb上の記事に書いていた通り、かつての日本製パソコンの状況に似ている、ということを、とても実感できました。


○ その他日本に対して感じた点

- 地方のサービスレベル: 九州の祖父母の家に行ってきたのですが、それこそ携帯電話も通じない山奥の料理屋で、とても新鮮で美味しい海の幸・山の幸を堪能できました。東京だと数万円しそうな料理が、地方だと数千円で、しかも同じサービスレベルで、東京より新鮮な分とても美味しいのです。これは、田舎に行くと本当に何も無くなってしまう米国では考えられず、列島隅々までサービスが行き届いている日本ならではの良いところだな、と思いました。

一方で、ただでさえ少子高齢化社会の中、地方は当然過疎化が進んでいるので、このような地方の素晴らしいサービスの跡継ぎをどうするのだろう、というのはとても気になりました。何もしなければ20年、30年後にはなくなってしまう気がしており、それは経済原理的にはしょうがないのですが、「昔は良かった」、という話で終わらず、この良さのエッセンスだけでも後世に引き継げないかなあ、と考えています。

- 航空会社: 九州行きの国内線に乗った時、搭乗率の低さに愕然としました。過去2年間で米国の国内線を10回以上使っているのですが、全て満席で、席が空いていることなどあり得なかったからです。今回は日曜の早朝便、平日の最終便を使った、という事情があるにしても、ともに搭乗率が5割未満となっていて、これでは苦しいだろうなあ、という印象です。昔に比べると古い小型の機体を使っていた点には工夫があるとは思いますが、世界中が格安航空会社で溢れる中では、すぐ目に付く改善では全然足りない気がしますので、今後どのようにしていくのか注目したいと思います。

- ワールドカップ: 日本の活躍と盛り上がりは素晴らしいのですが、一方で印象に残っているのが、米国人のインタビュー。米国ではあまりに多民族国家で、2世3世の人が多いので、皆米国ではなく、出身国やルーツがある国の応援をしているような印象がありましたが、世界で16強に残っても、やはり米国内で評価されないのだなあ、ということがインタビューの言葉と表情から感じられました。このイベントを純粋に盛り上がれる意味で、日本チームの活躍に感謝すると共に、米国人でなくて良かったなあ、と思います。

- 新聞・テレビ・雑誌: これはある意味デフレでもインフレでもしょうがない部分があり、見るからにコストを一生懸命削っている印象がありありと出ています。例えば、雑誌は薄くなったりネット上で得られる記事自体の面白みが昔ほどで無くなった気がしますし、新聞もいつの間にか文字が大きくなったり。一番大変そうなのはテレビで、コストのかかりそうな人々や取材対象が、画面から消えてしまっている、とは話には聞いていたものの、見てここまでか、とは思いませんでした。

米国ではインターネットを介さないでこれらのメディアに触れることはあまり無かった。その理由は、もちろん日本人なので米国人と言語&嗜好が異なる、ということもありますが、そもそも業界全体が死んでいて、アクセスしずらかった、ということも大きい気がします。業界全体としては、日本の5年~10年先を行っていて、その結果日本よりもっと悲惨なことになっている印象があります。

一方で、日本で久しぶりに平日に家に居ることで、日本において既存メディアが人の考えに与える影響が依然大きいことも感じています。やはり国土や家がコンパクトだったり、ワンセグ放送などもあり、さらにチャンネル数もシンプルに限られている(まだ多すぎる、という見方もあるが)ため、テレビに対するアクセスのしやすさは、米国より圧倒的に日本の方が身近と思います。また、1社当たり新聞の購読者数も、日本の新聞社は減少傾向とはいえ依然世界の上位を独占しています。

一つ鍵になりそうなのは、ローカル情報の行き来について。地方への入力の側としては、どんなに田舎の地方新聞を見ても、G8やG20といった世界の主要ニュースの1次情報は、少なくとも事実レベルでは重要な部分が全て報じられている。そして、地方からの出力の側としては、「ローカルの良いもの(美味しいものなど)を伝える」系の番組。これが思いのほか良くできていて、まだまだ日本中にコンテンツは多数埋もれている気がしています。このように、地方に居て世界の動きが流れてきたり、近所のベストプラクティスが放映されることは、すぐ上で書いたような地方のサービスレベルのよさに一役買っている気がしています。そして、これらのローカル知の共有は、米国ではシリコンバレーの様々なスタートアップが試みてはまだ決定版が出ていない状況ですが、日本ではわざわざスタートアップの登場を待たなくても、既存インフラの有効活用でまだまだいけるのでは、なんてことを漠然と思ったりしています。

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というわけで、帰国して1週間で日本(&米国)に対して感じたことを、ざっくばらんに書き下ろしてみました。2週間目になればもう日本に慣れてしまうと思いますので、今後も自分自身でこの2年分のブログをたまには見返して、違和感から新しいことを発想するヒントにしていきたいと思います。

そして、ついに帰国してしまったため、このブログ上にこれ以上時系列で新しいコンテンツが載ることはありません。が、最後にまだアップできていないコンテンツ、特に丁度1年前にザンビアで見たこと、感じたこと、については、少しずつ掲載した上で、閉めるようにしたいと思います。
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by golden_bear | 2010-06-28 23:43 | 社会・風土
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