A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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敗軍の兵、将を語る2 - ビジネスプランコンペを終えて

3月17日(火)に、UC Berkeley Business Plan Competitionの準決勝大会が行われました。1月に80チームで行われた予選(書類審査)を勝ち抜いた25チームが、2月からプランの詳細を30ページ(+8ページの補遺)の資料にまとめ、3月10日(火)に提出。その資料を基に、プレゼン15分、質疑応答10分の25分間の審査を行うのが準決勝大会の当日です。

・ 事前準備
プラン自体は、既に3月10日(火)までに喧々諤々の議論を繰り返し、38ページまとめ切ったのですが、それを最大15分のプレゼンにどう落とし込むかが、また難儀でした。これに先駆ける3月4日に、地元ベンチャーキャピタル(以下VC)3社とベンチャー企業1社による「VCに受けるピッチ(プレゼン)とは」という特別講義に参加していたため、求められるプレゼンの要件は、全員で理解していました(注1)。しかし、いざ実際に作り出して見ると、簡潔な言葉とは何か、伝えたい内容は何か、ビデオ・アニメーションをどう効果的に使うか、に至るまで、主要メンバー4人(起業家、弁護士、コンサル、投資銀行)のバックグラウンドで、考え方がこうも違うのか、と唖然としました。

最終的には、コンサル出身の私がフォーマットや15分で伝えるべき全体のメッセージの構成・順番を設計し、各ページは分担して作成。その後、写真やアニメーションを起業家がふんだんに取り入れ、弁護士が余計な文章を削り、最後に唯一ネイティブスピーカーの投資銀行家が、英語のチェックや冗長なアニメーションなどを削って、プロフェッショナルな形に纏めました。完成品は、コンテスト用のプレゼントしては驚くほど秀逸だ、とメンターにも太鼓判を押していただいたきました。これには私も素直に納得しましたが、コンサルティング用のプレゼンテーションとして見ると50点程度の出来(必要な情報が削られすぎ)と思ってしまい、コンサルタントのプレゼンが、如何に一般社会からかけ離れているのか、自分にもリハビリが必要、と改めて実感しました。

・ 直前準備
当日は朝10時から(授業のあった私は11時から)発表時間の13:30まで、大学近くの友人宅で何度も発表練習を繰り返し、御互いにフィードバックしました。
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プレゼンの構成上、社長の起業家が大部分を発表し、MBA生3名は各1-2枚ずつ補足する、という形になりました。1回目の練習では17分かかってしまい、それぞれお互いの発表内容やメッセージを削りながら、5回目の練習でどうにか15分に収めました。プレゼンの練習を2時間以上する、というのは久しぶりで、新鮮な経験でした。

・ 当日の様子
当日は、普段のキャンパスとはちょっと離れた、桜が綺麗な別キャンパスで行われました(終了後の夜の写真ですが)。
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全員スーツでびしっと決めて、審査員3人の待つ監獄部屋(!)への入場を待つ瞬間は、緊張感がみなぎります。
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さすがに監獄部屋の中を写真で取ることは出来ませんが、中にはVCの審査員が3人おり、我々のプレゼンをある人はとても面白そうに、また別の人は興味なさげに聞いていました。我々の審査員3人のうち2人は理系のPh.D、1人はMBAという組み合わせだったことから、技術系のプレゼンの際には大変もリあがっていたようでした。

実際のプレゼンですが、1つ不運だったのが、白い背景に黒い文字で提出したパワーポイント資料が、黒背景にスタイルを変えられてしまい、文字が非常に読みにくくなってしまったこと。それでも、これを察知した起業家が、最初15分の前半部分で練習より落ち着いてゆっくり話したため、何をやりたいのかが非常にわかりやすく伝わりました。一方で、残る我々3人の、どうビジネスとして成立するのか、というパートの時間は若干短めになり、それでもギリギリ15分で終わりました。

