A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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MBAの成績の使い方 - 出揃った成績を見ての所感

少し前の話ですが、卒業式から1ヶ月ほど経ってようやくすべての成績が出揃い、無事卒業が確定しました。今まで授業の話は書いてきましたが、成績については書いてこなかったので、改めて眺めてみて面白いと思ったところや、高い成績が必要な人へ参考になりそうな話を書いてみます。(ちなみに、本ブログは当然ここのリンク先にあるHaasのルールを元に考察していますが、大学ごとに成績のつけ方は相当違うようですので、ご注意願います)

まず、そもそもMBAにおいて成績って何の役に立つのでしょうか。学部生の成績は、ある意味日本以上に学歴社会の米国では、結構その後の就職や転職・進学に大きく関わります。しかし、MBAの場合、成績が役に立つのかどうかは、完全に人次第のようです。たとえばMBAの成績を利用しそうな場面を思いつくままに並べると、下記のようになります。

○ 卒業要件:Haasの場合は、必要単位数の制限とともに、GPA(注1)が3.0以上無いと卒業できない。
○ 米国の一部の就職先で、GPAが脚切りに使われる、または、選考で重視される場合がある: (例) 金融関係、コンサルティングファーム、Google、一部のスタートアップなど。3.7が目安とされるっぽい。ちなみに、日本ではGoogleは米国と同じ基準ですが、金融・コンサルは米国ほど重視しない模様です。
○ ビジネススクールでPh.D(博士課程)への進学に重視される場合がある: (例) トップ5%の成績が必須、など
○ 社費派遣で問われる場合: (例)「最低3.5くらいのGPAは取って戻って来いよ」、と言われて送り出されるなど。年間、あるいは、昔からMBAを多く派遣している企業では、何かで人事考課に使われる可能性もあるのかもしれません。一方、社費でもこのような条件が全く無いケースもあるようです。
○ 超優秀な場合に、肩書きとして使いたければ使える: (例)ハーバードで上位5%に入ると、そういう人は日本人でまだ数人しか居ないので、肩書きとしてアピールできるでしょう。Haasでも成績優秀者は同様に表彰され公表されるが、使うか使わないかは自分次第でしょう。
○ ネタとして使いたければ使える: (例)ブッシュ元大統領(ハーバードビジネススクール卒)が、「成績がCでも大統領になれる」、と言っている、など

これらは私の場合は卒業要件以外意味が無いものでした。従って私にとっての成績の意味は、下記2つのみとなりました。
(1) 個別の1つ1つの評価: 卒業できそうな限りにおいては、「頑張って良くするもの」、ではなく、「自然体で学んだ結果、その日その時点で、将来使いそうな知識が身についたかどうかを確認する1つの指標」
(2) 全て出揃った時: 「全体を俯瞰して何が言えるか」の意味合いを抽出し、今後の人生に生かす(本日のブログ)

この(1)(2)を考察する前に、「成績は本当に(1)(2)を見る指標として役に立つの?」という疑問があります。そこで、先に成績のつけ方を確認してみます。まずは、成績の分布ですが、ここのHaasのルールによると、
○ 必修科目(卒業に最低必要な51単位中21単位分-Waiveした分)は、相対評価で、A = 15%, A- = 20%, B+ = 30%, B = 20%, B- or below = 15%、となっているらしく、平均が3.3程度になるように厳密に設計されているようです。
○ 選択科目(最低30単位分。Haasの場合は、上限なくいくらでも履修可能)は、明確なルールが無く、教授によりけり。多くの場合、特に答えが1つに定まらない定性的なレポートやチームワークをさせるような場合は、必修科目と同様の分布で平均が3.3になるようにバラけさせているようです。一方、特に資格試験に直結したり「○×」や定量的な点数がはっきりつきやすい授業の場合、絶対評価のみを基準にするケースもあるようです。

従って、必修の成績は絶対的には母集団(Haas)の質次第となりますが、少なくとも異なる科目間で何が良くて何が悪いのか、を見る基準としては使えそうです。逆に選択科目の成績では、他科目同士を比較するよりは、絶対的な評価点を見たほうが良さそうです。そして、どちらのケースでも、指標として下記の問題を含むことは、考慮しておく必要がありそうです。
○ 自他で求める品質精度の違い: 自分の将来にとっては99.9%の点が必要な知識でも、95%できてればAがついてしまうような場合は、たとえAでも今後注意が必要
○ フリーライダーの問題: MBAの授業では多くの場合チームワークとなるので、自分の仕事ができなくても、チームメンバーが良ければ、自分の実力が無くてもよい成績となってしまう可能性が結構ある。この問題はもちろん現実社会でも発生するが、社会人になっても再現性を持って良いチームを形成するスキルをつけられたのか、あるいはチームが悪くても自分に実力があるのか、を切り分けて考える必要があり。
○ 受講生の偏りの問題: たとえば10名以下しか受講しないケースでは、教授も受講生のレベルに講義内容を修正していく。従って、その全員がエキスパートの場合と、その全員が初学者の場合とでは、絶対評価となっていても相対的に良し悪しが出る可能性がある
○ 教授が恣意的すぎる場合: 情に脆い教授は、数十時間かけてものすごい分厚いレポートを出すことで、内容はともかく成績が良くなるケースがある。また、選択科目では、人によって鬼(B-以下の成績を乱発)や仏(Aを乱発)しているケースも、ごくまれにありそうです。

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これらを頭に入れて、改めて私の成績を全て俯瞰してみると、まず一見して、下記のような気づきがありました。

○ そもそも、「このくらいだろう」、と思っていた成績の事前予想(期末試験/レポート後)は、ほとんど外れている
当たったのは、10個に1個くらいで、良くも、悪くも、成績は全然期待通りにならないのです。その理由は、下記に続きます。

○ 自分にとって学びが深いものほど成績は悪く、何にも学んでいないものほど成績が高い
 このブログでも過去に「これは素晴らしい」、「面白い」と書いたような、学びの多い課目ほど、成績は酷いのです。Aだと思っていたものはB+となり、A-かB+位だろう、と思っていたものはBやB-になってしまっています。これは「倫理」の授業のような特殊事情(注2)もありますが、一般に新しい知識を教室内で吸収できたばかりの状態では、実務でやっていた人には全然立ち向かえない、ということを示している気がします。

 反対に、「つまらない」、「期待はずれ」、「聞くだけ時間の無駄」、と思っていた授業は、AやA-になっている傾向が強いです。これは、単純に元々知っていた、ということもありますが、「授業がつまらないとチーム課題で頑張って理解しようとして、実はチームワークの配点が高かったりして楽しんでいるうちに成績が良くなる」、ということも大きい気がしています。やはり元々自分が知っていたり実務で経験していないと、こんな芸当はできないことから、MBAの成績そのものには実務経験の方が反映されやすい気がします。あるいは、私の努力不足が、こういう結果を招いたのでしょう。

○ 選択科目のほうが、必修より成績が良くなりやすい
 多分この一番の理由は厳密に成績のランク付けを管理していないからだと思います。が、周りの学生も、選択科目より必修科目のほうが頑張っていたように見えます。これは、就職活動時期の影響が大きく、最初の1学期目のGPAでインターンで良い所に行けるかどうかは全て決まってしまい、いいインターンができたかどうかが卒業後の就職に大きく響くことを考えれば当然です。逆に、最終学期の成績は、就職活動中に表に出てこない(卒業後の最終GPAを就職に使うような時点では、GPAを重視する就職先はそれほど多くない)。

○ 努力の有無は±1個程度影響する
 今までの記事でも結構、「友人に学んだ」、「チームに学んだ」、と書いていましたが、自分が学んでいるだけでチームメンバーに大して貢献できないような場合では、結局成績は悪く、逆にチームをリードできたような場合には成績は良い。「フリーライダー戦略」は結構見破られてしまうようなのです。また、教授の合意の下で他の人がやらないような難しい企業をあえて選んで分析したケースなど、頑張ったものは報われている印象がある。要は、手抜きは結構見られているし、地道な努力は案外効果的、というイメージです。

○ 英語力の無さは確かに成績を+0.5~1個程度(例:A-⇒B+)押し下げる
 これは致し方ないのですが、やはり数字が入らない組織論やリーダーシップなど、全て文章によるレポートを書く場合など、教授も留学生ということを多少考慮してくれているとはいえ、苦しいケースが多く見えます。さらに、数字が入っていても、授業の発言や議論構成が重視される授業では、AやA-にはなりにくい印象があります。ただし、この影響はあってせいぜい±1段階程度。実際に内容を学べているかどうかの方が、成績に大きな影響を与えるようです。

このような傾向から、日本人の方でどれだけ居るのかどうかわかりませんが、成績を上げる必要がある方は、下記のような方法は有効なのかもしれません。

○ 就職活動のため、最初の学期のGPAが重要な場合: 相対評価の中で人に勝つ、とはどういうことかの基本に立ち返る。敵を知り、己を知った上で、最低人一倍努力をした上で、真っ先にチームに貢献してチームの力を自分のため(英語力不足を補うなど)に使えるようにする。
○ 社費の方等で最終的なGPAを気にする場合: それまでがどんなに酷かろうと、最終学期に自分が元から得意な分野で仏の先生を取り捲ることで、挽回できる可能性がある、

そしてもちろん、成績が必要ではない人は、むしろ上記の逆をして成績を気にしすぎない方が、チームワークの中にも自分の目標を立てて、より有意義なMBA生活を送ることができるように思います。

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最後に、全体を俯瞰しての私自身に対する意味合いです。結局、前職で実務で経験したような内容は、どんなに手を抜いてもAかA-になる傾向が強く、全く面白くないか、面白くても物足りない感じでした。一方、まだ仕事で未経験の分野、それも短期ではなく3年~10年後にやりたくなりそうな分野は、ことごとくB+以下の成績となっていましたが、そちらのほうが大変面白く、学ぶ価値があったと考えています。そして、そもそもこうなったのは、キャリアチェンジャーの最終学期考(前編):興味の無いものこそやるキャリアチェンジャーの最終学期考(後編): 学生のうちの経験で書いたように、自分の転職をイメージした時に、将来有用となるはずの授業ばかりを選択した結果です。このことから、下記が私自身に対するメッセージとなります。

○ 自分が次の就職先に選んだ道は、今後数年の面白さ、やりがいを考えて、正しかったのだと安心して前へ進むことができる。もし前職を続ける前提でMBAに来ていたら、取った授業が物足りない授業ばかり、かつ、良い成績ばかりとなってしまい、ここまで面白いという気分になれなかった気がする。後付ではあるが、MBAに来て転職をするという決断を2-3年前にできたことは、私が今後新たなモチベーションを持って働くために丁度良いタイミングだったと今、心底思えることは、とても幸せなことだと思う。

○ また、もともと必要だが興味の無かった知識や業界・業種への転職に対して、上記のようなことを思えるように自分が変化してきたことも含め、MBAは転職をする心構えのために、自分に十分すぎる時間と題材を与えてくれた。もしMBAに来ないですぐ転職していた場合、何を目標にできただろうか、と想像すると、3年後の将来は全然違うものになってしまうように思える。

