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A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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Silicon Valley-China Wireless Conference 2009の様子

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Google本社とMicrosoftシリコンバレー支社からそれぞれ徒歩5分で行ける立地に建てられた、Computer History Museumにおいて、表題のSilicon Valley-China Wireless Conferenceが9月25(金)-26(土)の丸2日間開かれていました。私は土曜日に行われた下記4つの講演に参加してきました。

(1) 9:30-10:30am KEYNOTE: esurfing: SURFING IN 3G ERA,
(2) 10:40-12:10pm China 3G and Beyond: Embracing the opportunities after years of waiting
(3) 12:10-01:10pm KEYNOTE: Global View of Mobile Broadband, Yesterday, Today, Tomorrow:
(4) 01:10-03:00pm Smart Grid - The Next Frontier of Mobile/Wireless Ecosystem

わざわざ土曜日にこのような講演会に参加した動機は、下記。
- 自分の将来への興味: 自分のバックグラウンドや、今自然にやっていることを踏まえると、シリコンバレーと中国は自分の将来を考える上で避けられない2大テーマ。この2点間でどのような議論がされているのかへの強い興味(どれだけ中国語が聞き取れるか含め)
- 過去に学んだことのアップデート: 2004年に仕事で中国及び世界の携帯市場を徹底的に調査した経験、2006年-7年に中国で電子機器や半導体の工場や市場を診断する仕事を経験したことがあり、それぞれ2009年の夏にどうなっているのか、最新知識を仕入れてみたい
- Smart Gridのパネルディスカッション: 現在引き続きパートタイムインターンでエネルギー業界に関わっていることから、同テーマで中国と米国がまたがって、これだけのメンバーが何を考えているのか、とても興味があった。
- Computer History Museumの見学: 過去何回か前を通ったので中を見ようとしたが、開館時間が平日12-4pm、土曜11-5pmと、非常に不親切な時間帯で、中を見たことが無かった。

それぞれ4回の会議の様子と学びを下記に。会議全体としては、恐らく200人くらい出席し、6割くらいが中国人、後は国籍様々なシリコンバレー人。日本人の方は私の他に2人ほど見かけた気がします。ちなみに、私が英語(と中国語(?))で聞いたメモから書いており、間違いが含まれている可能性がありますので、その場合はご了承下さい。コメントも歓迎です。
(1) 9:30-10:30am KEYNOTE: E-surfing: Surfing in 3G era,
YiJun (Donald) Tan - President, China Telecom Americas
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China Telecom AmericasのPresident、YiJun (Donald) Tan氏のプレゼンテーション。China Telecom(中国電信)は日本で言うNTTのような最大の固定電話網会社。私が調べていた2004年当時は、PHSを1億台単位で売っている会社で携帯では出遅れていたイメージでしたが、今年からCDMA2000(日本ではAUの陣営が使用する規格)で3Gの営業を始めたところだそうです。

内容は、いかにもNTT、BT、AT&Tといった各国の固定電話会社が抱える課題をそのまま現したような、「うちは総花的に何でもやってるけど、今は全部そんなに強くない。でも、総合力で勝負するぞー」というイメージでした。ただし、先進国と違うことは、下記2点
- やや時代遅れ: あまり具体的には書けないですが、日本では数年前にとっくに議論しつくされていたような話やサービス(たとえば、"3G"を使うと"2G"に比べてインターネットが快適に見れるようになる(!))を、目玉のように話す。これで売れるんだったら楽だなー、と感じるとともに、中国は何となく規制が大変で身動きが遅くなってるかな、と言う印象でした。
- そんな時代遅れの技術・サービスがこんなに成長するの?: 大げさに言う癖のある国民性で、全部は信じないにしても、まだそれしか利用されていないの?、そんなに成長するの?というような数字が次から次へと出てきます。すでに3Gが飽和しきっている日本から考えると、誠に羨ましい話です。

そして、日本メーカーの話は何も出てこない、、、こんなに数年前の技術が大きく成長する(とあくまでChina Telecomが言っているだけですが)この市場において、スピーチの中で日本企業の話が一言も触れられなかったのは、悲しいばかりです。ガラパゴスと言われる前に、何とかならなかったものなのか、今からでも何とかならないかなあ。