その後の10分の質疑応答では、案の定ビジネスの成立性に関する質問が連発しました。ここでラッキーだったのが、我々のチームには3人の専門家がいたおかげで、質問自体に完璧に答えきった上に、15分のプレゼンで伝え切れなかった部分を補足し、むしろ我々のアピールの為に10分間を有効活用できたことでした。例えば、競合優位性に関しては相当突っ込まれるだろう、と一番心配していた私は、他の楽観的なチームメンバーの裏で、どうやって競合から市場シェアを奪うか、ずっと考えていました。従って、連発された質問のうち大部分は私が即答する役を務めました。また、一番厳しい質問であった
「3年前にこの競合に私自身が投資している(!)のだが、そちらの方が上手くやっているぞ」
という質問に対しては、弁護士のイスラエル人が
「いや、直近ここ1-2ヶ月の間に、その競合自体が方針転換を余儀なくされている。この市場の変化に我々自身も大変驚いている。貴方はフォローしてないのか」
と逆に相手を攻めた上で、
「これは、競合が変化に対応しながら市場を拡げてくれているのを見ながら、我々自身が十分準備できるチャンスだ」
と即答で切り返した。またしても、ユダヤ人とは交渉したくないな、と思った瞬間でした。

・ 結果
非常に残念ながら、8チームが残る決勝大会には進めませんでした。これは、25チームそれぞれのアイデアが素晴らしい中で、より決勝で戦わせたい8チームが他にいた、ということなので、4月に行われる決勝大会では、その発表を楽しみにしたいと思います。

・ 反省と学び
審査員がどういう反応だったのかはまだ明かされていませんが、我々の発表内容側に問題があるとすると、下記の2点だったかな、と思います。
 - 要求する投資額が高すぎた: 最初1-2年の間に市場が爆発するまでは、顧客を開拓しながらブランド力を高めなければならない、というビジネスのため、ハイリスクハイリターンで最初に数億円投じてもらう、という絵しかかけませんでした(注2)。今の経済状況で、初期投資数億円、というのは、よほどリターンが確実、あるいは、強い特許を持っている、のでもなければ、成り立たないだろうと思います。
 - この機会しかない、という緊急性を訴求し切れなかった: 前にも少し書きましたが、このチームには何か特別な特許とか固有のアイデアがあるわけではありませんでした。そこで、プレゼンの組み立てとして
 「急激に伸びている市場がある」
 →「その市場には大企業が何社も参入しているが、どこもうまくやっていない」
 →「我々は、大企業が上手く出来ない構造的な理由を発見し、加えてどこよりも上手くやる方法とそれに必要なリソース・スキルを解明した」
 →「先行者利益を得たいから、今すぐ投資してくれ」
としました。ただ、この論理の流れや状況が本当なら、他に同じようなことを考えている企業がいっぱいあるかもしれず(現に、審査員の1人が3年前に同様の企業に投資した)、私がVCなら他も見てみたい、という気になったと思います。結局、我々の何が凄いのか、という部分が弱かったということになります。

一方、私自身には、得がたい貴重な学びが多数得られた大会でした。

 - 英語力の伸びを実感: 前回このようなコンテストにおけるプレゼンは、前職中、2006年末に新たなコンサルティング手法を競う大会(注3)に出場した時のことでした。このとき、準決勝のアジア大会にて、私自身が質疑応答の受け答えに失敗し、決勝の世界大会に進めなかった痛い経験があり、実は質疑応答はトラウマになっていました。ところが、今回は10分間の質疑応答のうち、6-7分間を私が淀みなく答え続けることが出来て、自分の中で大きな自信となりました。MBAに来た半年間、特に今年に入って、やたらチームワークを増やした成果を、実感することが出来ました。

 - 起業家のリーダーシップを体験: 我々がチームを組んだ、ブラジル人の女性起業家は、未だに得体が知れない方なのですが、とにかくリーダーシップということに関して非常に学べました。まず、本当に成功しか疑わない。動物的な勘があるのか何か知りませんが、全て成功することを前提に物事を考え、常にポジティブ。これは、問題解決の時に非常に重要で、例えば我々が「コストが高すぎて採算が合わない」、という分析結果を見せると、その反応は「もっといいやり方で採算が取れる方法があるはず。何しろ、市場はあって、伸びているのだから」。また、「この給料で人材って急に集まらないと思うんだけど」と聞いても、「今私の住んでる、サンノゼに失業者溢れかえってるから、彼らに声掛ければいくらでも直ぐ飛びつくわよ」。こんな調子で本当に、「ビジョンはあるから、頑張ってくれれば結果はついてくるよ」といっているだけなのです。なのに、それでも弁護士、コンサル、投資銀行家が納得してついていく。丁度先週号の日経ビジネスに、サントリー社長のインタビューがのっていましたが、「もっとやれ、もっと攻めろ、と檄を飛ばす言葉を繰り返したあと、がはははは、と豪快に笑う」点など、とても共通する点があります。よく、「起業家になりたいなら、コンサルタントにはならない方が良い」と言われますが、今後自分が組織のリーダーになるのであれば、嫌でもこういう資質を身につけていくんだろうな、というロールモデルを、間近に見ることが出来ました。