○ 一方で、次の就職先に行くにあたっては、現時点の私のスキルは、恐ろしいくらい使い物にならない。絶対評価でA+++位が必要な所でB+以下が並んでいるこの状況は、仮に前職を続けていて同様の成績のMBA生が私の下に入ってきた状況を考えれば、本当にぞっとする。MBAは卒業後の方が全然大変とは、本当に色々な方に言われるが、一刻も早くキャッチアップできるように、スタートダッシュの準備を整えなければならない。ただし、そのキャッチアップは、実務経験に入ってからの方がMBA内でやるより効果的、というか実務経験でなければできない部分も多いので、そうスムーズにできるための準備が重要。

(注1) Graduate Point Average。米国で一般的に用いられる成績の平均点の計算方法で、A=4.0, A-=3.7, B+=3.3, B=3.0, B-=2.7, C+=2.3 などとして、単位数の加重平均を合計したもの

(注2) 一説によると、今後学生に倫理の問題を深刻に考えてもらうために、全員にヒドイ成績をつけた、といううわさもある。
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by golden_bear | 2010-06-14 23:08 | 学業

最終講義のメッセージ集

ビジネススクールの最終講義というと、「ハーバードからの贈り物」という本が出版されているように、これからビジネスの世界に巣立っていく学生に対して、何らかのメッセージを残す方が多いようです。Haasにおいても、この本の逸話のように、最後30分授業を停めて語り出すような教授もいらっしゃいます。しかし、毎回教授ご自身の人生に基づく人生訓が話される、という感じではなく、各教授の個性に合わせた多様な締めくくりを目にしている印象があります。

今回卒業するに当たり、最終学期の最後まで続いた4つの授業の終わり方は、それぞれ個性的で印象的でした。まだ個別に説明していない2つの授業については雑感も交えて、記してみます。

(1) H.Chesbrough教授 "Managing Innovation and Change"
やはりHarvard出身だけあって、最後30分は講義全体のまとめ、及び、学生へのメッセージ、という形の独演会。今年の学生への主要メッセージは、下記2点でした。

○ 貴方の将来のキャリアの選び方:
 こんな時代だからか、今年は様々な学生が私の所に就職先の相談に来た。まず伝えたいことは、「ここバークレーで身に着けたことを活かす」事を判断軸の第一歩に持ってくること。これは、どの業界のどの企業を志望したいか、という調査段階から、実際の面接プロセス、さらにキャリアの持続の全てに関わる。既にあなた方はここバークレーの場で、無限の選択肢の中から、あなた自身が何が人生の幸せかを考え、バークレーにどんな機会があったかを見て、2年間の過ごし方を選びとってここまできている。次の戦略はこの2年間の中から連続的に生まれるのである。

 残念なことに、多くの学生は、長期的にはY(例:ある特定分野での起業)をやりたいのに、短期的には直接関係ないX(例:コンサルティング業界)を選んでしまう。皆、様々な要因や考えを持って決断しているが、いつも抜けているのは、一旦Xに行ってしまうとそこでスタックしてしまい一生Yに行けなくなるという意味のリスクの視点、及び、今しかない、という切迫感。人生で成功している人をよく観察すると、Xに寄り道などせず、一直線にYを目指していることが多い。

○ オープンイノベーションの貴方への意味合い
 あなた自身が全ての賢いアイデアを持つ必要は無く、あなた自身のネットワークを形成すること。ネットワークの先端では、常に新しいアイデアに対してオープンであること。ネットワーク内部の透明性と信頼性を高めること。

 自分自身のビジネスモデル(どう価値を創造し自分に還元するか)を理解すること。そして、上司・顧客・パートナー・敵を含む、他人のビジネスモデルとのフィットを、常に確認すること。

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この後彼自身のキャリアを振り返り、最後に「ほとんどのイノベーションは生き残りませんが、イノベーションを起こさない企業も生き残りません。是非将来、貴方自身の人生の前進と、貴方自身のイノベーションを、私に聞かせていただける日を楽しみにしています」という締めくくりに、言うまでも無く大きな拍手がおきました。


(2) S. Udpa教授 "Managerial Accounting"
未紹介の授業なので、先に寸評を。管理会計の授業ですが、ルールや計算手法といったテクニカルな知識は、毎週出される宿題内で理解する前提。授業内では8割方、社内のコストや利益の配賦ルールが、各部門や個人にどのようなインセンティブとモチベーションを与えるか、という組織行動論のような議論をしていました。

印象としては、Udpa先生が授業中ずっと冗談ばっかり言っているのが面白い、という点は、皆共通しています。が、授業全体の評価は良い・悪い、と半々くらいではっきり分かれていると思います。

私にとっては、大変良い授業でした。下記の点で、少なくとも過去の自分の疑問が解決されており、それは将来の自分にも必ず良い影響があると思われるからです。
○ 宿題やチームワークで自分の手を動かしたことで、細かい会計知識は別として、大枠の理論とその背景を一通り身につけることができた
○ 大企業が異なる部門のインセンティブを揃える手法、及び、それが如何に大変かを知る。ITコンサルティングや会計コンサルティングといった職業が何をしているか、がよく見えた
○ 幾つかの細かいルールについては、知った瞬間に、昔の何人かのお客さんの顔が浮かんだ。全社一丸の施策だろうが何だろうが、現場が思うように動かない理由を、新たな視点で見れるようになった
○ 管理会計が財務会計やファイナンス理論とどう結びついているのか、という観点を踏まえて、ABCのような原価計算手法、EVAのような経営管理手法が、何故優れているのか。優れているにも関わらず、運用にあたって何故問題が発生するのか、チームで数字を動かしながら定量的にも定性的にも理解できた。

特に最後の点、EVAの定義については、前学期のCorporate Financeの授業で、「(理論上は)株主価値を最大化することは株主と経営者の両者に平等ににプラスになる」、という"株主"対"経営者"の視点で語られていたことが、今度は「(理論上は)各部門の従業員にEVAを適用し正しく運用すれば、その総和による従業員の目的意識のベクトルが株主価値の最大化と等しくなる」、という、"従業員&部門"対"株主&経営者"の視点でリンクしたことは、凄く美しいと思いました。そして、EVAの問題点の議論においても、また、講義全体を通しても、9割方はとことん理詰めで金銭インセンティブの視点から考え尽くしながら、残り1割に「人間お金だけで全ては決まらない」という視点をさりげなく付け加える、バランスの取り方も見事と思いました。

一方、悪い、という評価をする人の意見も納得です。恐らくその一番の理由は、「わかったし面白かったけど、仕事戻った時に何が身についたか不明」。仮にこの授業を完全に理解し、仕事に戻って自社の問題点を発見したとしても、自力で解決できない場合が多いと思われるためです。同様の印象を受ける組織行動論のように、これも数年後に講義内容を見返して、はじめて意味がある内容なのかもしれません。

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さて、2時間の最終講義ですが、前半がその前週に4-5人のチーム毎に行った部門間対立のネゴシエーション・ロールプレイの結果発表と学び、後半がBalanced Scorecardの説明でした。もともと前半後半各1時間の予定でしたが、喋り好きのUdpa先生と学生との間で議論がヒートアップし、前半に1時間45分費やしてしまいました。よって、Balanced Scorecardの説明を15分バージョンで無理やり詰め込み、最後の言葉どころではない、というバタバタの終わり方になりました。

こうなることを予知していたのか、教授の最後のメッセージは、この15分のBalanced Scorecard講義資料最後の例題そのものになりました。それは、「Haas School of Businessの目標を、それぞれどのくらい達成されているかを示す、指標(メトリクス)群と各々の評価体系を、設計してみてください」というもの。

例えばもし、大学の目標が、「女子学生を全体の4割にする」といった立て方であれば、達成基準も打ち手も明確です。しかし、Haasの目標は、次の4つ(カッコ内は説明文も踏まえた私の意訳)
* Question the Status Quo:(現状に甘んじるな)
* Confidence without Attitude:(態度/傲慢さを出さない自信を持て)
* Students Always:(常に学生の姿勢で謙虚に学び続けろ)
* Beyond Yourself:(長期の視点で行動を評価し、今の自分を超えた興味を我々の上に設定しろ)

彼からの最終メッセージは、「この4つの達成具合を評価する指標群など、当然、一朝一夕に設定できるものではありません。あなた方も、このHaasの4つの目標、及び、Haasで得た学びを踏まえて、自分自身の人生の目標に対して自分で指標を立て、評価し、実現できるように、是非今後の人生を頑張って生きてください。」個人的にはとても好きな終わり方です。


(3) M.Nondorf教授 "Corporate Financial Reporting"
これも未紹介なので、先に寸評を書きます。日本の「有価証券報告書」に相当する、米国の10-K、および、10-QやS-1などのSEC(証券取引委員会)提出資料に、何をどう報告するかの最新ルールの説明、及び、各企業の提出資料が実際にそのルールを満たしているかどうかを確認する授業でした。すなわち、会計監査のお仕事入門、を、経営者の視点で重要な順に優先順位付けして紹介していました。

個人的には、講義内容=合計1,000ページにも及ぶ判りやすい配布資料、には、大変満足しています。最初1ヶ月は収益認識に絞って損益報告書内で虚偽記載がどのように起こるかを徹底議論。次の2ヶ月半に、M&A、法人税、オフバランスシート会計、リース会計、企業年金/退職給付会計、会社更生法と破産法、外貨取引/外貨換算、デリバティブとヘッジ会計、ストックオプション他株式報酬、という、まさに今まで字面だけ見た事はあっても、裏で実際に何が起こっているのかわからなかった内容を、教わることができました。

しかし、授業自体は、他の授業と比べると、面白くないものでした。そもそもこのテーマを面白く語ること自体難しいと思いますが、教授の説明が、まるで裁判官が判決を説明するかのように、一言一言綺麗な発音で事実を判りやすく正確に伝えるスタイル。私のような初学者留学生にとっては、聞き取りやすく有難いのですが、7-8割は配布資料と同内容で、退屈で眠いことこの上ない。しかし、ボーっとしていると2-3割の重要な議論についていけない。そして、CPAを持っている学生が質問し、教授が1対1で答え始めると、もはやちんぷんかんぷん。

さらに、授業以外の課題も、上で述べた管理会計の授業のような毎週の宿題も無く、4ヶ月間で計3回しかないチーム課題は、分担すると1人あたりの作業量は多くない。こうして良くも悪くも負荷が軽いため、結局最後に身についたのは、膨大な書類の目次:問題点の一覧と解法の所在程度。実務で使えるレベルのスキルは、やはり手を動かさないと身につかないようです、、、

と思っていたら、このようにサボっていたツケが一気に最終課題で来ました。課題内容は、「自分自身で1社企業を選び、その財務報告書(上場企業なら10-K,非上場企業は要相談)の内容を分析せよ。授業で習った知識を総動員し、どこに虚偽記載の可能性があるか、一般的でない事項はどう処理されており、それは良いのかどうか、本文7ページ+添付資料にまとめること」。サンプル答案を4種類見ると、7ページとはいっても、まるで昔の新聞か、というくらい細かい字で、ぎっしり5,000語以上詰まっています。