(2) 10:40-12:10pm China 3G and Beyond: Embracing the opportunities after years of waiting
Moderator: Kye Cheung- Partner, Quoris
Panelists:
○ Frank Fan: VP of North America Telecomm Business Unit, VanceInfo
○ Yong Chen: GM of wireless, tianya.cn
○ Dawei Zhang: Dirctor of wireless network, China Mobile Research Institute US
○ Lixin Chene: Founder & Principal Consultant, ALA Group
○ Zhijun Ren: CEO of BOCO Inter Telecom
○ Steven Chun, Independent Consultant, US and China, Semiconductor, Philipps, Free Scale, Management Expert opportunities
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China Mobile(中国移動通信)のシリコンバレー研究所ディレクターはじめ、中国での3G/Wireless時代の生態系プレーヤー(コンテンツプロバイダ、半導体メーカー、技術/市場コンサル、技術人材派遣)が、それぞれ社長ないしは常務取締役級の人々を送り込んでの、パネルディスカッション。1人だけ中国語で話して通訳してもらっていましたが、他は皆つたなかろうが英語で堂々と議論しているところから、自分も英語頑張らなきゃなあ、と思ったのが第一印象。

China Mobileの今後の技術やビジネスの見通しが発表された後、幾つかの発表が続き、あるコンサル会社調べで、「2009年末の3Gユーザー数(百万人)は、TDS-CDMA 10、WCDMA 8、CDMA2000 10の合計28百万人」という数字が出る。その後はモデレーターの「御社にとって3Gの意味は」、「どうやって市場をつかむか」、「その次の技術は」、という質問に各社答えていました。

議論で印象に残ったものは、下記のようなものです。
- 3Gの導入は、カバレッジもないし、高コストでリスクが高い、と思っている人が多い。一方で、3Gはすでにデファクトの規格であり、さっさとビジネスとして導入して、次の技術開発を進めるべき、と言う意見も有り
- 顧客は混乱するはず、との見方。メイン顧客は大学生であり、価格が高いことから、2G(GSM)でいいや、と思われるのに加えて、彼らはTDSだろうがWCDMAだろうがCDMA2000だろうが気にしない。が、カバレッジが異なるのは相当面倒と考える。
- 新規開発の質問に関しては、China Mobileのみ回答し、TDLT技術(?詳細よくわかりません)という国策の技術と、NGMN (Next generation of Mobile Network)に力をいれて、wirelessとmobileの融合ネットワーク、グローバル化、Amazon.comデータをユーザーにどれだけ使いやすくするか、など顧客満足を追求する、とのこと。

うーむ。日本や米国では3Gは当たり前だけど、中国ではまだこれからで、国土が広いのと規制が厳しいことと貧しい人が多いから事業化も大変、というのが意味合いでしょうか。また、こんなところでAmazon.comの名前が出てきていることにも、その強さに驚きました。

(3) 12:10-01:10pm KEYNOTE: Global View of Mobile Broadband, Yesterday, Today, Tomorrow:
Jan Uddenfeldt- Senior Vice President, Senior Technology Advisor, Ericsson Group
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エリクソンの上級副社長、Jan Uddenfeldt博士の講演でした。市場がどのように成長し、エリクソンの技術がどこでどのような方向性を目指しているか、という、会社の宣伝が主なプレゼンの内容でしたが、そもそもエリクソンという会社についてあまり知らなかったので、1時間の講演でとてもよく勉強になりました。ちなみに、中国については一言だけ、「最近ようやく規制を超え(恐らくChina UnicomがWCDMAを提供すること)、今後最重要な市場と見ている」という話を述べていました。

興味深かったのは、Sony Ericssonの話は「あれは端末を作ってもらっているだけだ」と、ほとんど何も触れずにスルーし、代わりに半年前に作られた「ST-Ericsson」(STマイクロとEricssonのジョイントベンチャー)の話を、「世界中の主要ノートパソコン、主要携帯電話のチップセットを、ほぼ全て抑えている」という形で大々的に強調していたことです。他には、
- シリコンバレーには研究者を1,200人体制で敷いている。ここは、携帯技術が強い北欧と、IT技術の強いシリコンバレーが今後ますます融合していくと見る中で、非常に重要な拠点としている
- 2014年には、GSM及びGSMの延長であるW-CDMAが世界シェアの9割を占める、と見ており、Wimaxのシェアは1%程度だろう
- 今後エリクソンは、現在分散化されていて全く非効率な、携帯電話のバックボーンと、インターネットインフラのバックボーンを、できるだけ共通化して効率をよくする部分での、機器・システム開発に力を入れていく。

