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A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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MBA向け公共政策の特別講義3日目: 政治家は大変!

この1週間の特別コースですが、普段は、ワシントンのまさに中心部、ホワイトハウス近くにあるRonald Reagan Building and International Trade Centerというビル:こんな外観の建物で、
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中に入るとこんな感じ
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この中のこんな一室
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で講義を受けています。

しかし、本日は「議会の役割と運営はどのようなものか」というテーマであったため、午前中の2コマは、国会図書館(Thomas Jefferson Building)に会場が移りました。

外観
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中はこんな風になっていて、
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窓の外には国会議事堂が望める
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こんな感じの部屋で講義でした。
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(1) The Role of Congressional Staff In The Policy - Making Process (政策における議会スタッフの役割:プロセスの作成)
ある下院議員の下でChief of Staff(首席補佐官、幕僚長?)をやっている職員の方が、日々どのような仕事をしているか、我々に教えていただきました。要は、外資系企業で生きていくには、まずアシスタントの人と仲良くなるべき、というに同じく、議員と仲良くなるにはまずスタッフから、ということのようです。

・ 一日として同じ日は無く、議員先生だろうがCEOだろうが、政策や法案が影響する方々から一日中電話、FAX、メールがひっきりなしに掛かってくる。
・ メールは常にストックされて、返信は常に遅れてしまう。月に1回、DCがたまった問題を元に、問題解決セッションを行い、そこで一気にやっつける(逆に、このタイミングまで電話でフォローしまくっても無駄なことが多い)
・ 議員先生のスケジュールに優先順位をつける際、常に最重要となるのは税率の話。いつも多方面と情報を授受しながら調整するので、自分に知識がついてきてはじめて優先順位付けできるようになる。
・ また、直近の課題を挙げると、失業の問題と、予算制定の問題が大きい。予算制定はロビイストが関わるが、人間関係ができた方との問題はフォローし易い
・ 今はD.Cよりは地元の方が重要で、地元に帰っている時間の方が長い
・ 経済危機の話はまだ全体像が見えていない上、FTA関係で持ち越しになった案件があるので、まずそれを片付けた上で具体的な議題に上るだろう

オバマ政権になったばかりの年明け、と言うことで、目が回るほど急がしそうで、遅れてきて早口でしゃべって早めに帰っていきました。

(2) The New 111th Congress:A Former Member's Perspective (新しく開催される第111回議会:前職議員の視点)
Mickey Edwardsさんという、下院議員を1977年から1993年まで16年間務め、現在はトレーニング機関でディレクターを務めている方が、オバマ政権下で議会がどうなるか、熱く語っていました。ちなみに、元議員の方は、男女関係無く敬称がMrやMrsの代わりに"The Honorable(尊敬すべき)"になっています。

・ 2009年の議会は、アメリカにとって非常に重要な年。オバマ大統領がまず人種の壁を取っ払い、Changeを訴えている内容を、具体的に実現できるようにパッケージ化をやり切るべき
・ この時、現在の課題は大きく本質的な判断が不可欠のため、やり通せるだけの人材をかき集めること、そして、多くの問題を国際問題として扱うことが重要
・ オバマ大統領は、少数派のリーダーに話させる場を設けること、法案を出させること、法案を拒否することの3つを使い分けて、議会をリードするだろう。彼は、この3つをクリアに実行できることが、強みである

そして、最後に、「アメリカは、統治者により統治されるのではなく、『人』により現実にChangeを起こし、『人』により全世界を変えていく国だ。したがって、この国でビジネスの世界にいる人は、この国の構造を熟知した『人』として、変化を起こして欲しい」と仰った時には、拍手が出ていました。これを聴いて、つい最近まで企業には好き勝手やらせて、突然巨額の資金を注入している、手のひらを返したような変化の背景にある考え方がわかったような気になりました。

(3) "Congressional Insight" (コンピューターシミュレーションによる、議会の考え方)
午後からは、普段の部屋とは違う部屋に動き、「1年生議員のロールプレイ・シミュレーション」のゲームを行いました。このように7-8人で1組、8チームを作って、
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各チームがそれぞれ1人の異なる新米議員になり切って、当選から次の選挙までを11ターンに区切って、意思決定していきます。

最初に、各テーブルに置かれている議員のプロフィールや地元の支持基盤などのデータを読みます。私のチームは、「元民間ハイテク企業出身で、極端な緊縮財政を好み、イラク統治は強硬に賛成の立場をとり、、、、基盤は白人が8割を占める州で、製造業が強く、、、」という共和党の女性議員を担当しました。

次に、早速1ターン目。「当選直後」といった状況が新聞の見出しの形で告げられ、質問票が配られます。
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この票には、3-6題程度の「悩ましい」質問が書かれており、1ターン1-7分(問題の数と質による)でチーム内で議論し、結論を出して送ります。例えば1ターン目では、「誰を秘書に選ぶか」、「どの党内グループに所属するか」、「どの団体に支援を求めるか」といった質問が聞かれ、最後に「次の7つの活動の中から、実行するものを4つ選んでください」といった活動選択問題で締めくくられます。