私のテーマは、昨年IPOをして今年に入って初の10-Kが出たばかりの、元ベンチャー企業。ベンチャーながら既に世界中に拠点を持ち、M&Aやリース等何でもありで成長し、この大不況の中無理やりIPOにこぎつけた感がある。実際、10-Kだけで260ページあり、なにやら怪しそうな数字とその言い訳(?)が一杯並んでいます。教授も、「この企業はとっても面白そうだから、頑張ってね!」と、やたら発破をかけてきて、もう逃げられません。

やってみてすぐ気付いたのは、そりゃ、株式公開直後のベンチャーとはいえ、キチンと監査役や主幹事証券の審査を経て上場していますので、怪しいところを見抜け、って言っても、とってもつらい。そもそも2年生秋学期後半&春学期前半 授業振り返りに書いたとおり、Financial Information Analysisの授業で「復習してみても、会計スキルのところは良く判らなかった」から、キャリアチェンジャーの最終学期考(前編):興味の無いものこそやるの回で、「スキルもやる気も無いが必要」と考えて取ったものの、授業つまんないなあ、と思っていた私には、大変荷が重い課題でした。

しかも、締め切りが卒業式の5日後に設定されていて、卒業式後は延々とこのレポートに取り組むことに。実は書かないで不可を取っても卒業できるはずなので、途中辞めたくなる衝動に何度も駆られる。しかし、授業やサンプル答案で見たような分析を自分なりにアレンジし、売上、変動費、研究開発費、在庫、設備投資、リース、ストックオプションなど、幾つかの点の怪しさとその根拠、及び次に何を注意すべきかについて、どうにか書き切った時の感動は、一入でした。

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こんな実務よりの授業なので、最終講義に人生訓を垂れるようなことは一切ない、、、と思っていたら、突然、下記の強いメッセージを頂いたことには、とても考えさせられました。

「今まで見てきたように、どんな会計報告にも多数の問題点が潜んでいますが、その多くの原因は、CEO及び従業員に対するボーナスです。そして、取締役会は、ある特定の経営幹部や従業員の行動、会社組織の変更、法律の解釈などから発生する、これら会計報告の問題に常にさらされて逃れられません。あなた方が将来どんな事業をするにしても、お金の力で本来あるべき姿を捻じ曲げてしまわないように、心から願います。」


(4) A.Mian教授 "International Finance"
個人的に最も衝撃を受けたオオトリは、やはりこの授業。前々から「最終講義は金融危機について語る」と予告していましたが、最終講義の5日前に突然、合計80ページにもなる論文4件(うち2件は彼自身の論文)が配布され、「授業前にこれを読んどいて」という指示。あまり時間も無く、これらを流し読みをして授業に臨むと、さらに当日講義用の分厚い配布資料(パワーポイント本編45ページ)が追加で配られる。

冒頭でこれまで14回の授業で何が肝かを振り返り、次に「概念的な学び」として、下記3点を主張。
1. 全ての問題解決に経済学的な考え方を働かせろ
2. 全てのツールには、適用範囲に限界があることを理解しろ
3. 貴方の思考をマクロの文脈に当てはめろ
1.と2.には、過去の授業の様々なエピソードを当てはめてまとめましたが、3.については本日補足する、という形で、以後金融危機のマクロトレンドの話が延々と続きました。

最初に、歴史の振り返り。1994年から2002年までの8年間に、メキシコ&アルゼンチン('94-95)、アジア金融危機('97-98)、ロシア発南米危機('98-'01)、そしてトルコやウルグアイも含む、様々な金融危機が各国を襲っている。「これらは個別単独の危機なのか、相互に関連しているのか」、という問いを元に、各々の危機の状況を紐解いていく。

次にこれら個別の状況を元に、「投機的資本(≒バブル)は、何故発生し(防げない)、崩壊するとどのように危機が発生し、その危機がどう世界中を駆け巡り、それは何故か(防げない)」、という話の議論を展開させていきました。端的にその結論を書くと、「法体系に不備のある発展途上国に投機資金が流入し、それにかまけて対外債務が自国の収支を大きく上回ると、バブルの資金が一斉に引き上げられ、資産価値の崩壊が始まる。その補填/損切りや安全資金確保のプロセスで、金融危機は飛び火する」、というまとめです。そして、これらの危機を踏まえ、発展途上国が法律/システムを整備し、2002年以降大きな危機が防がれてきた、という解釈がなされました。

ここまでは状況整理の議論が淡々と続きましたが、ここからがあっ!と驚く展開に。突然、「今度は米国が発展途上国になってしまった」、というスライドが登場。実は米国のサブプライム問題(住宅バブル)は、1994年のメキシコ、1997年のタイと状況がそっくり。そして、米国の歴史上はじめて住宅ローンの成長率と世帯収入の成長率の相関が負になり、バブルが崩壊し、リーマンショックが発生したのは周知の通りです。

話はここで終わりません。2008-9年の不況は、カリフォルニアやニューヨークのように消費性向が高く富裕層が借金しまくっている州で悲惨な結果となったが、実はテキサスのような内陸の消費性向・借金共に低い州では、あまり不況になっていない、というデータが十ページも出てきます。つまりサブプライムとリーマンショックは、米国のごく一部の問題に蓋をしただけ。実は、本質的な問題解決にはまだ到底至っていない。

そして、現在の欧州危機に話が移ります。これは、上記米国のような国内一部の問題ではなく、国全体/欧州全体の問題。すなわち、欧州も10年前の発展途上国と同じであり、この問題は必ず飛び火する。そして、「その飛び火先こそ、異常なほど対外債務を積み上げすぎている米国になるはずだ」。すなわち、「リーマンショックの比ではない本当の金融危機は、これからである、と覚悟しておいた方が良い」が、最終講義の学生へのメッセージなのでした。

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もちろん、この教授も100%断言しておらず「覚悟した方が良い」というメッセージなのですが、パキスタン人が断定調で言うものですから、当然、学生からは悲鳴にも等しい激しい議論が飛び交いました。私自身も「じゃあ、それを救えるのは中国なのか」という論調で議論に参加するや、今度は中国自体の問題にも議論が飛び火し、もはや収拾不可能な状況に。時間切れで、コース評価も曖昧なまま、とりあえず全体写真を。
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写真を見ると、米国人が2人しか居ない少人数授業だからこそ、このアンチ米国の面白い議論が成り立ったのだろう、と、改めて実感します。

そして、丁度この授業の翌日(米国時間5月6日)、ギリシャ危機の影響と誤発注(?)問題が絡んで、突然ダウ平均株価が一時$1,000下がり、為替も1ドル94円から88円に急落したときには、寒気が体をよぎりました。その翌週に、EUROに対するIMFの緊急融資が発動、と、ますます目が離せません。いずれにしましても、これが最も印象に残った最終授業であることは、間違いありません。
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by golden_bear | 2010-05-12 22:27 | 学業

International Finance 授業からの学び

この授業は人気がなく、7人しか受講しなかったのですが、私にとっては、全然知らなかった世界があることを新たに知ったという意味では、2年間に教室で受けた授業で一番驚きと学びの多かった授業です。文章で伝えるのは難しいですが、紹介してみます。

まず講義内容ですが、「国際金融は国際でない場合と計算式上で何が異なるか、リスクはどのように分類され、それぞれ収益予測と割引率にどのように効いてくるか、それらリスクはどうヘッジできるか、そのヘッジを含めて投資を実現し実際にリターンを得るために、マネージャーとしてどう動くべきか」。加えて、タックスヘブンなど国際金融を学ぶ上で避けて通れないテーマを包括的に含んでいます。

教授はパキスタン人で、昨年までシカゴ大で教えていましたが、今年から「金融と社会の接点部分をより深めて研究したい」という理由で、バークレーに移ってきた方。授業は全14回で、下記の流れに沿っています。
- 第1-3回: 講義形式(第3回のみケースも有)。Corporate Financeの考え方が、Internationalになった場合に、何がどう変わるかという理論
- 第4-5回: ケース集(1) 第1~3回の理論を用いたケース
- 第6回:中間試験。MBAにしては珍しくノート等の持込が一切禁止。
- 第7回:講義形式: リスクとリスクヘッジの方法
- 第8-10回: ケース集(2) 国際プロジェクトファイナンスと通貨ヘッジのケース
- 第11-13回: ケース集(3) 最先端の金融理論の適用例
- 第14回: ケース集(4) タックスヘブン
- 第15回: 最終講義: 金融危機の分析と今後
- 最終講義後の週末に、持ち帰りの最終試験。1週間期限で、1つの膨大なケースが課題。

負荷はかなり重い。中間と期末に試験があることに加え、毎週のケースでは、10ページ程度の読み物+エクセル10シート分程度のデータを元に、2-3人のチームで5-10問程度の課題をレポートにまとめて提出。この課題、最初2-3題だけでも、昨年秋学期までのファイナンス系授業の知識を総動員し、M&Aのバリュエーションを普通に1つやり切る程度の負荷。ここまでで大抵5時間くらいかかるのですが、これに加えて、普通にやったら必ず落とし穴に嵌るケースばかり選ばれていることが特色。課題の後半部分は、普通に解けない問題をどう対処するか、という内容になってくるのです。途中、モンテカルロシミュレーションを回さないと解けない課題が3回連続で出され、「こんなの(自分達の前提もあってるか不明なのに、シミュレーション回す)意味有るの?」と、投げ出したくなったりもしました。

特に私のようなMBAで初めてファイナンスを勉強した人にとっては、このような応用に特化した授業を取ることで、まず自分自身で基礎知識の抜け漏れを確認できることが嬉しいです。その上、「世の中には見たこともない問題を見たこともない方法で解決している人々がいる」ことに、大きな好奇心が持てます。もちろん、2時間の授業で語れることには限りがあり、表面的な学びにとどまるのですが、それでも「基礎知識でここまで解ける。そこから先に出たこの課題はこう考える」という点に絞っているので、テクニカルな部分で何が肝なのか、は最低限明確に自分に焼き付けられます。

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具体的に学んだ内容の例として、最終課題と1つの授業の内容を、備忘録的に書き残しておきます。

○ 最終課題:
教授から「ちゃんとやると丸1日半くらいかかるよ」と言って渡された、クロスボーダーLBOのケース。とある英国の大企業が赤字に苦しみ、自社の一部門を切り離して米国のPE(プライベート・エクイティ)ファンドに売却する話。この切り離される一部門は、英国の成長が頭打ちになった十数年前に米国にも進出しており、現在の収益の大半は英国本国からだが、将来性は米国の方が全然大きいという状況。まだ欧州ではPEファンドがあまり知られていない時代背景もあり、米国PEファンドが複数、この買収に名乗りをあげる中、「米国に売るべきではない」といった英国既存株主の声も聞かれる。この状況で、1つのPEファームとしてどう動くか、というケース。

