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A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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2年目秋学期前半(Fall A)終了(1/3): 終わった授業からの学び

試験&レポートの山だった怒涛の1週間が無事終わり、2年目の秋学期もあっという間に半分が完了してしまいました。どれくらい怒涛だったか、というと、書いた英文レポートは計38ページ。これに加えて、中国語とコーポレートファイナンスの中間試験があり、さらにCases for Entrepreneurshipで、自分で書いたケースを使って2時間の授業を行う私にとっての最終試験が被ったからです。この嵐のような1週間が過ぎて、強く思ったことは次の3つ。

1. 2年生の選択授業は、1年生の必修よりとても印象深い
2. MBA生活は後わずかしかない:一番重要なのは、狙ったネットワーキングではないか
3. ゆとりも必要

まずは1について。今週書いた英文レポート38ページの内訳は、
(1) Case Study for Entrepreneurshipのケース17ページ:(ケースA:12ページ、ケースB:3ページ、先生用マニュアル2ページ)
(2) Power&Politicsの最終課題論文10ページ
他にも、VC&PEの課題5ページ、インターンの市場調査6ページがありますが、これらは、まだまだ続くので、もう終わってしまった(2)と、授業は続くものの私の「最終試験」が終わった(1)について、感想を書きます。

(1) Case Study for Entrepreneurship
この授業は、今までに取った全ての授業の中で、予想外に、IBD(International Buziness Development:ザンビア行き)と並んで他とは比較にならない別格で素晴らしい授業でした。(概要は過去エントリ「水曜日は起業学の日 - 2年目秋学期授業(1)」参照)一番大きいのは、受講生が起業に関して造詣の深い8人しかいない、ということです。毎回毎回、8人のうち1人が、自分自身が体験したことを基に作成したケースを作成し、それを元にケースを書いた学生が実際にそのスタートアップの人を呼んで授業を行います。何が良いかというと、下記のように、楽しく8人分の人生及び8種類の起業体験を深く学べることです。
- 毎週友人の実話ケースを読むのが楽しい:
「おいおい、スタートアップでインターンする、ってこんな悲惨な目にあうのか」、「よく厳しい状況を乗り切って、凄いものを開発してるなあ」と、クラスメート達の苦労を目の当たりにします。これを見ると、単に宿題として課される他のケースより、圧倒的に楽しく、感情移入して、熱いものがこみ上げてきます。とくに、CEOと学生が2人で、「今本当に困っていて、何かアイデアが欲しい」という形で訴えかけたケースの際には、2時間の授業がその場でコンサルティングプロジェクトに変化。私も、久しぶりに前職の経験を思い出して、問題解決の議論を楽しく行えます。
- 議論が深く楽しい: 
8人ともスタートアップで働いた経験を元に起業を志しており、これに関する豊富な知識を持つので、書いたケースでちょっとでもわからないこと、知りたいことがあると、2時間の間に容赦ない質問攻めにあいます。このとき、普通の授業なら、教授は勿論そのケースの場面に実際いたわけではないので、受け答えも非常に表面的に終わるのですが、この授業では、実際の当事者とその上司が目の前にいてNDA(nondisclosure agreement:機密保持契約)を結んで議論をするため、とても深い議論になります。
- 教授やクラスメートと密度の濃い知り合いになれる: 
ここまで深い議論をすると、今まで知らなかった友人の深い一面を知ることになるので、当然とても仲の良い友になります。また、それは教授に対しても同様です。MBAに来る前にある先輩から、「MBAの2年間で1つだけやり残して後悔しているのは、教授とのネットワーク。いっぱい教授と話した方が良い」というアドバイスを受けましたが、それが実践できています。そして実際、教授と深い議論をして仲良くなると、MBAの違った価値が見出せます。

さて、今週は私の番でした。テーマは、「シードファンディング」、つまり、最初の会社立ち上げの際にどのように資金調達をしたか。今一緒に働いているCEOと、9月中旬から何を話すか相談していたのですが、機密内容の多い会社、かつ、私の仕事は企業秘密の数字を扱うものがほとんどで、現在進行形の話は書きたくない。また、私が入る直前の話なので、それをインタビューしてまとめることは、私の現在の仕事にも勉強の意味でもプラスになる、ということで、このテーマになりました。