時間が来て回収されると、チェックをつけた内容がすぐにコンピューターに打ち込まれ、結果が「地域アナリストの見解」「ワシントンDCアナリストの見解」という形ですぐに戻ってきます。ここには大抵、例えば1ターン目の例では、「地元ではXX秘書を選ばなかったことで、YY団体が失望感を示している」、「XXグループに属したことでYYから評価された一方、ZZから批判の声が上がっている」、といった批判的なことが書かれていて、へこみます。この結果を反映して、次のターンの問題が各チームに配られます。

3ターンに1回くらい、支持率調査の結果が送られてきて、自分はどれだけ与党、野党から支持されているか、他の議員と比較しながら知ることができます。ちなみに、与党からは51%以上、野党からは15%以上支持されていることが、次回選挙で当選する目処となるようです。
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ターンが進むことに、意思決定がどんどん難しくなります。最初のうちは、ある法案の予算を増やすか減らすか、といったシンプルな判断ですが、そのうち
・ 自分が支持した政治家が問題を起こして追求された時にどう対処するか
・ ホワイトハウスから発注された公共事業を受け入れるかどうか(受け入れると、ホワイトハウスと地元企業の支持は上がるが、税率を大幅に挙げた上環境団体から批判される)
・ ブラジルとのFTAをどの条件で結ぶか
そして、途中から資金調達もして、最後の方では次の選挙向けに、いつ、どのようなプロモーションを打つかも決めなければなりません。正直、この位になると、そもそも問題がわからなかったり、7人のチーム内で意見が真っ二つに分かれたり、とパニックになってきます。

最後に、次の選挙で当選したか落選したかが判明し、ゲーム終了です。我々のチームは、53%の支持を集め無事当選。8チーム中4番目の成績でした。

実際に議員1年生になり切ってみて、私自身最も感じたことは、政治家は自分から「何かしたい」という気になる時間は全く無く、瞬時の判断と、リソース配分に追われ続けるピエロだ、ということです。これは、下記のようなことから思いました。
・ 7つの選択肢から4つしか活動が選べないのだが、確かにその4つが大変そうで他のことをやる暇はなさそう
・ 判断するには、情報が少ないし、仮にもし情報が増えたとしも、常に利害関係は残る
・ また、そもそも法案の数が多く、その話題が多岐に渡るので、詳しく判らない状態で一瞬で判断しないといけなさそう(アメリカ人議員は、年間に数千-万単位の法案に目を通すそうです)

他の方の感想でなるほどと思ったのは、下記のようなものです
・ 絶対に関係者全員を満足させることはできない。完璧な法案は作れない
・ 自分を批判する人に向かって、寛容になれないとやってられない
・ 時間が無いので、問題解決するより、チームでコンセンサスを取る方が重要(←この発想は危険だけど、チームでやったらそうなった)
・ 長期的に良くないとわかっていても、つい今の自分の保身に走る選択肢を選んでしまう
・ 妥協するよりは、信念を通した方が良い
・ 地元と国の利益は、よく対立する

政治家って、こんな感じで条件反射に追いまくられるだけだったら、確かに頭の良さ自体はあまり重要ではなさそうだし、若くても経験無くてもなんとかできそうだけど、実際にやるのは大変そうだなあ。


(4) Protecting the Homeland - Business as a Target (自分の国を守れ-標的となるビジネス)
最後に、また元議員のTimothy J. Roemerさんから、いかにして国家の安全を保証するか、特にビジネスがターゲットにされるテロの話を中心に頂きました。

・ 現在オバマ大統領は、課題の優先順位リスト(問題の大きさ、解とリソースの有無、期限など)を作っているが、国家安全保障と経済危機対策の2つは常に最上位にある。これらがクロスする課題の優先度はさらに高くなる。
・ 従って、資源ビジネスが集積している地域のテロは、特に重要度が高い。たとえば、下記3地点へのテロが該当
 1. マラッカ海峡:全海運量の約25%が通過し、石油も出る。
 2. ソマリア海沖: サウジアラビアの石油がハイジャックされる
 3. ムンバイ: 金融セクターと、核開発施設がすぐそばにある
・ テロでなくても、同じ優先度で考えて、例えば「失業が元で、学校閉鎖が起こった地域の犯罪問題」も優先度が高くなる
・ 移民とその貧困の問題は重要。欧州に学ぶ必要がある。特に
 1. 移民受け入れの体制をスムーズにする:厳しくすると、不法侵入や事故の原因になる
 2. 全ての移民に、機会を与え、教育を行う:アメリカは最高レベルの教育を優秀な人にのみしている
 3. 政治的な利益に結びつける: 人口増のバランスを上手く取れるかどうか
・ 長期的には、クリーンエネルギー政策と、エネルギーのポートフォリオを組むことで、資源地域のテロの危険を緩和できる可能性はある

最後に、「テロの問題は、国家問題。9/11を想像して、自分の肉親が殺されたことを想像して欲しい。そして、貴方の未来を守る公約に票を投じて欲しい」というメッセージで締めくくり拍手が。いかにもアメリカの政治家らしいスピーチでした。
by golden_bear | 2009-01-07 23:11 | Washington Campus
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