以前、教授とのランチの時に、「何に興味ある」、と聞かれて、「クロスボーダーM&A知りたいです」と言ってたのですが、まさに最終課題が私を狙い撃ちしてドンピシャで来た、というイメージ。そう思ってこのケースを見ると、「英国」を「日本」に、「米国」を「米国&中国」に置き換えれば、日本でも同様のことが起こりそうに見えてきます。これは私に対する挑戦状。頑張らねば、という状況でした。

課題は全6題。最初2題:
 (1) 両国各々の事業の価値をどう見積もるか。売却側の言い分をどう信じ、PEファーム固有のスキルをどう反映できるか。
 (2) LBOを行う買収資金をどう借り入れるか。この借り入れは、ディール及び企業価値評価にどう影響するか
これらは、昨年秋学期までの授業の知識程度があれば、何とか解ききれる内容。

次の設問、
 (3) 上記(1)、(2)の中で、英ポンドと米ドルの通貨は、どのように変換され、どうリスクがあるか、
も、授業の講義で出てきた知識をそのまま使えば良く、ここまでは順調に来れます。

しかし、ここからの2題が難儀。
 (4) 事業価値は幾らで、ビッドの際に幾らを提示するか
 (5) 貴方がこのPEファームだったら、買うか。どんな条件が必要か
このケース、普通に事業価値評価で使うWACCを用いたDCF法や、WACCが毎年変化する場合に用いるAPV法が、役に立たない。なぜなら、資金調達の際の負債が巨額かつ毎年変動するため、その利子が企業の収益及び倒産可能性に大きく影響してしまうため。従って、授業で習ったキャピタル・キャッシュフロー法というものを、当てはめてみます。授業では教授が自分のテンプレートであっさり20-30分で説明していたのですが、これを自力で作成して当てはめようとすると、大変。エクセルで循環参照がおきたり(本来おきないようにできるのだが、モデル作ってる際は混乱してわからず)、「本文に書いてないから仮定を置く」とやっていたパラメータが実は重要で、よくよく読み直すと細かいところに書いてあった前提から導けたり。。。

この辺、毎週の宿題の時には3人のチームメンバーがいたので、誰かが間違いや抜け盛れ、新たなアイデアに気付くのですが、いざ1人でやり切るとなるととても大変。久しぶりにプログラマーになった気分で、10時間くらい延々とPCに向かってデバッグを繰り返していた気がします。改めて、チームワークの威力を思い知ると共に、具体的にどういう数字の動きをするのか、が体で染み込んで行き、大変勉強になりました。

そして、最後の質問は、最終講義の内容の理解を試す設問でした。
 (6) もしこの話が当時の英国ではなく、2010年5月のスペインで起きた場合、上記(1)-(5)のあなたの回答はどこがどう変わるか
 
 グローバルには連日ギリシャ/EUROの問題が叫ばれて為替も株価も乱高下をしている中、ローカルにはこの5月に失業率が20%を超えたスペインにこのケースを当てはめるということは、結局何が本質的な問題で何が問題でないか、を問うていることになります。これのヒントを与えてくれた最終講義の概要は、改めて次回に紹介します。

○ ソーシャル・バリュー(Social Value)のケース
上の最終課題も含め、第10回までの授業は、比較的確立された理論、及び、その理論を元にした際に答えの正誤が判断しやすい課題を扱っています。しかし、第11回~13回の授業では、専門家がまさに今議論している未完成の理論を、現実に適用した事例を紹介します。

具体的には、3回とも、発展途上国向けの事例になりました。1つは、今話題のマイクロファイナンスを実施する観点からの話。2つ目は、同じくマイクロファイナンスだが、発展途上国のローカル企業をPEが買収して行う視点。そして、3つ目は、グローバル企業が発展途上国に新規プロジェクトを立ち上げる場合の事例。特に印象に残ったのは、最後のケース。Social Valueという概念を用いて、プロジェクトの阻害要因の洗い出しとその解決を定量的に行ったものです。

Social Valueといわれると、日本語では社会起業家や非営利団体といった言葉が先にたち、その良い面はともかく「利益にならない活動を補助金で補填している」ような胡散臭いイメージが付きまとうかもしれません。また、私個人的にはNon-profitに興味を持っていた昨年4月頃、1つ記事にあげたNethopeのケース以外に、"Global Social Venture Competition"を見に行き、各種パネルディスカッションの中で、やたら"Social Valueをどのように定量評価するかが難しい:発展途上国内の失業者がどれだけ減った、とか、、、"という話を耳にしていた程度の認識でした。

しかし、この授業の学びからは、Social Valueは次のように考えることができるそうなのです。
- あるものやプロジェクトの現在価値は、既存ファイナンスの理論では、CAPMで割引率を算出して将来価値を割り戻したり、Black-Scholes Modelでリアルオプションの価値を算出したりすれば、計算可能。ただしこれらの理論には、市場が効率的であり「神の見えざる手」が成り立たせている、という前提がある。
- しかし、現実世界、市場が効率的に「神の見えざる手」を使うためには、その見えざる手を「助ける手」が必要。具体的には、独占されていない市場が存在し、そこで資産を持つ権利とその価格が担保されなければならない。もしそうなっていなければ、目的のプロジェクトのためだけにでも擬似的にでもそういう世界を作り出さねばならず、それを創るのが「助ける手」である。
- Social Valueは、上記「助ける手」にかかる費用を含めたプロジェクト全体の価値を指す。ここで、「助ける手」にかかる費用は、プラスにもマイナスにもなりうる。
- 具体的にSocial Valueを計算するには、次のステップを踏む。
(1) やろうとしているプロジェクトの現在価値を普通に計算する。これは、プロジェクトに資金を投入する銀行や投資家から見た、Private Valueを指す。
(2) 資金提供者以外に、プロジェクトに関わる全ての直接/間接的な利害関係者を洗い出す。例えば、顧客、従業員、市民、サプライヤー、競合、政府、など。
(3) その各々の利害関係者に、「もし我々のプロジェクトが無かったとしたら、貴方にとってプラスですか、マイナスですか」、と問う。その答えを現在価値に置きなおす。
(4) (3)の合計+(1)のPrivate Valueが、Social Value。

長々と書きましたが、上記の計算そのものは、「次の週末にゴルフに行く費用はトータルで3万円だが、ゴルフに行くことを説得するために、妻や子供をディナーに連れて行かなければならない。この場合、ゴルフの費用にはディナーの費用も含まれる」、という例と変わりません。この場合、かかる合計費用は3万円+「ディナーの価値」としてすぐ計算できます。しかし、家族が本当に満足する「ディナーの価値」が実際幾らなのかを、正確に見積もるのは、難しい。

同様に、Social Valueの計算においても、各利害関係者の損得をどう定量的に金額換算するか、という部分が鍵です。授業でこの説明を聞いた瞬間、「金融の世界って、やはり、何でもかんでも全てお金の価値に置き換える商売なんだなあ」、と改めて思いました。

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授業では、上記のSocial Valueの考え方の講義を聞き、次に実際の企業のケースへ適用する流れでした。このケースは、10年ほど前に、あるグローバル食品メーカーが、ある東南アジアの国に進出し、その国でほとんど作られていないある穀物を栽培してもらい、加工工場を作って売りたい、と考えていました。その国は、気象条件的にはその穀物には適しており、「よほど最終製品の値段が暴落しない限り採算は取れる」と試算できます。しかし、ここに資金を貸してくれる銀行や投資家がほとんどいないのです。それは、どういうわけかその国ではこの穀物を今まで作っていない、過去同様の外資がらみプロジェクトはことごとく失敗、政情不安もある、という事情によります。すなわち、一旦巨額のプロジェクトに突っ込んだら、そもそも立ち上がるのかも、幾ら追加損失が出るのかも判らない。こんな状況で、プロジェクトには実際幾ら必要で、やるならどんな動きをしなければならないか、というケースでした。

以後、Social Valueの計算ステップに従います。まず、利害関係者の洗い出しでは、農民、運搬業者、政府、消費者、市民、従業員の6者が出てきます。次に、それぞれ「このプロジェクトが無かった場合に、価値は上がるか下がるか」を計算します。例えば、運搬業者にとっては、この穀物を運ぶ商売が黒字か赤字か。政府にとっては、法人税、輸入に頼ってた部分の関税、農地や道路の建設費用。消費者にとっては、穀物及び最終製品の需要に対する価格、環境への影響、インフラが整う影響、などなど、個別に一つ一つ金額に直していきます。

中でも一番面白かったのが、農民に対する計算。この場合、「他の作物から切り替えるコストや初期投資を含めて、切り替えた場合利益が上がるかどうか」を、様々な作物と比較します。ここで、私自身ザンビアのプロジェクトで、色々な農家の人に「綿花を作りたいかどうか」をインタビューして回った記憶が鮮明に蘇りました。農民の方々は、自分達が食べる分+外部に売る分の採算とリスクをとても良く考えていて、自分の土地にあった作物のポートフォリオを組んでいました。その時に使っていたのとそっくりな作物別の価格表が、ケースに展示されていて、とても懐かしい。

ザンビアではこの表を元に、単純に利益の絶対額のみで農民の方々とお話しました。しかし、このファイナンスの授業では、作物の切り替えを投資と考えて、現在価値を算出します。この時一番議論になったのは、割引率をどう考えるか。前の授業で教わった通り、国際金融市場にアクセスできる場合、その割引率を使えば良いと考え、プロジェクト自体の割引率は年率13%に設定されています。これで計算すると、農民は新しい穀物に切り替えた方が圧倒的に儲かるはずです。しかし、実際には農民はそうは動かない。これは、作物を切り替えるリスクが大きいことが理由ですが、そのリスクは「割引率に反映される」べきで、しかも、50%程度として計算するそうなのです。確かに、ザンビアの現地銀行からお金を借りた場合の利子は、一番安くて38%でしたので、途上国の農民が自力で借金をして投資をする場合、確実にその利率を上回るリターンを出せそうでないと動かない、と考えるのは、一理あります。こうして、割引率50%で計算しなおすと、わずかに今の作物を続けた方が儲かる、という計算結果になるのです。

このように要因を一つ一つ定量的に評価していくと、それではどうすれば農民達はこのリスクをリスクと思わないで作物を作ってくれるか、という具体的な施策を議論できます。そして授業では、この農民に対する打ち手だけで参考文献が別に2冊用意されており、その結果から各打ち手の予測効果まで定量的に金額で評価しました。これと同様の試算を全利害関係者に行い、各々何がどれだけプラス/マイナスか、全体横並びで比較。こうすると、どういう順番でどの利害関係者にどの施策を打つべきか、全体感を持った議論ができます。つまり、全体と個別の両方に対して、具体的な施策と優先順位付けが可能になる、ということが、Social Valueの大きなメリットなのです。

現実世界では、この企業は各利害関係者を説得し、必要な資金調達を行ってプロジェクトを立ち上げたそうです。途中、農民は大挙して作物を作ってくれるようになったが別の工場に売ってしまったり、資金が枯渇し追加援助を要請したり、など問題は山積みだったものの、個別に対処することで、大きな軸はぶれずに継続。今ではその国の主要作物&農業製品となり、国全体の発展にも貢献しているそうです。