 - 投資家の言葉を学ぶ: チームメンバーとして一緒に働いた投資銀行家、また、プレゼンをした相手のVCの方々からは、結局金融業・投資家は、金出して儲かるかどうか、その1点の理由をとことん突き詰めているわけで、その人たちと会話をするには、その言葉で話さなければ為らないことを学びました。私のように、技術者や現場の方々と話す時間が多かった人々とは、180度興味の対象が異なっています。彼らと衝突したこと自体が、私のMBAの目的の1つを満たしており、実際私の世界を大きく広げるきっかけになっています。

 - ビジネスモデルを構築する: 今回、恐らく人生でもはじめて、「明確な競合優位性や資産が無いのに、ビジネスプランを書かなければならない」状況でした。それでも、一応25分間のコンペで淀みなく説得し続けるだけのプランが書ける事は、自分でも驚きました。また、このある業界で戦略を考えたり、調べたりしているうちに、1つの勝ちパターンの型のようなものに気付きました。これは、似たようなビジネス環境においては普遍的に使えそうなアイデアで、例えば早速翌日のBetter Place社の授業で、他のチームのブレストの時に適用して、喜ばれたりしています。面白そうなので、2年生になったら自由研究のテーマにして、自分で実験したり、その結果が面白ければ、来年のこのコンペに出てみたりするかもしれません。


というわけで、バークレーに学びにこられる方(学部問わず)は、機会があれば是非、このUC Berkeley Business Plan Competitionに参加されることを、強くお勧めいたします!


(注1)「VCに受けるピッチ」講義幾つかの要旨を抜粋:
- VCは大体1,000-2,000のアイデアを見ており、また、ピッチは1日中続きうんざりしている。従って、VCはPDFファイルを見ない。大体30秒で要旨を見るのがせいぜい。従って、最初のページでキーワードが浮かび上がっていることが重要
- VCは基本的にビジネスプランを発表する人が好きである。したがって、VCは何とか好意的に「自分がこの企業に投資したい理由」を探しながら、ピッチを聴く。だから、リターンが増える要素(例 scalable, less capital/license risks)が多いアイデアほど良い
- VCは、過去数年の経験から、成功の型を発見しており、その型へのパターンマッチングをしている。ピッチでは、貴方がどんなビジネスをするのか「何を売るのか、どういうオペレーションをするのか」のみを余計な言葉を混ぜずに説明し、後はその成功の型に収まっていることが重要。
- 大きな判断ポイントは、「貴方が何を売るのか(商品)」。そして、経済社会の生態系の中でどのような役割を果たすのか、「貴方がどんな動物なのか?」も、重要である。
- 具体的なプレゼンとして、文字を極力大きく(24ポイント以上)、1スライド箇条書きでの文章は、最大5-6点。図表や写真・動画を用い、極力言葉を減らす、などの工夫し、言葉で臨場感を持って説明すべき。

(注2) こじんまりニッチにローリスクローリターンに立ち上げる、というプランもあったが、この場合逆に投資してもらう必要がなくなってしまい、コンテストに出る意味が無くなってしまう

(注3) コンサルティングを実施した結果、あるいは独自調査から編み出された、新たなコンサルティング手法を、社内でプレゼンしあって競う大会。
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by golden_bear | 2009-03-21 20:58 | ビジネスプラン

better place社へ行ってきました - MOTの授業

今週月曜日に、授業のコンサルティングプロジェクトでbetter place社を訪問してきました。better place社はこのブログでも過去に何度か登場していますが、端的に言うと、電気自動車の普及を促すために、携帯電話のビジネスモデルを導入しようとしている企業です。DoCoMoやSoftbank、AUがアンテナを日本中に設置し、携帯電話端末を1円で販売し、通話料で収益をあげているように、better place社も、充電できる場所を一杯整えて、電気自動車を安価で販売し、充電した分だけ収益を得ようとしています。すでに、イスラエルでは大統領が強く推進し、19社がBetter Placeの顧客パートナーになるまでに進んでいるようです。他国では、デンマーク、オーストラリア、カリフォルニア州が導入を決定しています。これを受け、自動車も日産、他、幾つかのメーカーがBetter Place向けに車両を開発することに協力を決めています。

