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A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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Freeman Winery: 日本人共同設立ワイナリーの授業と訪問記

毎週木曜日6-8pmに行われていたWine Industryのクラスでは、毎回さまざまなワイン業界関係者が、ワインを振舞いながら2時間のプレゼンを行いました。誰を呼ぶか、などは全てワインクラブの学生が決めるこの授業。ふたを開けてみると、ワイン農場、ワイナリー(ワイン製造者)、ワイン流通業者、ソムリエ、ワイン業界コンサルタント(i.e. TwitterやFacebookでどうワインのマーケティングを行うかに特化した個人)、ワイン投資家などなど、地元のナパ・ソノマはもちろん、欧州や南米、オセアニアのワインの専門家まで様々な方が毎回色々な視点でお話していました。毎回4-6種のワインを各種チーズやフルーツなどのおつまみと共にテイスティング。中には1本$100するワインを6種類テイスティングできる回もある。余ったワインは持ち帰り可で、妻もいつも楽しみにしていました。受講資格は全14回に対して$125払うだけなので、とてもお得なクラスでした。

この中で、4月8日のゲストスピーカーは、Ken Freemanさん。ノースウエスタン大でMBAを取得後、投資銀行にて活躍され、最近は地元サンフランシスコのプライベート・エクイティファームのパートナーとして活躍中のKenさん。1990年代後半から自分のワイナリーを持ちたい、と考えていたそうで、2001年に偶然ソノマ地域の古いワイナリーが土地ごと売りに出された時に買い取ってリニューアルし、"Freeman Winery"をオープンさせたのだそうです。
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という紹介が始まるや否や振舞われた白ワインには、漢字で「涼風」とかかれています。そこで、Kenさんが私を指し、「これを英訳すると、何になるか?」と質問。私はとっさに"cold wind"と答えると、"cool breeze"だ、と切り返されて、英語の出来なさぶりを露呈してしまいました。ともあれ、なぜ"liáng fēng"ではなく"Ryo-Fu"と日本語で読むのかと思っていると、なんとKenさんの奥様は、Akikoさんという日本人の方。ワイナリー設立当初から、夫婦2人でアイデアを出し合い、またAkikoさんの尽力により日本市場の開拓にも成功してきた、という話が続きます。ここで学生から早速、「ワイナリー立ち上げ直後に世界展開って、どんな販路を使ったのか」、という質問。その答えは、「3種類あり、1つはもちろんホームページから直販。次に小売店経由で、最初は銀座にあるEnotekaという店限定で卸してもらっていたが、最近は成城石井というWhole Foods Market(米国のオーガニック専門高級店)の日本版見たいなスーパーマーケットでも買えるようになった。最後にレストランで、Four Seasons Hotelなどで使ってもらっている」とのことです。

当然Enotekaがどんなワインショップか日本人以外にはわからないのですが、いきなり高級店に置けるのは、Akikoさんの営業力以外にどんな秘密があるのか、と思っていたところに、次の赤ワインが配られます。Pinot Noir(ピノ・ノワール)というブルゴーニュ地方原産で、カリフォルニアでも相当作られているやや軽めの味がするワイン。実はFreemanさんはこのブドウに特化して、Pinot Noirだけで数種類のブランドを展開しています。そして、2004年に初めて売り出したPinot Noirで、様々なワイン評論雑誌/機関にていきなり90点越え(最高94点)の評価を連発し、一気に有名になったそうなのです。その後、将来ワイナリーを自分で持ちたいと思っている学生中心に、「どうしていきなりそんなに高得点のワインが作れたのか」、「製法やブドウの選び方のコツや特徴は何か」、「普段どんなワインを飲んで舌を鍛えたのか」、「価格設定やマーケティング(どのレストランにどういう基準で卸しているか)はどうなっているか」などなど、質問の嵐となったことはいうまでもありません。ちなみに、価格帯は1本$40-50程度に設定されていて、ソノマ地区で考えればやや高めのワインですが、コンスタントに90点を越えるワインとしては、お手頃な価格になっているようです。

3種類のPinot Noirを飲み終えて、最後に私からも、「日本市場向けと米国市場向けで、ワインの製品(同じラベルで中身が違う、など)、ラベル、マーケティング、売り文句など、変えているものはあるか」、と質問したところ、「基本的に全て同じ。ワインの中身やラベルを市場ごとに変えてはいない。日本人にはAkikoが日本語で説明しているため、その内容は私が説明する内容と全く同じだが、日本人の受け取り方が違う可能性はないわけではない」という回答をいただきました。

ワイナリー訪問は事前予約必要&グループのみ受付、ということでしたので、授業後に「今度KenさんとAkikoさんが両方ワイナリーにいらっしゃる時に、遊びに行ってよいか」とお願いし、日程調整。1ヶ月半後の5月22日(土)にしよう、という話になりました。

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5/22(土)当日、7家族15名で訪問して来ました。事前の雨予報とは裏腹に快晴となり、最高のワイナリー日和。幹事の私が大きく遅刻してしまったため、他の方々は既にお庭のピクニック場のようなところで、「涼風」の試飲を開始しています。
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ブドウからワインにしていくまでの装置を一通り見せていただいた後に、崖を自分たちで掘って作った、というワインの貯蔵庫の中を案内していただきます。
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ちなみに、最初はKenさんも混じって英語で談笑していましたが、ワイナリーの説明は全てAkikoさんによる日本語によるものでした。今まで何度かワイナリーの説明を受けていましたが、日本語で細かいところまで丁寧に教えていただくと、全然違う印象で理解できるので、すごく良い機会でした。