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ポイントだけ書くつもりがとんでもない長さになってしまいました。上記は知っている人にとっては当たり前の内容と思いますが、私にとっては、本当に毎回の授業1回1回に対してこの程度の学びが書けるほど、新しい刺激に満ちていました。今まで全然知らなかった世界に飛び込み、壁にぶつかって非効率に苦労することで、それだけ学びが多く、別の視点で世の中が見れるようになり、新たな興味が沸いてくる。このきっかけを与えてくれた教授には、本当に感謝の気持ちで一杯です。
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by golden_bear | 2010-05-11 22:43 | 学業

Chesbrough教授の講義(2)自分の人生への反映(最終課題を例に)

前回(1)課題設定の妙で挙げた、Chesbrough教授の授業について、続きになります。

先に、この授業の駄目な点で、よく言われていることを幾つか並べてみます。
○ 2時間の中でケースを2-3やるので、1つ1つのケースが浅い議論になる。複数のケースを急いで扱った結果、最後に結局なんだったのか、よく判らないこともある
○ 課題の配点が「授業で扱った考え方を適用できるかどうか」に偏り、最良と思える回答を出し辛い。違う考え方もソースを明示すれば利用可能だが、枚数制限もあり使いづらい
○ 半分の学生がエンジニア、かつ専門分野がコンピューター、バイオ・医療、環境・エネルギー、宇宙工学まで、非常に多岐にわたる。したがって、ある時はMBA生にとって超基本的な話をしなければならないし、またある時は専門技術に偏る。結果、エンジニアとMBAの双方にとって、浅い所で議論が終わる
○ 卒業後メーカーで製品開発やマーケティングで働く人にとって、話が概念的、長期的、特殊ケースに寄りすぎ。自分自身の仕事に直接適用しにくい

確かに、毎回1本に絞ってじっくり議論しきるRassi教授の必修のマーケティング授業などは、似たような授業ながら上記の問題は出ないため、一理あります。しかし、これらの問題点は、「一杯学べる」、「コンセプトを正しく使えるようになる」、「エンジニアから学べる」、「長期的な視点の学びが多い」のメリットの裏返しでもあります。結局、MBAの授業はあくまで叩き台。そこから現実社会に戻った時に、企業および自分自身が何を考えてどう動くかの方が重要、という当たり前のことを、上記の駄目な点が示唆しているように思います。

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この授業では、「ではどう動くか」、という点を、教授自身実践されていて、そこからの学びが多くなっています。前回に引き続き良かった点を、下記並べてみます。

(4) 頭がいい

これは、Chesbrough教授に対して全員が持つ枕詞。もちろん教授という位なので全員頭がいいのですが、「頭がいい」とわざわざ表現される教授はあまり見かけません。そもそも、教授の頭がいいことと、自分の学びの多さには、直接はあまり関係ないですし、たいてい「頭がいい、けれども、、、」という批判の前置きに使われるのは、Chesbrough教授のケースも同じです。

それでも、不思議なほど「頭が良い」と形容される。その秘密は、実際に授業を聞くと即座に理解できます。これを文章で説明するのは難しいのですが、

- フレーミングの巧みさ: 1授業にケース2、3個、と、通常の倍のスピードで、エンジニアとMBAの意見を両方扱う。にも拘らず、他のMBA教授に見られる「くだらない意見はシャットアウトする」という態度ではなく、全ての意見から良い点を抽出して、必ず全体の議論に反映させる。このやり方で授業が時間内に終わる秘密の第一は、やはり質問の巧みさ。前回(1)(2)(3)で書いた「課題設定の巧みさ」が、リアルタイムで発せられる1つ1つの質問全てにまで適用されているからこそ、なせる業。

- 纏めの上手さ: 質問/課題設定に加えて、要点の抽出が上手い。誰かの意見は必ず教授の手でホワイトボードに"3-4語"で書かれる。どんなにだらだら30秒くらい話し続けても、その要点を3-4語以内で纏めてしまう能力は、今までの人生で見た中で一番上手いと思う。

- 議論の展開の広さ: 良い意見には、必ず彼自身による補足事例の説明や追加質問の形で、議論が深められます。これは当然他の教授もやりますが、このときの話の展開のさせ方、類似例&反証例の持ってき方が、尋常でなく凄い所から出てくる。ある時は4-5週前に習った授業内の考え方が一瞬で全く違う形で再現され、またある時は最新ニュースを紐解く切り口にさり気無く突き刺さる。パターンマッチングの事例と処理能力が物凄く豊富で速いのでしょう。

- 説明の明快さ: やや早口だが、全員に聞き取りやすい英語で、判りやすく話す

個人的には、これだけ頭が良ければ、授業の準備に手を抜いても一定のクオリティの授業は展開できるにも関わらず、毎回一生懸命準備して全力で臨む姿勢、が一番凄いと思っています。私自身これらの技術は、是非真似をして、習得に努めたいと思います。


(5) 自分からパーソナルな人間臭い側面をさらけ出す

この教授、授業中に結構個人的な一面をさらけ出します。議論の節々に、「CFOとはこういうものだ」、「スタートアップのCEOはこの場面ではこう考える」、といった形で、実体験や豊富な調査事例をもとに個人的な見解を話すことは、他の教授同様です。しかし、自分が思いっきり失敗したり、苦労した話を堂々と話すところが、他と違うところです。これらの失敗談は、単に知識を伝えるだけなら全く不要ですが、実際に人の考え方や行動を変えるきっかけを与える意味で、とても効果的と思います。

それが一番現れていたのが、ある1回のケース。Chesbrough教授自身が人生で一番ショックを受けた出来事について紹介し、その問題解決のために、自ら「オープン・イノベーション」を実行して取り組んでいる(現在も進行形)内容を、授業で取り扱ったのです。

教授本人のケースということで学生側も多少遠慮があったものの、さすがに「新しいことをあまり見たこともない方法で立ち上げる」、という内容だったため、批判も含め相当多様な意見が出てきました。その1つ1つに対して、授業で扱った学びを元に、「答えはないが、こんな状況のため、こう考えて、こちらのやり方を取っている」と真摯に答える。自分自身がプロジェクトのリーダーとして、ご自身の学説を実際に適用されている姿に、次第に感銘を受けていき、最後に「昨年ある一定の成果が出た」という所では、大きな拍手が起こりました。

この他にも、この教授のファンの方が非公式にTwitterでOpen Innovation関連のトピックを立ち上げて(注1)、そのフォロワーが1万人を超えたため、その方を授業に招待して最初の10分間お祝いのパーティーをしてみる。他のゲストスピーカーも、「最近この議論で話していてとても感銘を受けたから、来ていただいた」という自分の個人的なネットワークから「熱いうち」に呼んで来るあたりも、個人を重視する教授らしさがあらわれています。


(6) 学生の意見を巧みに表に出す

最初の課題が、「レジュメ(履歴書)と写真を教授に送付しろ」というものでした。それを良く覚えているのか、各回の授業で誰にどういう発言をさせる、というシナリオを相当練りこんでいるようです。特に工学部とMBAの共同授業の意味で、その個人の経験を引き出して語る、というのは、相当効果的です。

1つ印象的だったのは、「この考え方を既に取り入れている大企業で働いたことがある人は、ちょっと説明してください」、という質問。あるイノベーションの考え方が対象で、日本だと多くの企業で片手間に検討している部門があるとは想像が付きますが、本気で検討され会社の中核プロセスに直接反映されている企業はあまりないのではないかな、と思っていました。しかし、この授業の場では、「CEO直属部門を作って、毎年数百億円の投資をしている」といったレベルで、もはや中核中の中核プロセスになっている事例が何社も出てくる。しかも、その多くが、過去20年まさに日本企業が戦いに敗れてきた相手達なのです。

もちろん、そのイノベーションの施策が、企業の成長にどれだけ直接繋がったかは、表面的には判りません。しかし、このように、MBAの最新理論を本腰を入れて自社に導入し、過去20年成長し続けている米国企業が複数あることは、「MBAの学びは日本企業のシステムの中では生きない」と良く言われる現状に、「ではどうするのか」という疑問を投げかけている気がします。


(7) Haasやバークレーという場所や、2010年という時代の価値観を、学びのプロセスに照らし合わせる

「オープンイノベーション」は学術用語として正しく定義されており(注2)、この定義は恐らく未来永劫普遍なものと思われます。しかし、これを正しく読み取って、現実に世の中に応用できなければ意味が無い。この定義と応用の関係は、ニュートンやマクスウェル、アインシュタインといった理学部の人が発見した物理法則を、エジソンやライト兄弟などの工学系の人が実現するプロセスであるかのようです。授業ではこのことを何度も、MBAとEngineeringの学生に説いていました。

そして、これは直接語っていないため、私個人の感想ですが、講義全体を通して、「今貴方は地球上の時間軸・場所軸の中でどこに居るのか」が、イノベーションの概念を読み取り解を導き出すために、如何に重要か、ということを伝える瞬間が幾度もあったように思います。それは、何故この教授がHarvardではなくBerkeleyにいるのか、米国の歴史とBerkeleyの歴史、Haasの学長が"Strategic Plan"を打ち出している重要な意味とこの授業での生かし方、等などの熱い小話から、一端が伺えました。


(8) 「あなた個人の人生をこう生きて欲しい」という強いメッセージがある

単なるイノベーションのメカニズムだけでなく、「これは貴方の人生のための授業だ」、というメッセージもとても多い。この直接的な目的は、必要知識の殆どは既に本で出しており、授業の中の学びを通して実際にイノベーションを起こせる人にならなければ意味がない、という意図があるように思います。このことは、ずっとイノベーションのコンセプトを説明したと思えば、その最後に「貴方はどちらの生き方を取りますか?」というスライドを挿入していたり、最終授業のメッセージ(別掲予定)にも色濃く現れていました。

イノベーションというMOTの題材において、最後は個人の資質を変えるところが一番重要という結論は、考えてみれば当然です。そして、より大きなメッセージとして、Open Innovationのコンセプトの中には、イノベーションを実現するリーダーになる方法論と共に、「社会の中で家族と幸せに生きる方法のヒントも入っている」、という話を受け取りました。この言葉を受けて、今後もたびたびオープンイノベーションの考え方を振り返ろう、と思っています。

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前回の記事の(1)-(3)で設定された課題を、(4)の頭の良さを生かして、(5)-(8)の人間臭い方法で解決する。この一連のプロセスが一番発揮されたのが、最終課題でした。その課題をくだいて書くと、下記のようになります

「内部情報にアクセス可能な程度に自分が良く知っている、1つの企業か組織を対象に、授業で習った考え方を当てはめて、下記をチームで纏めること
○ 現在どのようなイノベーションを起こす仕組みがあるか
○ その仕組みがどうビジネスモデルに反映されているか
○ 今後イノベーションの加速のために、どうすべきか
チームは2名-4名で組み、必ずMBAとエンジニアが各1名以上入る事」