しかし、国の自動車の7割が社用車であるイスラエルと違い、カリフォルニア州の電気自動車導入には、様々な課題が立ちふさがっています。最も深刻なのは、アメリカはガソリンが安い!こと。このガソリン車に最適化された車社会では、電気自動車ではコストがバカ高くて、全然採算が取れないようです。また、電気自動車ビジネスを推進したい企業はもちろんBetter Placeだけではなく、当然全ての自動車メーカーや資源メジャーなど様々な企業が参入を検討しています。従って、これら想定競合(注1)が追いつく前に、いかに実績を作って広めてしまえるか、の競争が鍵になります。

今回の授業"Technology, Innovation and Leadership"は、工学部とMBAの学生がそれぞれ15人ずつ、計30人の少人数クラスです。毎週水曜2時間の授業は、講演とプロジェクト進捗報告の2本立てになっています。学生が6チーム(バッテリー、自動車、通信システム、インフラ(ハード)、インフラ(ソフト)、パイロットプラン)に分かれてbetter placeを例にとり、「カリフォルニア州でどうすればより早くより良く電気自動車が普及するか」というテーマで研究を進めています。この状況は、授業の後半1時間で、進捗報告と討議が行われます。一方、授業の前半1時間は、Better Placeのカリフォルニア在住の上級マネージャー、または、UC Berkeleyの様々な学部から環境問題を研究している教授陣がやってきて講演し、学生と議論します。このほか授業の外にも、2週間に1回は教授2人と1時間のミーティングがセットされており、まるで昔論修士論文を書いていたころのスケジュールを思い出します。

私のチームは、パイロットプラン: カリフォルニア州でBetter Placeのビジネスそのものを、どうやって立ち上げるか、という計画作成をやっています。チームメンバーは下記:
- MBA 1年、自動車メーカーのエンジニア出身、スペイン人
- MBA 1年、経営コンサルティング出身、日本人(私)
- Engineering Ph.D 3年生、環境・エネルギー工学、アメリカ人
- Engineering Ph.D 3年生、環境・都市工学、アメリカ人
MBAの2人が留学生のため、Engineerの学生に英語をサポートしてもらう一方、機械・電気工学の知識はMBA生2人の方が持っている、という面白い組み合わせで仕事をしています。また、この環境だと、私がコンサルタント時代に培ったスキルの数々(課題発見、問題解決、ファシリテーションなど)が存分に発揮できます(せざるを得ない)。その一方で、Ph.D学生の環境に対する専門知識やアセスメント能力(分析やモデル構築など)の高さには、毎回非常に驚かせられています。こうして、御互いの強みを生かしながら、常に自然と議論のリード役にならざるをえない環境は、非常に良い国際経験となっています。

パイロットプランですから、もちろん想定顧客のbetter place社が実現できるものである必要があります。
- いきなり一般市民に入れてもらうのか、それともタクシーやカーシェアリング・レンタカーのようなサービスが良いのか、企業に売り込むのか、または政府に売り込むのか、あるいはガソリンスタンドと手を組めば良いのか。
- 具体的にどの都市で、どの組織から声をかけるのか、どの順番だと効果最大リスク最小にできるのか
- Better Placeにできない我々のプロジェクトの存在価値は何か、、、
2月末までの1ヶ月間は毎回喧々諤々の議論でしたが、ようやくまとまって、ついに第1回目のクライアント・ミーティングに行ってきました。

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Better Place社は、Stanford大学のお膝元、Palo Alto市一角の山奥にあり、幾つか近辺の建物にはHP、VMwareやSAPといったIT企業のシリコンバレーオフィスが多数並んでいました。これら大企業が複数の部屋や建物を占拠している一方で、端の建物の本当に片隅の1室に、こじんまりとBetter Place社はありました。(SAPの建物が近いのは、better place社長のShai Agassi氏がSAP出身だからと思われます。)