私個人の感想は、下記2点:
- ここでも日本の話は全然注目されていない: 彼自身日本にも仕事で駐在したことがあるそうなのに、日本の話題は上で書いたSonyのものと、ST-EricssonがTOSHIBAのノートPCにチップを売っている、という2点だけ。
- Wimaxはチャンス?: 疑問に思ったので、「Wimaxが2014年に1%しかないと見ているのはなぜか。その前のページで貴方は『2年半で携帯データ通信の量が18倍に膨れている』と言っているし、日本で商用サービスが立ち上がっていることから、5年後にそんなに低いことはないんじゃないか」と質問してみました。彼の答えは、「世界中の主要携帯キャリアがどこもコミットしていないから、というのが1つの答えだ」とのこと。そりゃ、携帯キャリアは3Gに死ぬほど投資していて、その回収をしたいから、Wimaxがいい、とは言いにくいだろうけど、もし本当にそれだけが理由だったら、Wimax陣営は技術とコストに問題が無い限り、顧客を握って既存キャリアを本当に倒してしまえるのではないか、とちょっと思ったりしています。(勿論、既存キャリアもQualcommや政府などと共同で、技術的にも政治的にも対抗措置をとるでしょうが。)

(4) 01:10-03:00pm Smart Grid - The Next Frontier of Mobile/Wireless Ecosystem
Co-Hoas: US-China Green Energy Council
Moderator: Andrew Clark, Director of Corporate Strategy, Venture Capital group, IBM
Panelists:
○ John K. Hane - Counsel, Communications, Pillsbury Winthrop Shaw Pittman LLP
○ Erfan Ibrahim - Technical Executive, Electric Power Research Institute (EPRI)
○ William Kao - Co-founder and managing partner, LEED international LLC
○ Geng Lin- CTO, IBM Alliance, Cisco
○ Raj Vaswani - Silver Spring Networks, CTO.
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IBMとCiscoとユーティリティー系コンサルタントと大学教授ベンチャー企業社長と弁護士(!)の5名による、「スマートグリッドとワイヤレス機器の将来」に関するパネルディスカッション。「スマートグリッドとは何か」と言う、まだ定義すら曖昧なものを、いろんな人が語るのが面白いと思いました。ちなみに、ワイヤレスどうこうという話題にはあまりならず、ましてや中国という単語すら一回も出てこない、純粋なスマートグリッドの議論でした。

ちなみに、スマートグリッドとは何か、を、会議の中で出てきた話で書いてみると、「Nikora Tesla(コイルを発明した人)が1883年にすでに提唱した概念で、”Modernized utility network: distributed, smart, two way flow, based in renewable energy”。今ようやく実現しようとしている。短期的(1-5年)には、スマートメーターなどの機器がユーティリティーインターフェースで、ユーティリティー使用状況の双方向通信を可能にし、中期的(5-10年)には顧客が総合エネルギー管理システムを個人の手に持つことができ、長期的(10年-)には、再生可能エネルギーを全ての人がコントロールできるようになる、というロードマップだろう」ということだそうです。主なメリットは、エネルギーの無駄がなくなる(必要な時に必要なところから必要なだけ放電し取り出し、余った分は充電しておく)。主な課題は、高コストとセキュリティー(個人情報漏洩)、といったところでしょうか。

一番印象に残ったのが、最後にある中国人が、「結局、スマートグリッドって、消費者にどんなメリットがあるの?」と質問したことに対して、あまり的を得た回答が5人から得られなかったこと。シスコの人が、「電力は顧客の2/3が法人だから、法人需要にセキュリティーやメンテナンスなど様々な意味があるし、消費者にもきめ細かいプライシングで需要と供給をマッチしてコストを下げる選択権が与えられる」と答えていたのが一番まともだった気がしますが、正直「これだ」というブレークスルーのアイデアはまだ出ていない分野なのだな、という印象を受けました。

次に印象に残ったのは、ユーティリティー系コンサルタントが冒頭挨拶で、「この中にハイテク企業を5社以上知っている人は何人いるか?(ほぼ全員手を上げる)、では、この中にユーティリティー企業を5社以上使ったことがある人は何人いるか(ほぼゼロ)。このように、ユーティリティー企業は寡占企業かつ平均退職年齢が48歳ということで、シリコンバレーのTech業界とは人も組織も文化も全然異なる。スマートグリッドはこの異文化にシリコンバレー側が戦いを挑んでいる、という構図なので、生半可には行かないことを認識して欲しい」とだけ告げて、後は延々とエネルギー業界のもっと大きな問題:エネルギー需要に対して供給が間に合いそうもない、と言う話を延々としていたことです。

この分野、この会議だけ聞く限り課題は山積みに見えますが、だからこそどんなブレークスルーが出てくるのか、楽しみであります。

最後に、今まで見れなかったComputer History Museumの中身を、少しだけ写真で載せて見ます(撮影禁止とは書いていませんでしたが、もし怒られたら消します)。コンピューター好きがしばし郷愁にふけるには、最高の場所かもしれません。
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by golden_bear | 2009-09-26 22:10 | 学校以外のイベント
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