多くのチームは、元いた/現在いる企業や、今後就職先となる企業を対象にしていたようです。特に、エンジニアに就業経験がある場合、その企業についてMBAの人がインタビュー等を加えて分析する、というやり方が多いようです。たとえば、あるチームはNASAを対象にして、あまりの組織の複雑さに大変な課題になったそうです。

私のチームは、エンジニア2人(中国人、米国人)と私の3人の構成。対象企業は、チームメンバーの中国人エンジニアが、現在研究室内でエンジェル顧客2社と共に立ち上げ中のスタートアップ。すなわち、Chesbrough教授の授業内容を、この秋にPh.Dを取得後はそのままCEOになる彼の人生そのものに当てはめてみる、という、とても責任感の重いレポートでした。このチームの分析や提案が彼の人生のリスクのとり方を大きく変えてしまうため、当然、彼自身とても本気で取り組んでいましたし、それに答える形で、私も3人の子供がいるアメリカ人エンジニアも、毎日深夜まで喧々諤々の議論を繰り広げました。

完成したレポートの内容を、技術の中身に触れないように書くと、

○ イノベーションの仕組み:
彼が持っている技術は、大企業の既存インフラの上に載せることで、高効率化を達成するもの。自身が持つ技術に、世の中に一般公開されている技術を組み合わせることで、数種類の既存インフラに対して導入が可能。しかし、実際にこれを実現するとなると、自社、顧客企業、既存インフラ提供者、一般公開技術の4者の間で、IP(知的財産権)管理の取り決めが重要な課題となる。ただでさえベンチャーの技術、かつ特許権関連で訴えられる可能性があるものは、売れるわけがない。従って、レポートの半分は、このIP管理をどう設計するか、授業の内容を元に、弁護士や現在の顧客と相談しながら、組み立てていく

○ ビジネスモデル: 
似たような技術を持つ企業や研究所は多数あるようだが、多くの場合は自社で全てブラックボックス化して、製品の形で売っている。しかし、これでは顧客は新規購入が必要でリスクが高く、ニッチな市場でしか売られていないようだ。授業で習ったオープン・ビジネスモデルの枠組みを用いて、既存インフラに導入可能なビジネスモデルを再構築し、現在の顧客との契約更新のときに第1歩を提案できるようにする

○ 今後への提案: 
前の2章がとても実務よりになったので、ここでは、もし授業で習ったことが正しいとすると、この企業は今後何を目指して成長するべきか、という、大上段の目標設定

ほとんどスタートアップを1社立ち上げている気分でしたが、流石にPh.Dを取得しながらスタートアップを立ち上げ、前回の課題でも優秀レポートに選ばれるこの中国人エンジニアとの共同作業は、凄く良い経験でした。一緒に授業で習ったことを叩き台に議論を繰り返すことで、実際に彼自身が試したくなるような面白いアイデアがいくつも出てきて、彼も大満足だった模様です。

私自身にも、ここで検討したIP管理やオープンビジネスモデルの考え方は、大変参考になりました。このビジネスモデルはまだあまり一般的ではないため、彼の会社の今後の成長を見守りつつ、将来私自身も別の業界で試して見ると面白いかも、と考えています。

(注1) @openinno

(注2) "the use of purposive inflows and outflows of knowledge to accelerate internal innovation and expand the markets for external use of innovation, respectively."
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by golden_bear | 2010-05-10 23:44 | 学業

Chesbrough教授の講義(1)課題設定の妙(Adobe対Appleを例に)

「オープン・イノベーション」の提唱者であるChesbrough教授の看板講義ということで、たくさんビットポイントを投入しなければ受講できないこの"Managing Innovation and Change"という授業。しかし、それが故にやや偏った教え方となり、万人受けはせず、元からの高い期待値に比べると、受講生の評価は必ずしも高いわけではない模様です。選択授業は人気で決めるべきではなく、自分に合う内容&教授かどうかの方が重要だ、と再認識します。

一方、私自身にとっては、この授業は大当たりでした。毎回毎回必ず心に刻まれる何かを深く考えさせられ、良い所を挙げろと言われれば、すぐに6つか7つは思いつきます。今回はその良い点のうち3つと、その具体例として中間試験の課題について書き留めておきます。

(1) 絶妙なテーマ設定:
全14回の授業を次の4部構成に分けています(多少意訳してます)。丁度第3部が終わった現時点ではありますが、既にこのテーマ設定の素晴らしさに唸らせられています。
- 第1部:破壊的イノベーション
- 第2部:イノベーションのタネを外部調達する方法
- 第3部:知的財産権をイノベーションに生かす方法
- 第4部:イノベーションとビジネスモデルの関係

第1部は、Christensen教授の有名な破壊的イノベーションについて。MOT学習者はもちろん、多くの学生にとってMBAに来る以前に当然知っている内容です。しかし、そこは実際に彼とHarvardで時間を共にし切磋琢磨していたChesbrough氏による授業。説明に最新の事例を用いる程度は朝飯前。単にフレームワークを当てはめるだけではなく、氏独自の理論と関連付けられた調査データと共に、本で紹介されていないもう1~2段深いレベルのメカニズムを含めて議論することで、一味も二味も違う迫力のある「破壊的イノベーション」の説明となりました。同じ理論でも、利用者次第で、全く効果が変わってくる事を目の当たりにし、教授が学生に影響を与えるという意味でのリーダーシップの力量を感じました。

第2部は、要はオープンイノベーションの概念から、どんなイノベーションのタネを生むことができるのか、という内容。ここ10年ほどで様々な大企業やスタートアップが取り組んできた斬新な話を、成功失敗双方の事例交えて、幅広く深く扱います。「世の中こんなサービスを思いつく人々がいるのかあ」、という、目から鱗の新しい考え方の数々を吸収できました。

第3部は、知的財産権に関する少々オタク向けの内容。興味ない方には全く面白くない授業が延々と続いていたと思います。しかし、私にとっては、この特許権の適用範囲やメリット・デメリットなどのテーマは、一度集中して勉強しておきたかったため、願っても無い良い機会でした。単なる特許の話ではなく、それをオープンにしようとすると何が問題になるか、という視点で深く考察出来たことで、特許の応用に対する自分なりのイメージが持てたことはもちろん、特許以外の様々な既得権益の功罪についても適用できそうな視点、そして第2部に続いて目から鱗の様々なアイデアも手に入ったと思います。

こと第2部と第3部に関しては、テーマに興味が無ければ、誰がどう教えようと全く面白くなく、逆に興味がある人なら、教授の力量関係なく、これにコミットする時間を確保できただけでも学べます。日本の大学の経験からは想像つきにくいのですが、このことから、授業選択の際にシラバスの"第何回に何を教えるか"まで良く見た上で判断することが重要だとわかりました。現に何人かの学生は、授業全体を受講せず、興味のある会だけもぐって聴講しています。

一方、第1部は教授の力量が講義の価値にそのままなったと思います。来週からスタートする第4部も、第1部と同様に各所で散々議論され続けている内容ですが、教授がどう料理していくのか、非常に楽しみです。

(2) 世に出る前の新しい内容を議論:
ビジネススクールにおける討論中心の授業では、通常、教科書や市販の教材であるケース、新聞記事など、お金を払えば購入できる内容を叩き台にします。しかし、Chesbrough教授は、これらを使う割合は半分程度。多くの課題は、彼自身が執筆途中でまだ世の中に公開していない草稿のケースだったり、彼独自の人脈で手に入れた情報だったりと、「未公開情報」を元にして行われます。オープンをテーマにしている授業だからこそ、閉じた情報で行われるのは、面白い点です。

このやり方には、もちろん、「教授が授業という場を通して、自分がよりよい文章を執筆するために学生を利用している」、という批判もあります。しかし、学生の側にとっても、このように世に公になる前の固まっていない概念を議論するのは、既に商品として売られている本やケースを叩き台にした場合と比較して、より実際のビジネス環境(=必要な情報が全て手に入ることが珍しい)に近く、面白いです。当然、内容そのものも新しくなるため、大変参考になります。

(3) 期待するアウトプットが明確
上記のように、最新でまだ結論の出ていない内容を授業で扱うと、得てして発散しがちです。例えば、リーダーシップや倫理のような授業で、教授が9割方正しいことを説明していたとしても、残り1割それに当てはまらない経験をした受講生が、「そんなの全然違うよ」と言い始めた瞬間に、授業全体が崩壊してしまうこともあります。

Chesbrough教授の授業でこのようにならないのは、毎回必ず「これに答えられるように準備しておけ」という質問を、授業の3日ほど前に送付します。しかし、これらの質問が直接学生に対して授業内で発せられることはありません。授業中には学生の発言を引き出せるだけ引き出すために、少しひねった別の質問を投げかけて、議論を活性化させます。そして、その流れに沿ったまま、授業終了時には事前に送った質問の7-8割をカバーするように上手く議論を誘導しているのです。

なんでこんなに上手く議論をリードしているのかな、と思っていたのですが、その秘密は質問を送るタイミングを"授業の3日前に"している、という点にありました。授業における学生の反応や、世の中の情報を、直近ギリギリまで反映して、質問の構成が巧妙に練り上げられているのです。

また、中間試験として、「指定した最新ニュースに対して、授業中に習った概念を当てはめて5ページ以内の論文を書け。ソースさえ明確にすれば何を参考にしても良いし、一方この最新ニュース以外何も見なくても構わない。」というレポート課題が既に2回課せられています。そして、1回目の課題後に、10項目くらいの採点基準を厳密に適用していることを公開。この採点基準は、授業中に学んだ概念を正確に当てはめられるかどうか、に明確に重点を置いて設計されていて、幾ら面白い文章を書いても、授業内容と関係なければ全く評価されないのです。

このような質問の投げかけ方や採点基準の設定の仕方を見るだけでも、期待アウトプットに結びつく明確な課題設定の仕方や、人に影響力を与える良い文章を書く指針など、非常に学べる点が多いのです。

-----------------------
さて、(1)(2)(3)と書いた結果、そもそも授業で何が議論されているのか。具体例として、今までに2つ課せられた中間試験の課題について書いて見ます。

1回目の中間試験は、第2部最後の講義直後に実施されました。この日の講義は、100年ほど前の創業当時から研究開発力に非常に定評があったあるグローバル大企業が、最近10年間に革新的なオープンイノベーションの組織を如何に上手に創り上げることが出来たか、という成功事例のケースでした。この講義の直後に、1ヶ月前の新聞記事が課題として配られる。それはなんと、この大成功企業が、今現在新しいイノベーションのタネを生み出せずに苦労している、という内容。「授業で習ったことを使って、この会社はどうするべきか提案しろ」、という課題なのです。

すなわち、授業内で散散、「素晴らしい組織である」、「先進的な取り組みの事例」として紹介されていた組織が苦戦してる、、、ということは、当然授業で習ったことをそのまま当てはめるだけでは答えになりません。実際、授業で習った直後にすぐ思いつきそうなアイデアは全て、この会社が過去数年間のうちに実施済みであることは、ちょっと調べるとすぐに出てきました。