これ以上、会社や議論の中身について、詳しくここでは書けませんが、「この部分は当然自分達でできるから、期待していない。一方、こちらの知識は自分達ではなかなか調べられないので、是非進めて欲しい」という話を明確に厳しく指摘され、お金を貰っていない学生プロジェクトとはいえ、「外注先としてのコンサルタント」の使い方を良くわかってるクライアントだなあ、と感心しました。また、いろんな意味で凄く国際的なオフィスで、まだまだ小さなベンチャー企業でありながら、イスラエル、日本、デンマーク、オーストラリアと世界中と交信しまくっている様子を、目の当たりに感じることができました。

5月頭の最終報告に向けて、引き続き楽しみながら頑張りたいと思います。


(注1) 今年2月23日に開催されたBerkeley Energy Sypmosiumでの講演によると、2012年までにトヨタは最も小型の車両で、Tesla Motorsはセダンタイプの車両で、それぞれ電気自動車の販売を検討しているとのこと。ここで、バッテリーチャージの課金モデルが各社の新たな収益源であることにも言及しており、better placeが目指すビジネスモデル(充電プラグの標準化)とは真っ向から対立する。
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by golden_bear | 2009-03-15 00:32 | 学業

今の株価の拠り所は何か: M&Aの授業中間感想

今学期6コマ取っている授業のうち、ダントツに重いプレッシャーがかかっているのは、M&A Practical Primer。全10回のうち、6回が終わった現時点での感想を書いてみます。
・ 「学生の授業1コマとは思えない大変さ」
・ 「だからこそ、身に付くものが多い」
・ 「身につけてみると、世の中不思議なことだらけ?」

・ 「学生の授業1コマとは思えない大変さ」
まずとにもかくにも大変。何が大変か、というと、

- 予習の量: 
毎回の授業で10問程度の質問に答えるために、合計150ページ位の資料が送られてくる。それぞれの質問自体は、「買収協定における7つの条件は何か、それぞれの目的を述べよ」、「パックマン・ディフェンスとは何か、過去のXXの事例ではどのように当てはめられたか」、という、M&Aの用語・概念・事例を、各回毎のテーマ(法務と会計、買収プロセス、敵対的買収対策、など)に沿って問う。その問い自体に答えを出すには、教科書数ページ+事例の新聞数ページを読んでおけば何とかなるが、実際に当てられると矢継ぎ早に「そもそも何でそんなのが必要なのか」、「それがもし効果ないとするとどういう場合か」、など、数問続けて突っ込んだ質問をされるので、準備しておかないと気が抜けない。

- 参加者の質の高さ: 
で、周りを見渡すと、これらの連続質問にみんなガンガン答えている。よく見ると、多くがファイナンスのバックグラウンド有、無くてもファイナンスへの転職を考えている人たち、あるいはコンサルタント出身など質問の応酬に慣れたやる気のある人達ばかりです。

- 課題の質: 
これら毎回の予習に加えて、10週間で計4回、課題提出。第1回目のみ個人課題で、内容は「DCF法とPro Forma法でディールの企業価値を算定せよ」。補足資料は大量に配られるが説明はなしで、もし提出できなかった場合受講資格なし。つまり、「投資銀行やプライベート・エクイティのアナリスト程度の仕事は、自力で出来るようになってから受講しに来い」という位置づけの授業と実感。2-4回目の課題は、チームでやることになっており、定量分析はできてることを大前提に、CEOにどういうプレゼンをするかを評価として問われる(後述)。

- 規律の高さ: 
上記のハードルの高さに加えて、全てが厳格。例えば、月曜日6時に課題提出、と言われて、仮に1分遅れた場合、普通の授業なら許してもらえるか、少なくともその課題のみ0点になれば済むが、この授業の場合は1回でもそういうミスを犯した瞬間に即「不可」。したがって、ミスを犯さないことはもちろん、何らかの事情で授業を欠席しなければならない場合など、それを権利として勝ち取るには、本当にビジネス並みの交渉を強いられる