しかし、事前準備には難航を極めました。実は今、インターン先は猫の手も借りたいほど忙しく、CEOも全米中を飛び回っている状況。私のケース作成のためにインタビューをさせてくれる時間など、なかなか取ってもらえず、時間を確保しても、延期が続きました。そして、1週間前に、これ以上はインタビューで聞いて書くより、幾つかのパラグラフを直接埋めてもらった方が早い、と合意した箇所を送って書いてもらおうとしたのですが、提出期限ギリギリにCEOから戻ってきた内容を読むと、当初のイメージより全然素晴らしくためになる内容。そこで、事前に作っていた先生用のマニュアルを、大幅に書き換え、本編の構成も変えることに。そして、最後ギリギリに、「やっぱり固有名詞で本名は使いたくないね」というインプットを受けて、全ての固有名詞を偽名に変更することに。。。(この作業は結構楽しかったですが)。

発表当日、4時からの授業の準備のため3:30にCEOに来てもらったのですが、私は他の宿題の提出期限(4:00)に追われ、3:59に提出。全然CEOと打ち合わせができないまま授業に臨みました。

授業は、事前にパートAを皆さんに読んでもらっていた状況からはじまります。パートAには、どんな会社でどういう状況で何が問題か:どんな市場で、どういう競合がいて、どういう経緯で立ち上がり、今何故どのように資金調達が喫緊の課題となっているか、資金調達のオプションにはどのようなものがあり、目下どのようなことを考えていたか、といった内容を書いていました。そして、「このCEOは1時間後に、どういう資金調達をすべきか、創業者に対して1分間の留守番電話メッセージ残すことになっている」、というところでパートA本文を終わらせて、実際に、授業の前半1時間で皆で議論をして、1分スピーチにまとめてもらいました。

先生役の私は、これが結構大変でした。私自身は、会社そのものにはあまり触れずに資金調達のオプションの議論を中心にしたかったのですが、参加した生徒、及び教授の興味は、会社の事業内容そのものに。このように思惑がずれたため、最初の30-40分間、質問攻めに会いました。最初のうちは、「こんな質問されても、答えとは全然関係ない、うざい質問だなあ」と思っていたのですが、聞けば聞くほど、私やCEOが事前には想定していなかった、「確かにそういう情報がないと、資金調達の判断ができないな」、と思うものばかり。皆、よくケースを読んでいるな、と感心するとともに、参加者全員が私の知識・経験レベルをはるかに凌駕していることに、改めて驚かされました。

そして、1人の工学部Ph.Dの学生に、1分間で議論をまとめてもらってスピーチをしてもらい、その後実際に起こったことの書いてあるケースBを配布。皆それぞれ様々な反応をしていましたが、概ね内容には納得した様子。最後に、CEOが実際に何を考えて判断したかをプレゼンし、また生徒が質問攻めに。CEOにも、「私にも学びの多い、意義のある議論だった」、と満足していただけました。

こうして、私にとってはアメリカ人相手に授業を行う、という今学期の1つのハイライトを無事終えて、肩の荷がおりるとともに、次の学期に関連授業を取って改めて知識を補完したい、という新たな目標ができました。何度も書きますが、短期間にいろいろな学びができる、素晴らしい授業体験です。


(2) Power&Politics
以前の授業紹介の記事のところで、「超人気授業だが時間が短縮されたため消化不良気味、及び、就職活動やその後の個人的なキャリアにやや焦点を置きすぎているのが不満」、という書き方をしました。この傾向はそのまま最後まで続き、やっぱり自分にとっては消化不良の授業でした。が、多くのアメリカ人は絶賛しており、英語力の差と文化の差を感じています。そして、私自身も、消化不良にも関わらず、下記のように多くの学び、発見があった授業でした。

- この漠然としたテーマにも関わらず、根幹が揺るがない:
この授業で教授が伝えたいことは、常に一貫して次のメッセージに基づいていました。

 - 力とは何か: 人の意識や行動原理を変革すること、及びそのために、組織の中で、価値が高く代用不可能なリソースを、自由に操れること。イノベーションは、その定義から力がないと絶対に発生しない。
 - どういう人が力を持っているといえるのか: ネットワーク、同盟、個人の資質、評判
 - ある目的達成のために、どのように力を手に入れることができるのか: 効果的なコミュニケーション、身の丈をわきまえること、「影響力」を行使するための戦略の効果的な実践
 - 力を持って、管理/統治するにはどうすればよいか: 公式な権威のみに頼ったら必ず失敗する。力は押してではなく、引いて達成するもの。信頼を構築し、相手を尊敬すること。