この上さらに、授業で習ったことを応用しなければ評価されない、という縛りが課せられるので、全く一筋縄ではいかないです。まるで15手詰め位の詰め将棋を解くように頭をフル回転させ、、締め切り直前にようやく雲の合間の光のように、この会社が自力ではなかなか出来ないが、効果のありそうな次の一手が見えて、どうにか書くことが出来ました。経営戦略を練る上で、非常に良い頭の体操でした。


2回目の中間試験は、第3部最後の講義(4/12)直後に実施。講義は4/12の4pmに終わったのですが、なんと西海岸時間4/12、1:15PMに配信された新聞記事が課題になりました。記事の内容は、今巷で様々な論議を呼んでいる、Adobe対Apple。課題は「授業第3部で使った考え方を最低1つ適用しながら、状況を分析せよ」というものでした。

この漠然とした課題、に加え、この2-3ページの新聞記事の中にも様々な論点があり、どこから掘り下げていくかだけでも、全然違うレポートになります。この雰囲気を紹介するため、一例として私が分析した手順と結論を下記に記してみます。(アップデート:注1)

-------------------------
まず、論点の抽出。私の場合、この、一見お互い詭弁を言い争っている内容を、明確にするところから始めました。
・ Adobeは『ユーザーにFlashを使わせないAppleは、クローズドな組織だ』と主張
・ 一方、Appleは『iPhone/iPadはHTML5はじめ多くのオープンな規格をサポートしている。AdobeのFlashこそクローズドだ』と主張

次に、お互いが置かれているビジネスの環境(市場、競合、収益性、顧客、サプライヤー、代替品)と、売上獲得方法の現状と将来を確認し、ここで議論されている、FlashやHTML5が両者にとってどういう意味合いがあるものか、を確認する。

そして、授業第3部で習った考え方の適用。幾つか習った考え方のうち、下記2つを、2社の状況に適用してみる。
考え方1 企業がある分野における技術と知的財産権を持つ場合、"技術○知財○"、"技術○知財×"、"技術×知財○"、"技術×知財×"(○は有り、×は無し、の意味)の4象限に分けられる。そして、2つ(以上)の企業が同じ技術や同じ知財を持つ場合に、これらの重なりを比較することで、どこからどこをどの程度オープンに/クローズドにするべきかが明確になる
考え方2 知財を持つ技術が、どの程度成熟しているかに応じて、オープン/クローズのさせ方やさせる対象が異なってくる

この考え方が、Googleはじめ他のプレイヤーの動向にどう関連するかを考察後、最後に、この2社が今後取りうる打ち手、及びそれにより起こりうる状況を議論。両社に対するアドバイスで締めくくる
--------------------------

この手順を踏んだ結果、私の結論は、「この2社は実は戦っておらず、お互いをそこまで気にしていない。そして、両社ともこのまま独自の道を進み続けることが最良の選択。もし仮にどちらかが、現在の主張を曲げて譲歩したりこれ以上相手を罰したりすることは、そう動いた方が短期的に良くても中長期的に大損をする」というものになりました。

木曜日に課題提出後、金曜日に最終課題のチームメンバーであるエンジニア2名と会いました。自然とこの課題について雑談となり、彼らの結論は私とは全然違うことに気付きました。1人は、「AppleはFlashを使えるようにすべきで、AdobeはHTML5においてもFlashのように収益化を実現すべき」という正論のレポートを書いた模様。もう1人は、Adobeについてのみ詳細なApple対抗策を練り上げて、Appleについては何も書かなかったそうです。

ここまで結論が変わってしまうのは、課題の捕らえ方に大きな違いがあった、ということがあります。例えば、「iPadは、今までに無い全く新しい商品か、それとも単なるiPhoneの延長か」という点での意見の違いが、上記考え方2.の使い方を全く変えてしまいます。また、私が話した相手はソフトウェアエンジニアの方でしたので、どの技術がどこまでオープン/クローズか、それが技術者に与える影響、などに関して、私に比べてとても詳しく調べていました。このことにより、上記考え方1.の使い方も、よりビジネス側で適用させた私とは、大きく違うものとなっていました。

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このように、同じ授業を受けて同じ考え方を適用しても、バックグラウンドや主義が違うと、全く違う結論が生まれてしまうのが、特にMOTのように半分エンジニアがいるような授業の面白い点です。そして、より多様な意見を生み出すために、最新の面白い課題を提示し、議論を発散させた後にでも重要な考え方を心に刻むべく結論を纏めきるChesbrough教授。この彼の授業のスタイルは、イノベーションを発生させる為に必要な課題設定とリーダーシップのあり方を、そのまま体現しているように思えます。

(アップデート:注1)
第2回課題の結果が返ってきました。私は平均をやや下回る点、一方ここで紹介したエンジニアは最高点模範解答として授業で紹介されていました。一番心配した結論部分には満点がついており、私が減点を受けた点は2つのみ。1つは上記考え方1の部分の分析の深さand/or表現力不足。もう1つは「引用した点は全てソースをつけること」というやればできる要求項目を、面倒くさい&時間不足&前回高得点を取って手を抜いてもOK、と考え、完璧にはやらずに友人とのゴルフを優先させたこと。

このことから、
 ○ ここに書いた分析手順は”平均点並み”。くれぐれも雰囲気のみ参考にしていただければ幸いです。
 ○ サボったらサボった分だけ正直にそのまま跳ね返ってきた
 ○ 本当に「授業で習った理論がキチンと適用できるかどうか」に、凄い比重が置かれている。その後打ち手や結論を導く部分は、どんなに突拍子も無い内容が書いてあろうが、その前と論理的に帰結がしっかりしていれば減点はしない、というスタンス
 ○ またもや優秀なエンジニアとチームが組めてラッキー!(彼については別に紹介する予定)

(アップデート2)
皆様ご存知の通り、この課題発表の10日後に、Adobe側がAppleのモバイル機器向けFlashツールの開発を断念することを公式に発表。その1週間後にSteve Jobsが公式書簡にてFlash非搭載の理由を声明し、Adobeも反発するなど、まだまだこの問題はこじれ続けるようです。
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by golden_bear | 2010-04-17 23:09 | 学業

2年生秋学期後半&春学期前半 授業振り返り

中国人EWMBAとのM&Aケースコンペは、毎日波乱万丈違和感有りまくりで、本当に良い経験。週末潰してやった甲斐あったと思います。本日はその中での1つの発見、MBAの授業が私のスキルを想像以上に上げてくれていたこと、について書いて見ます。

今回M&Aケースコンペに出れたのは、声をかけてくれたPさんが私を
(a) チームに興味があり、やる気を出してやってくれそう(will)
(b) こいつは使えそう(skill)
と思ってくれたから。高々2回の授業でこう思ってもらえたのは、、
(a) 簡単な自己紹介の時に興味を伝えておく; 「こういう授業を一杯取っている」という話をしていた
(b) 実際に授業のチームで、使える&また一緒に働きたい、と思われる働きをする; PEの授業で専門知識含め喧々諤々の議論を行い、意気投合できた

まず、MBA以前に金融業務経験の無い私が、上の太字の部分を示せたこと。次に、実際チーム作業をして、昨年のM&Aのクラスや夏のインターン中には、前職で得たコンサルティングスキルでのみチームに貢献していた私が、今回は自然と金融スキルでチームをリードできるようになってきたこと、に気付き、改めて授業の効果を思い知りました。

というわけで、授業の振り返りです。今までこのテーマは難しくてなかなか書けず後手に回ることが多かった(注1)のですが、個人的には特に2年生の選択科目では、MBA生活で一番楽しい時間は授業と思える位、幸運にも7-8割の確率で凄く充実した授業に当たっていると思います。従って、試みに2年生秋学期後半(Fall B)&春学期前半(Spring A)に受講を完了した下記5授業について、総論、各論の順番に書いて見ます。
(1) Corporate Finance (2年生秋学期通期:3単位)
(2) Venture Capital & Private Equity (2年生秋学期通期:3単位)
(3) Financial Information Analysis (2年生秋学期通期:3単位)
(4) Design Financial model that work (2年生春学期前半:1単位)
(5) Private Equity (2年生春学期前半:1単位)


総論: 見ての通り、奇しくも全て金融関連です。これは「キャリアチェンジャーの最終学期考(前編)興味の無いものこそやる(後編)学生のうちの経験」に書いたとおり、Haasに来て1年経って、金融関連スキルを何らかの形で生かすキャリアチェンジを強く意識したため。Haasの諸先輩方も、来る前には想像つかない方向へ人生が変わっていく人が少なからずいるのですが、私も縁遠いと思っていた金融を、よりによってHaasで一杯勉強することになるとは、大きな変化です。

よりによって、と書いたのは、2009インターン状況レポート(1) Haas視点での他校比較の記事にあげた分析結果からも、Haasは他校に比較して圧倒的に金融を志望する人が少ないビジネススクールだからです。しかし、2008年に学長が金融関係の教授を大幅増員し、MFE(金融工学)のコースは常に全米Top5に入り続けるほど、金融関係の教授陣は充実しています。また、地元にサンフランシスコ/シリコンバレーがあることや、EWMBAを置いていることからも、幅広い選択科目が選べます。

このように、「学生に人気が無いが、教授や授業が充実している」、という環境は、私のような初学者には最高です。

○ 人気が無いので少人数クラスになること多し = 議論がとても濃くなる
○ 人気が無いので、教授は一生懸命判りやすく教える = 簡単な話もフォローしてくれるし、難しい話にもとことん付き合ってもらえる

もちろん本格的に金融関係のコネをつくり名を上げたい方は、昔から金融に強いと言われているMBAの方が得るものは多いと思いますが、単純にMBA程度の金融スキルを身につけることが目的であれば、大学のネームバリューは関係なく、自分が身につけられるかどうか、環境がフィットするかどうかのみの問題と思います。私自身は、金融に関するスキルとモチベーションの両方が得られ、かつ金融以外でも学べることが多いHaasの環境は、幸運にもフィットしたのだと思います。

各論: 次に、5つの授業個別の終了後レビューです。(注1)により内容そのものには踏み込まず、概要と、私が何を得たのか、という点を中心に書いておきます。

(1) Corporate Finance (2年生秋学期通期:3単位)
どのMBAでも教えている内容ですが、去年来たばかりのRau先生のおかげで、Haasで受けた授業でもBest5に入る、広く浅く公平な視点で痒い所に手が届く素晴らしい授業と思います。

 ○ 時間一杯、生徒にずっと質問し続けるスタイル: 1時間半の授業で50回くらい質問されます。その全てが、「実務でこういう状況に陥ったら、悩んで議論になるだろう」という、痒い所に手が届くものばかりなのです。この、他の人がやると学級崩壊しそうなやり方で、授業を纏め上げる教授の力量は素晴らしいです。
 ○ 公平な視点: これ以前の金融関係の授業では、資金を投資/貸す側の立場、あるいは学者としての立場で行うことが多く、企業側の現場感が無いことが不満でした。しかし、この先生は、資金を調達する企業側での実務経験を持った上で投資銀行のパートナーまでになった経験を活かし、常に、貸す側借りる側双方の利益最大化を両立させるための問題解決をする、という公平な立場で進めるため、とても納得感があります。
 ○ 広く浅く全体感を染み付かせる: 「国際金融と詳細なオプション取引以外、学問として金融が扱う内容の9割に触れる」という公約が守られました。これにより全体感を持って、個別のファイナンスの公式/定理が相互に持つ意味や、それらがとてもシンプルな幾つかの基本公式で全て繋がっている、という美しい理論が体系的に学べます。