貯蔵庫の中では、特別にまだ樽の中に入っていたワインを少し味見させて頂く。
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ボジョレー・ヌーボーのような状態の若いワインなのですが、2つの異なる樽のワインを舐めさせていただくと、同じピノ・ノワールでも、ブドウからして全然違うんじゃないか、と思うくらい全く異なる味(苦味、刺激、重さなど)がして驚きます。この味の違いについては、ブドウ自体の違い(ピノ・ノワールと分類される中で、何十~何百種類も兄弟品種があるそうです)もありますが、畑の違い:どのような気候でどのように育てられているか、も、とても大きいとのことです。実は、これら2つのワインは、同じソノマ地区で互いに5miles(約8km)しか離れていない畑で採れたものだそうで、場所が少しだけずれただけで全然味が変わる、ということにとても驚きました。

ここで、「畑によって大きく味が変わる、ということは、良い畑のワインには、買いたい、という人が殺到するはず。この競争の中、どうやって良いブドウを手にしたのか」、と質問させていただいたところ、Keefer Ranchというブランドのワインができるまでの話をして頂きました。Keeferさんの畑のブドウがとても良いそうなのですが、「売ってください」と頼みに行くと、最初は鼻で笑われてしまい、全く相手にしてもらえなかったそうです。それでも、自分が作ったワインを持って行き、味を確かめてもらうと「良い仕事をするわね」と言われ、ごく少量のブドウを分けていただく。このブドウでワインを作り、翌年持って行くと、また「良い仕事をするわね」と言われ、次の年は多めに分けてもらえる。なにしろ良いブドウの数は限られているので、この過程の中で良いワインを造れなかったワイナリーは契約を打ち切られてしまうそうで、生存競争が大変とのこと。この競争をまさに勝ち抜いておられる方からこう説明して頂き、普段気づかないワイン業界の熾烈な競争に鮮烈な衝撃を受けました。

この後、洞窟内で現在売られているワインを一通りテイスティングさせて頂きながら、全員日本人のメンバーから様々な質問が飛び交います。
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この質疑応答の中で、私個人的には特に、日本人としてゼロからワイナリーを立ち上げここまで来られる裏で、どのような苦労があり、どういう独特の目の付け所や目標の持ち方があり、どの点に注力して他人に負けない努力をしているのか、という、経営者としての心構え、が大変勉強になりました。このことは、最後にテイスティングさせて頂いた、"Akiko’s Cuvée"というワイン:Akikoさんご自身がブドウの選定から収穫時期の決定まで、毎日足繁く畑に通われて決断されている、の味にそのまま現れているようでした。このワインは日本でも購入可能なそうです。
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最後に、この場で飲んだワインを購入。一部日本では手に入らないブランドもあるので、それを中心に、感動した分だけ買い込みました。私の妻はもちろん、来ていただいた日本人の方皆に満足していただいたようで、とてもよいワイナリー訪問ツアーとなりました。

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Napa/Sonomaエリアの日本関係の話題としては、昨年は某航空会社の訓練場が閉鎖という暗いニュースがありましたが、今年は5月に某ゲーム会社の会長さんがワイナリーをオープンしていたり、6月に某日本の芸能人が結婚式を開催予定だったりして、(日本人の間で)盛り上がっている感があります。このFreeman Wineryにも来月、今月米国企業を買収し進出の足がかりとしている日本の某e-commerce企業の社長さんが訪れるそうです。ワインという特殊な世界ではありますが、その中には戦略、開発、製造、物流、マーケティング、ブランディング、営業、と、ビジネスの全ての要素が含まれており、だからこそKenさんや上述の会長さんみたいに、一度別のビジネスで成功した方が挑戦する魅力がある世界のようです。そして、Akikoさんはじめ、この世界で日本人が盛り上がっていることには、卒業直後の自分に大きな勇気を与えてくれています。

(オマケ1)
Freeman Wineは、様々な日本語ブログでも取り上げられています。2010年5月現在、日本ではここで購入するのが良いようです。

(オマケ2)
Freeman Winery訪問後は、Kenさんに「それだけの人数ならお勧め」と紹介された、Union Hotel Occidental Restaurant。どのキャリアの携帯電話も入らないような山奥に突如現れた高級レストランのパティオにて、美味しいイタリアンを堪能しました。量がとても多いので、前菜を頼んだらメインは2人で1つくらいでちょうど良いと思います(一応、余ればDoggy Bagをお願いすれば、持って帰れます)。

また、このとき、日暈(にちうん)と呼ばれる、太陽の周りにかかる虹を、とてもくっきり見ることができました。これは、良いことの前触れらしいので、ラッキーです。
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昼食後には、Iron Horseというスパークリングワインが有名なワイナリーを訪問。まさに馬小屋のような簡素なカウンターで、5杯$10、あるいは$30-40でワインを1本買えば無料、という、すばらしい低価格でテイスティングができました。丘の上からののどかな眺めも最高です。
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最後に地図ですが、A地点がBerkeley, B地点がFreeman Winery, C地点がUnion Hotel Occidental, D地点がIron Horse、また、地図一番下の端がサンフランシスコになります。
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by golden_bear | 2010-05-22 23:51 | 趣味・生活
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