A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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ABC当日の活況 (2/3) アジアの消費者とインド技術

第2回は、大変盛り上がっていた、コンシューマー・ブランドと、インド・フォーラムの2つのパネルディスカッションについて。幹事の仕事のため出入りがあり、全て聞けたわけではないですが、個別に面白かったポイントを、書き並べて見ます。

コンシューマー・ブランド・パネル
パネリストは下記の4名
- Jose Davila, Vice President of Field Human Resources, The Gap : 日本に数年駐在経験があり、Gapのシンガポールへの進出、及び、昨年11月の中国への進出に陣頭指揮を取った方。最近昇進して、米国に戻られた。
- Dave Sessions, Vice President of Global eCommerce, Walmart International :特にアジアに限らず、中東、南米など新興国全般における、Walmartのe-commerce部門、Walmart.comの全権指揮を取っている方。ちなみに、米国ではWalmart.comは、Amazon.comとトップシェアを激しく争うほど秀逸です。
- Rand Han, Strategy Director, Bloodyamazing: 中国でWeb広告代理店(日本でのサイバーエージェントのような企業)を起業した中国系アメリカ人。グローバルブランドを顧客に持ち、中国でのブランド価値向上をサポートする
- Daniel Harris, Founder and Partner, Harris & Moure: 新興国、特に中国における、IP(知的財産権)保護を専門とする、弁護士の方
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議論のハイライト:
○ Walmartは、米国では最安値に位置するブランドだが、中国では価格が高すぎて、高級ブランドになってしまう。ましてや、インドなど1ルピー(約3円)変わっただけで大きくシェアがぶれる。こんな中で安値競争をしたらひとたまりも無いが、"EDLP(Every Day Low Price)"は全世界共通の標語。従って、新興国では、下記3つのような戦い方になる
 (1) 同じカテゴリーの同じ商品なら、低価格勝負に負けないようにする
 (2) 現地調達を強化する: これには2種類あって、1つは米国でやってる地産地消の取り組みを中国でもやること。もう1つは既にWalmartが中国、タイ等にいっぱい持っている米国向け商品の工場から、アジア向けに、既存商品を出荷したり、商品開発すること。前者は米国では地元の良い商品を前面にアピールする目的になるが、アジアでやると地元の商品がひどいことも多く、サプライヤーの発掘や教育を兼ねることになる。後者は、コスト高になるケースも多く、試行錯誤中。
 (3) 高品質を訴える: Walmartとしてグローバルで定めている品質基準が、アジアの現場より相当高い場合は、価格を高めに設定し、高品質品として売り出す

○ 例えば、テレビCMに関しては、米国である顧客層に効果的なCMが、中国では全く通用しない。まず政府がテレビで情報をコントロールする政治的な障害が大きい。次に、訴える内容も、米国では"落ち着いた質素なイメージ"でアピールしている廉価商品を、中国では全く逆に"米国発のアグレッシブな高級感"として高品質・高級品としてアピールしないと売れない

○ 中国市場の6割は、農村地域にある。そこまで浸透できているのは、まだコカコーラなど一部のブランドに限られており、今後ここを取れるかどうかがグローバルシェアに大きなインパクトを与える

○ 中国と言っても、都市毎に全て市場が異なる。北京、上海、大連、深センといった一千万人級の大都市は、それぞれ文化も言葉も違うので、むしろ1つ1つ違う国として考えたほうが良い。さらにそこから広がる農村地域は、全く違う市場。

○ このように新興国では、地域別の特性に合わせて商品あるいはブランドイメージを変えなければ、全く売れない。しかし、どのように変えるかは、非常に悩ましい問題。GucciやBMWのように元からグローバルの最高級を狙うところは、そのままの価格・ブランドイメージで、アジア人体型や生活に合わせた商品に変えればよいが、実はその市場はとても小さい(だから真似されない)。一方、それらより1ランク下のブランド、例えばH&Mは、現在価格を大きく下げて中国で爆発的な人気になっているが、既に偽物や模造品が乱発し始めた。ここで、現在中国の衣料品製造技術や品質が非常に高くなっていることを考えると、H&Mの価格帯の市場は、2-3年後には中国メーカーが参入し、食い尽くされていても全く不思議ではない。ただし、IKEAのように、40%価格を下げて初めて消費者に手が届き、認知され売れ始めたブランドもあるので、価格を下げることが一概に悪いわけではない。

○ 政府によって情報統制があるから、ブログ等はすぐに閉鎖される。だからこそ、インターネットはマーケティング情報の宝庫。
 - インターネットの世界が大きすぎて、政府の検閲のスピードが追いつかないので、情報が消されるとはいえ生の声が結構そのまま残っている
 - また、デジタルの世界にアクセスできるのは、富裕層で流行にも敏感な上顧客
 - 新興国市場であればあるほど、口コミが重要。中国では口コミが商品浸透効果として先進国より全然強い。(参考:「インドでは信頼できる人からの推薦が無いとそもそも売れない」:インドパネルの議論)
これらを踏まえると、今Facebookなどのソーシャルネットワークで起きている世界(推薦機能など)は、今後アジアにおけるマーケティングで非常に強力なツールになる

○ eBayやGoogleが中国から退場し、代わりにTaobao(中国のe-shoppingサイト)が成功したのは、現地化をどこまで徹底し、やるべきことをやりきったか、の違い。先にβ版を立ち上げて修正いく、というやり方では、問題が発生し、退場せざるを得ない。現地で一番最後までやり切る、という点から全てを考え、現地の利害関係者全員の利益を満たすために1つでもやり遂げられない点がある時点では、やりはじめないべき。