 これらの議論が、一切ぶれない。講師は30歳後半~40歳前半に見える、准教授クラスの若手の方だが、最初の自己紹介で「この研究を既に15年続けてきた」という自信と裏づけが相当しっかりしているのか、どんなに議論が発散したり反対意見が続出しても、うまく収斂させていく。
 これが、1年生の必修授業だと、同じ7週間の授業期間内にとても広く浅くやるので、1回1回の授業の脈絡がそこまで強くないし、教える側も、その全てに精通しているわけではないから、回によってははずれの授業も結構ある。ここら辺が、自分の研究分野だけを教える選択科目の強みだし、そこにコミットして効果的なプログラムを組んでいる教授の授業は満足度・人気ともに高い、と感じています。

- 即効性のある学びの数々:
上を証明するため、あるいは上の理論に基づいた動き方を実際に生徒にやらせるために、豊富なデータに裏打ちされた様々な小ネタが授業内に用意されています。
  -- 統計資料に基づく小ネタ: 例えば「あなた自身の実績と、周りの人がどれだけ尊敬してくれるかの評判、そして組織内の影響力の関係」といった折れ線グラフ(比例関係なので直線)が、突如出てきます。最初は、生徒も、「こんなの測れるわけないじゃん」と、懐疑的に教授に突っ込みを入れまくるのですが、それに真正面から答える教授。すると次第に、データの曖昧さはどうでも良くなって、これを見て何を考えてどうすればよいか、という学びの方の議論になっていく
  -- 「それ言っちゃうの」系の議論: 上の統計資料にも関連するが、例えば、「人のうわさ話は古今東西どんな国でも誰でも大好き:人間の会話の60%がそうだ」、というデータの後に、次に「うわさ話は、是非何が何でも積極的に聞いて生かすべきだが、自分からは一切発してはいけない」という事例を豊富に示す。このように、今までの人生で漠然とそうかなあ、と思っていても、誰かに話すには確証がなく危険なテーマを、その通り、あるいは、その全く逆だ、とデータとともに断言しちゃう。それ自体苦笑しながらも聞いててすっきりするし、正しいかどうかはともかく一度やってみようという気にさせられる。
  -- 突然の実習:たとえば、突然簡便なEQ(注1)のテストを受けされられる。14点満点のテストで、結果が丁度正規分布みたいに、クラスで1人だけ14点満点、3人ほど3点の人がいて、それぞれ顔を見て「こいつらなら確かにそうかも」と納得(苦笑)。私は7点だったので、平均よりやや低め。そして、「ではどうすべきか」という対処法がすぐに説明される。速効性あり。このような遊びの小テストが2回に1回くらいの授業であるので、とても楽しく身にしみて学べます。

- 実生活に生きる最終課題: 
最終レポートは、エッセイ10ページを書くのですが、内容は、
「貴方が卒業後に行くと思われる企業・業界の先輩3人以上にインタビューをし、下記を含めた内容としてまとめること
- 力の源泉は何でどういう組織力学関係にあるか
- 力と倫理の問題が対立する場面はどのような場合か
- その力を手に入れるには何をすれば良いか、
- 貴方の今までの経験はその力を手に入れるのに有用か
- 卒業まで、卒業後1ヶ月以内、卒業後1年以内に、それぞれ何が必要か」

まさにMBAの存在意義そのもののような課題。したがって、「こんなことMBAに来るかどうか考えてる時から、インターン中まで、ここ2-3年常に考えて動いているよ」、と最初はたかをくくっていたのですが、いざ、実際にいろいろな方にインタビューしてみると、とても面白い。ある業界の様々な立場の方にインタビューをしたのですが、全員が全員口を揃えて同じことをいう内容もあれば、人によって全然受け止め方が違う内容もあり、それらをまとめるだけでも、「なるほど、だからこういう力が働くのか」というのが見えてきます。そして、授業で習った学びに照らし合わせることで、本当に、この授業を受ける前には思いも付かなかった、卒業まで、あるいは、卒業後1ヶ月以内にしなければならないことが、明確になってきました。これは、授業を取っているのといないのとでは大違いですので、大いに授業の意味があったのだと思います。



さて、このPower&Politicsの最終課題の中で、あらためて強く感じたのが、「MBA生活は後わずかしかない:一番重要なのは、『狙った』ネットワーキングではないか」ということになります。これについては、次の記事で書くことにします。

(注1) Emotional Intelligence Quotient。こころ(心)の知能指数、感情調整能力。詳しくはこちら
by golden_bear | 2009-10-16 21:37 | 学業
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