・ 「だからこそ、身に付くものが多い」

これだけ要求事項の多いハードな授業を展開できる教授や周りの受講者に混じることで、身に付くことが多数あります。

- 教授の独特の視点:
教授のPeter Goodson氏は、20歳で起業し事業を高値で売却、この経験を持ってある投資銀行に入り、27歳でM&A部門を設立し、800件以上のM&Aアドバイザーになった後、Clayton & Dubilier, Inc.というプライベート・エクイティーのパートナーを務め、Lexmark(元IBMのプリンター部門)を買収しHPに売却するまでのターンアラウンドなどを実施。引退するまで40年もの間、投資銀行からプライベート・エクイティへと、投資・M&Aに関する売る側、買う側双方の酸いも甘いも知り尽くした方です。下記のような言葉1つ1つに、独特の価値観を感じられます。
-- 「シナジーという言葉は、Four Letter Word。使ってはならない。そんな概念は、この世に存在しない。あるのは、Operational Improvementのみだ」
-- 「投資銀行という産業の価値は、数年後にはコンピューターの自動計算で全て置き換わってしまうだろう」
-- 「雇う側の立場でM&Aに必要なのは、数値結果と人間として信頼に足る人。したがって、あなた方がM&Aを学ぶ、ということは、マッキンゼーがやっているような大局的に物事を捉えて的確にコミュニケーションする能力を学ぶことにほかならない」

- 現実に即した課題: 
第1回の課題で、定量分析の仕方を無理やり身につけさせられて以降、第2回ではある20年ほど前のハーバードケースを元に、企業価値算定を行ったあと、10ページの定型(ページごとに書く内容だけ割り当てられる、中身は自由)プレゼンテーションを作成。このケースの時点で、既に1回他社による買収が失敗してホワイトナイトが現れている、という状況でスタートし、自社、競合、ホワイトナイト、買収先の現オーナー、グリーンメーラー、一般株主の6者の利害をどう解決するか、戦略、価格決定、交渉術全てが要求されるものでした。これをチームで議論しながらやることで、実際のM&Aの現場で何が起きているか、とても臨場感を持って学ぶことが出来ます。

- チームワークによる自分を省みる機会: 
そのチームですが、今回は3人組。私に加えて、下記の2人です。
A. 欧州の国際機関で発展途上国投資案件のコンサルタントだったアメリカ人(アメリカには人生のうち5年しかいないらしい)
B. ITシステム・アウトソーシングの会社を米国で起業した中国人(学士まで北京で、修士へ留学後はずっと米国滞在)

最初のチーム活動では、母国語が英語かつ唯一の金融経験を持つAさんに頼り切りになるかと思いきや、Aさんが忙しくてなかなか出来ない、とのことで、Bさんが定量分析、私が定量以外の戦略などを担当して、最後に3人で纏めることに。すると、BさんとAさんが数値の議論で衝突しまくって、私は知識も無いことから外からただ呆然と見守るのみ。全体を通しても、結局私に作れそうなのが10枚中2枚しかなく、全然チームに貢献できずにあせっていました。

ここで唯一役に立ったのは、やはり前職のスキル。私が作り上げAさんに手直ししてもらった「Executive Summary(要旨)」のページが、そのページに関しては全チーム中一番素晴らしい出来だったと判断されたらしく、全体の前で事例として紹介され、議論されたことです。この要旨と、私が書いたもう1枚の資料も高得点だったことから、どうにかチーム内でも信頼を勝ち取ることが出来たようです。教授がコンサル的な考えが好きだった幸運、私のコンサルタントとしての最後のプロジェクトでExecutive Summaryを1人で書き切れるようになるために、何度もフィードバックをくれた上司2人、同僚2人に、大変感謝すると共に、自分の強み・弱みが何か、再認識できました。

そして、第3回の課題では、私が一杯一杯になってしまったので、代わりにAさんが定量分析を先に全てやり切ることに。その結果に意見が欲しい、と言われて、「今回何も事前準備していない私に何が発言できるのか」、と不安になっていました。しかし、いざ議論に上ると、自分の口から、「この前提はこちらに置きなおすべきではないか」、「この結果を見ると、先にこちらから手をだすべきでは」、「この数字になるのは、何か変だ。このあたりを再チェックしたら良いのではないか」、といった風に、何故か自然に気になるところがどんどん出てきて、より良いモデル作りに大分貢献できました。こういう動きが自然に出来たことで、
-- 今まで6回の授業で叩かれまくった知識が、結構身についていること
-- 作業に入らずに、ゼロベースで一生懸命考えた方が、却って大局的な思考ができること
という、昔の自分に大きく欠けていた2つを、しかも英語で実践できた自分の成長に、驚くことができています。