○ インドではインターネットより先に携帯電話が浸透している。中国でネットでやっていることを、画面の小さい携帯電話でどのように実現していくか、ということがポイント。

○ ネットという手段があること、商標権の登録などに正規プロセスができ始めていることから、賄賂など不透明なやり方で市場の優先権を得る必要性は少ない。賄賂はハイリスク・ローリターンなので、避けるべき。

○ 優秀な中国人はものすごい取り合いになっている。今後、中国で何かを立ち上げる際、人材確保は必ずボトルネックになる。

(下記、GAPのコメント再掲:
 ○ いまだにアジア売り上げの8-9割が日本。他のアパレルブランドも含め、日本の経験を生かしてアジアに展開しようとしているところが多い。しかし、これが思ったほど上手くいかず、現場の悩みとなる。
 ○ 現在、目下最大のライバルは、日本のSPA(製販小売)企業。こことアジアでどう戦っていくかが、最大の課題。)


インド・フォーラム
パネリスト4名の背景は、この記事を参照。
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議論のハイライト:
○ ここ10年で、とんでもない変化が起こっている。表にはタタが20万円の車を作っているが、裏では未来の金融システムをゼロから天才IT技術者達が立ち上げようとしていて、将来インドが既存の金融機関を全てひっくり返す可能性がある

○ IT業界に限らず、製薬業界の新薬開発や、高級エアラインの制御システム、GEや日本企業の重電・環境技術、そして実はAmazonのKindleはニューデリーで設計されているように、多数の業界において研究開発部門がインドに移っている

○ インドの農村の電気が無い世帯に、太陽電池ランタンを売る活動をしてから、面白い気づきを一杯得られた。1つは、各地方独特の方言が通じるかどうかが、売り上げに大きく響いていること。もう1つは、物流の最適解が米国と真逆だった、ということ。米国では、物流の規模を最小限にして工場で在庫を持つのが普通だが、インドでは物流規模を拡大して在庫を工場より物流により多く持たせるようにする方が、全体としてうまくいく。この詳細は述べないが、(物流がひどいから)飢え死にする人が多いこととも関連している。このモデルはもう少し研究して、他の新興国にも適用できると思っている

○ インドの商流に関しては、人が最も重要。ブランドが構築されるまでは、人は信頼できる人からしか買わない

○ インドでは、起業する年齢の平均値、最頻値とも、40歳程度。これは、10-15年ほど企業内の研究開発部門で修行を積み、その技術や人脈を元手に起業する人が多いため。

○ インド国内のベンチャーキャピタル(VC)は、まだまだ未成熟。2009年には32のVCが投資を行ったが、非常にリスク回避の傾向が大きく、Wiproのような既に大企業か、政府・公共系の企業に投資されるケースが大きい。また、国内で政治の腐敗、規制、干渉など様々な条件から、VC自体が経験豊富、百戦錬磨でないと上手くいかない。

○ こうした国内の制約を踏まえて、インドの起業家は、はじめから世界に目を向けている。各国の規制を逃れるようにIPを上手く設計し、本当の世界市場を相手にする商品を設計する。こうして、Intel、Motorola、Ciscoといった世界企業に対して、競合するなり、買ってもらうことを、目指しているケースが多い。

○ 今実際にインドに行くのは、とてもよいアイデア。起業の志も高い安くて優秀なエンジニアと直接アイデアを熟成できる上に、今後成長していくインド国内市場も相手にする機会が増える。今後は自分の履歴書に新興国で働いた経験があるかどうかが、いずれにせよ成功するかどうかの境目になるので、今のインドは良いタイミング。

○ 現在インドのGDPの3分の2は、外国に出て行ったインド人がインドに投資し返してくれている分に相当する。インド系アメリカ人とインド人との関係、インドとシリコンバレーの関係は今後も続いていく。

○ インドから米国への頭脳流出は、インドにとって1990年以降頭の痛い問題だったが、最近は米国からインドへ頭脳が戻ってくるケースが増えている。米国にいるインド人は皆どちらで働くのが良いか迷っているし、ある調査では11%の人が戻った方が米国より良い生活ができる、と考えている。実際昨年は米国インド人の6%がインドに戻り、出入りが均衡。今後は、米国からの頭脳逆流出が、米国にとっての大きな損失となる。

○ 大企業としてインドに研究開発拠点を作るには、文化、規制、人の管理、インフラ不足など、全てが困難に付きまとわれるので、生半可にはいかない。しかし、それでも安い人件費で優秀な頭脳を囲える。このメリットを生かせる辛抱強い体制が必要。


この2つのパネルを見た感想は、「自国の優れたシステム(金融、シリコンバレーなど)でアジアを統治しようとしてきた米国、それを、製造拠点と消費者市場として請け負った中国、研究開発と英語単純業務のリソースとして請け負ったインド。中国とインドの強大化により、この3カ国間の中で、人、物、金、情報が流出入しあう、壮絶な覇権争いが進行している」、というものです。新興国と成熟国の間で、市場と覇権を取らないと今後の成長はありえない、という強い気迫を、全てのパネリストから感じました。そして、米国人ですらこんなに頑張っているのだから、アジアにいて位置も言語も文化も近い日本人である自分自身が、この争いに入った時に負けるわけにはいかない、という意気込みを強く持ちました。

次回、この大きなうねりの中で、好位置で上手に立ち回っている国、シンガポールの講演について記して、最終回とします。
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by golden_bear | 2010-02-22 07:24 | ABC
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