- タイムリーな話題:
もう1つのこの授業の特長は、現在進行形のM&Aを題材にすることも多いことです。例えば、この前の予習問題は、丁度この記事を書いている現在、スイスの製薬会社Rocheがシリコンバレーの製薬ベンチャーGenentechを敵対的買収中なのですが、「このディールに不可欠な2要素は何か」、「これらが成功すると思うか、その理由を述べよ」、といったものが数問入っていました。これらの議論に授業の30分くらいを裂いた結果、「その価格($86)では成功しない」という結論。その翌日、実際に$93に価格がつりあがったりするのを見て驚くと共に、すぐに「いや、$93はまだ低いんじゃないか」とか自然に議論になるのが面白いです。

そして、現在取り組んでいる第3回の課題は、実は前回の記事で紹介したウェブページビュー第2位と第3位の、「M社がY社をどう買うべきか、3月12日にM社のCEOにプレゼンを行う準備をしろ」、というもの。ここ数年間の山のようなM社とY社の資料と格闘しながら、先週発表された2008年度最終決算報告の数値、毎日本日の株価を照らし合わせてプレゼン資料を作っていくことは、まさに実際のディールを行う感覚を体験できます。

・ 「身につけてみると、世の中不思議なことだらけ?」
最後になりましたが、この授業で学ぶ中で、意味がわかると、えっ、と思う事象に出くわす機会が多くなることに気付きました。例えば、今回のM社とS社の分析の為に、金融機関3社のアナリスト・レポートを取り出して読んでいたのですが、見た瞬間に下記3つの点がとても不思議で仕方ありません。

- 1つの企業の売上・コストに、3社3様の違う数値を使っている → 違う理由はWeb企業独特の売上算定法で仕方ないのかもしれないけど、そんなところで各社差別化する必要があるの?
- EV/EBITDAという、倍数の指標があるが、これらは2009年以降2008年から80%減くらいになっている。 → 2008年以前に予測されてた企業価値の前提って、いま全部ぼろぼろじゃないか。しかも、これは1社の例だけど、実態の株価はまだそこまでは減っていない、ということは、株価はまだまだ下がると考えていいのか?
- しかし、目標株価の算出には、2008年時点のEV/EBITDA数字を使っている。 → 全然つじつまが合わないように見えるんだけど、これはあまりにも実際と予測が離れすぎているからか?アナリストレポートは、顧客に株を売りたいから、そうするための都合のよいロジックを見つけてきて書いちゃってるの?

実はコンサルタント時代もよくアナリストレポートを見ていたのですが、見え方が全然違ってきた上に、「こんなもん信用していいのか?」という疑念が出てきたのも確かです。さらに、多くの機関投資家がこれらアナリストレポートを参考にして投資しているとすると、どういうロジックで今の株価が形成されているのか、さっぱり判らなくなりました。前学期に、ファイナンスの授業で

- 理論株価は、将来の配当金の総和を現在に割り戻して、株数で割ったもの
- 一方、実際の株価は、理論株価からではなく、株式市場の需要と供給の関係からきまる。理論株価はむしろ後付に近い

という概念を初めて習った時も目から鱗で新鮮でしたが、今回まさに、全く理論と実際は乖離している→理論による予測は何しても全然上手くいかない→それなのにどうにか説得力持って話すのがアドバイザリー達(投資銀行・コンサルタント)の仕事→そのアドバイザリーを信用したり疑ったりしながら、正解の無いものに判断を加えるのがCEOの仕事、という現実を改めて目の当たりに感じることが出来て、とても新鮮な気持ちです。
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by golden_bear | 2009-03-07 15:20 | 学業

起業は昔より大分易く(安く)なった - B-Plan Competition(1)

以前お伝えしたとおり、地元の起業家が参戦しているBerkeley Business Plan Competitionのチームに、ひょんなことから巻き込まれてしまいました。チームメンバーは

A. ある分野に豊富なアイデアを持っている、正体不明の起業家: ブラジル人、女性
B. 巨大ITシステム企業の法務出身MBA1年生: イスラエル人、男性
C. 経営コンサルティング、オペレーション出身MBA1年生: 日本人、男性 (私)
D. 投資銀行、不動産投資出身MBA1年生: カナダ人、男性

の4人に加えて、主催者側からメンターで派遣されている

E. 過去に起業経験とMITの100Kコンペ審査員の経験のあるコンサルタント: インド人、男性

が、ものすごくこのチームにコミットしていることから、実質5人体制。25チームで争われる準決勝の書類提出締切が、3月10日(火)、プレゼンが3月17日(火)、ということで、先週の日曜日丸一日と昨日の半日を潰し、さらに毎晩1時間Skype会議後に作業、と、ラストスパートで大変なことになっています。


内容は、実際にプレゼンがWebにアップされてからのお楽しみとして、幾つか調べているうちに、「起業って数年前に比べて、全然安くできるようになったんじゃないか」と思いました。そう思ったツール3種を下記に照会します。

(1) 有名Webのトラフィックが判るquantcast
このサイトでURLを打ち込むと、どういうWebサイトにどれくらい(少なくとも米国から)毎月訪問者があるか、一目瞭然になっています。したがって、ビジネスプランを作るときにこのサイトをじっくり研究すると、「競合や同種のWebサイトにこれくらい訪問者があるから、うちはこういうサービスとブランドでこれくらいを狙いたい」、という、マーケティング目標設定の1つの目安を作りながら、アイデアを深めることが可能です。(どのくらいの精度があるかはおいておいても、1つの目安になります)。

ちなみに、このサイトによる現在のトップ10は、下記のようになっています。(単位:百万訪問/月)
1 google.com 140
2 yahoo.com 126
3 msn.com 106
4 live.com 99
5 youtube.com 78
6 wikipedia.org 77
7 microsoft.com 76
8 myspace.com 68
9 facebook.com 66
10 ebay.com 65

(2) Amazon Web Service EC2が安い!
さて、どんな企業を設立するにしても、最低ホームページくらいは置いておきたいと思うのですが、このサーバーコストって、エンジニアを雇うことも考えると結構バカにならない費用になります、、、と思ってたのが数年前。今は、とんでもなく安く、スケーラブル(後から追加拡張しても、それで膨大な追加費用がかかるわけではない)なシステムが組めるようです。

ここから、Amazon Web Service EC2の値段表が見れます。これを元にちょっと試算すると、Amazonで作れば、データ量にもよりますが、上記(1)でTop10くらいトラフィックのあるウェブでも、人1人雇うより安く作れちゃうんじゃないかという結果になりそうです(実際、wikipediaは社員2人で寄付金でやってるみたいですが)。1つ前の記事で書いた、クラウド・コンピューティングの威力を実感します。

(3) コールセンターって誰でも作れる(米国の場合)
ビジネスを立ち上げる以上、お客様からの問い合わせやクレームに対応するために、電話番は必須です。最初は社長が直接電話に出れば、顧客の声をビジネスに素早く生かすことも出来るでしょうが、次第に顧客が増えると、社長が電話に出てたのでは当然ビジネスが回りません。しかし、当初売上に乏しいベンチャーでは、人1人雇うのでも結構バカにならない費用です。

ひょんなことから、「コールセンターってインドにアウトソースできるよ」と聞いたので、ここにとりあえず見積もりの情報を送って見ました。「1日何件くらい電話がかかるか」、「用途・会話内容は何か」、といった4-5項目と私の連絡先を入力すると、翌日には5社からメール、1社から電話が私のところに届きました。メールのタイトルを見ると”月$24.99からコールセンターを設置できます、、100分無料通話、機器設置込み”といった表現が書かれています。小中学生でも、自分の小遣いで海外の人(サービス)を雇うことができる時代になったのか、と驚きました。

もちろん、詳細な価格表を見ると、通話時間や内容に応じてどんどん課金されていく(携帯電話の料金プランみたい)。で、ある利用時間を超えると、「相当ぼったくってるな」という料金になるので、大企業になっていくにしたがってコールセンターを自前で持って、そのオペレーションを改善する理屈がよくわかりました。


というわけで、アイデア・理念、良い人材、素晴らしい技術/特許、時代の流れ(運)、のうち、2つか3つくらい揃えば、会社を建てるだけなら、本当に低コストでできるようです(後は何をするか次第)。今回私のいるチームには特に技術・特許があるわけでは無いので、後はチームワークでどれだけ良い起業プランをAさんにプレゼントできるか、がんばってみます。
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by golden_bear | 2009-03-05 05:04 | ビジネスプラン


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