こうして、まず、同じことを教えるにしても教授が違うとこうも違うのか、と強く実感しました。次に、私個人への意味合いとしては、過去仕事上で幾つか犯した大きな失敗の原因を悟り、今後安心して金融のスキルを磨けるようになった、2点が大きいです。前者については、前職でよく金融出身の上司とは事の進め方や考え方で衝突することが多かったのです。しかしこの授業を受けて、その多くのケースでは、聞き分けの無い私が悪かったのだ、と反省しました。また、金融以外の点についても、この資金調達の視点があれば失敗を回避できた、という振り返りも幾つかありました。そして後者については、公平な視点で全体感を身につけることで、リーマンショック以降散々議論されている金融業界の意義が、より明確にイメージできたことが大きいです。これらから、この授業は今後金融のスキルを身につける、大きなモチベーションになりました。

(2) Venture Capital & Private Equity (2年生秋学期通期:3単位)
正直前半の7回分は、何でこの授業人気なんだろう、とあまりピンと来ず、全5回のチーム課題も、最初2回は、まあVC&PEならこういう課題だろう、という予想の範囲内。しかし、後半の授業7回が圧巻で、3回目以降の課題には仰天しました。

○ 課題第3回: 企業価値評価: 様々な評価手法を試す中で、スタートアップへの投資額を決める難しさの、様々な壁にぶち当たりまくる。非常に非対称な情報と非効率な市場の中を、まさに宝探しをしているようで、こういう世界は面白い、とわかりました。

○ 課題第4回: 契約書: こういうものは専門家に任せればよいや、と思っていた私の考えが一変。このストラクチャーをどう決めるかが、実はスタートアップ企業と投資家双方の生死を決めてしまう非常に大きな問題。だからこそ、VCや投資銀行といった金融サービスが、スタートアップの成長に対して大きく貢献できる、という意味合いを、実務のレベルでクリアに理解できました。

○ 課題第5回: 投資の提案: 全ての知識を総動員して、与えられた20社の中から1社投資先を選び、投資スキームとそれに基づく契約書までを書ききる。膨大な作業量を、米国人、韓国人、中国人と私の4名のチームで処理していく中で、特にVCから来た一番経験豊富な中国人が、事業会社側出身の他メンバーと相当対立。どうにかチームで相当自信を持って纏め上げた最終報告書。3名の教授陣にVCの視点から「この企業にこんな高い金投資できるわけ無いだろ」と、ぼろくそに叩かれるは、インターン先のCEOに持っていって見せても、「こんな条項を入れてくるVCとは俺は一切組みたくない」とスタートアップ側の視点からぼろくそに叩かれるは、散々なフィードバックを受けました。実際の仕事でこれをやら無くてよかった、という、とっても良い勉強になりました。

一番現場に近い実務の部分まで触れた上で、VC業界全体の俯瞰をし、3名の教授と共に毎回実際の大物VCが招待されて活発に議論がおこなわれる中で、現状とインサイダー事情を学べる。VCとは何か、というイメージが根本から覆った、贅沢で幸せな時間でした。

(3) Financial Information Analysis (2年生秋学期通期:3単位)
この分野で世界で3本の指に入る有名なRicherd教授による、実際の企業を外部情報から評価しその将来を予想する決定版の授業。投資家や株式アナリストが、企業の情報(戦略、会計、業界/競合比較、将来予測、現実の株価予測)を、どこまでどう確実に入手・分析可能で、どこからは個人の裁量に委ねられるのか、という境界が見えたことが全体的な学びです。特に将来予測と現実の株価予測の2つの話題については、M&Aケースコンペにも即応用が効いています。

先生自体も特に多くの米国人受講生は「こんなに謙虚に丁寧に教える人はいない!」と絶賛しています。しかし、私にとっては、前半は、単に彼自身が書いた教科書の知識を披露している、つまらない印象で、いつも内職していました。ところが後半に入り、難しい期末試験と、重いチーム課題が立て続けに降ってきて、前半のつまらない講義が如何に重要だったか、と後悔・猛反省し復習しました。

こうして復習してみても、会計スキルのところは良く判らなかったことから、春学期のMBA223を取ることに繋がりました。また、今回は、米国人+インド人2人+韓国人+私のチームワークがとても上手く機能し、成績自体は良かった一方、外部情報だけから投資をする仕事は、現時点の私には向いていない、とも気付きました。

(4) Design Financial model that work (2年生春学期前半:1単位)
題材を簡単な財務諸表にしているだけで、金融は関係ない。その実態はむしろ、工業デザイン、もしくはもはやホワイトカラーの生産性向上の授業に近いです。ビジネスのあらゆる場所で使われる数字入りの書類(殴り書きもエクセルも両方扱う)や、それを用いたコミュニケーションに、何が綺麗(最も単純で必要十分:誰が見ても理解が早く間違わない)か理解し、それを自分で達成できるようになるまで演習や他人へのフィードバックを繰り返した結果、その後の生活に即反映しています。

全7回の授業でしたが、概念から始まり個別の各論に落とし込んだ、前半4回の授業には毎回感動。しかし、後半2回はあまりにも五月雨式にエクセルのツールやらなにやら個別の知識が降ってきて、結局よく判らず失望。ただし、教授によると後半2回は色々実験しながら授業を改善中とのことで、今後はより良くなることが期待されます。

また、2人でチームを組んで課題を解く機会が何度かあり、米国人、インド人、イスラエル人、ガーナ人と共同作業してみる。皆、陥りやすい罠の癖が極端に違うことも、面白かったです。

(5) Private Equity (2年生春学期前半:1単位)
日曜日を丸2日潰す授業。その授業にしても、その間にチームで2回提出する課題にしても、Private Equityとは何で、実際に何をしているのか理解するうえで、とても勉強になりました。

まず、Puff教授が現役のPEのパートナーであり、彼が実際に何を思ってどう投資し、結果どんな良い結果や悲惨なトラブルが起こって、どう対処したか、という実話が、授業内の様々な場面で登場し、説得力を増します。そして、その豊富な経験に裏打ちされた彼が学生に問う課題が、凄く良く練られています。大きな宿題も、授業中に「今から10分で隣の人と議論して発表せよ」という小テストも、どれも一筋縄ではいかない上、それらがストーリーとして頭にこびりつきます。そして、それらの課題全て解き終わって残るものは、チームワークの成果としてのPE関係者全員向け財務モデル・プレゼン資料と契約書といった実務の雛形に加え、「XXの際の10か条」のような行動規範あり、PE業界が世界経済のどこにどう絡んでいるかという鳥瞰図あり、と盛りだくさんです。

今までM&AやVC&PE、Corporate Financeの3つの授業でPEを扱った会が1-2回ずつあり、PEに対する理解はそれで十分かも、と思っていたのですが、PEの方ご自身がPEを扱うことで、他の授業とは切り口も迫力も全然違う授業になっていて、取る意味大有りでした。やはりものは現在進行形の当事者に習うのが一番だと、改めて実感しました。

チームは、米国人、韓国人、スペイン人、中国系米国人と私。上5つの授業では、毎回異なるメンバーと組んでいるのですが、とてもインターナショナルなチームになり、面白い問題が発生することには変わりない。このチームでは特に、スペイン人と中国系米国人が、互いの国をののしりあう勢いで対立して大変でしたが、それを乗り越えて今、M&Aコンペに入れているのだと思います。
----------------------------------

うーむ。やはり授業について書くのは難しく、総論も各論も備忘録になってしまいましたが、データベース的にそのままにしておきます。最後になりますが、記憶に残る授業という意味では、ここで書いた5つよりも「キャリアチェンジャーの最終学期考」の記事内で「(4) 中長期的な視点で思考回路の幅&深さを今一度棚卸しする」に分類した2つの授業(Managing InnovationとInternational Finance)の方が、予想通り学びも印象も全然深いです。これらの凄さをどこまで書き残せるかは判りませんが、最終授業まで聞いた上で、じっくり纏めてみたいと思います。


(注1) 授業をブログに書くことが難しい理由:
○ 特に必修授業の内容は、日本語の文章にした瞬間、「MBAxxx」といった形で本屋さんに並んでいるものと、さほど変わらなくなってしまう上、改めて私が書くより本の方がわかりやすい
○ 新しい概念を議論することもあるが、その感動や凄さは、ブログで伝えるのは難しい
- そもそも高い授業料と時間を払い、ビッドで勝った人のみに公開している授業内容を、あまり公開する気になれない
- 公開するにしても、前提知識や背景に長文の解説が必要で、作業量が膨大
- さらに、新しいものを知るときには、自分自身が専門家でないため、あやふやな点を無くすことにも時間がかかる
- そこまでして公開しても、自分以外の人は読む気にならないだろう
○ 内容ではなくプロセスの学び:例えば、チームで宿題を準備・議論したり、1つの概念についてじっくり考えたり、それを元に授業で議論する、は、実際次から次へ色んな学びがありすぎて、ブログに書くときには臨場感が失われて、うまく表現できない。
○ そもそも、「授業」という言葉がわくわくしない
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by golden_bear | 2010-04-05 09:43 | 学業

教授とのランチから知見を得る

2月下旬からの突発イベントの多発は延々と続き、ここ2-3週間は後手後手に回って火消しに追われ続ける、あまり好ましくない形での多忙な日々が続いていました。しかし、振り返れば、毎回毎回の授業や様々なイベントで、どんなに忙しくてもやった分だけは必ず有意義な学びを得ていることに気づき、この学べる環境の良さを実感します。

たとえば、突発イベントと呼んでいる中で、やたら多かったのは、急に誰かに呼び出されて意見を求められること。呼び出して頂いた方は、教授やクラスメート、他学科や地域の研究者、日本からの訪問者の方など様々。下記のようなテーマについて、突然、「こんなの調べてるんだけど、明日昼に意見くれない?」、という感じで、数-数十ページのメモが送られてきて、読んだ上で少し下調べして議論する、ということが、週に3-4回ずつ起こっていました。

○ 現在/過去に受講している授業の改良点議論
○ 来学期新設する授業に対する意見や調査
○ 国・地域別のアルムナイ活動活発化のためのシステム構築
○ トヨタ問題について
○ 民主党政権後の日本の展望について
○ 就職活動の現状とアドバイス
○ 沖縄問題に関する日本人の反応について
○ 東アジアと米国のソーシャルゲーム事情
○ 学生新聞への記事投稿(日本人・韓国人の飲み会のあり方について)

この試験やレポートが集中している期間に、やめてくれー、という感じでしたが、今まで日本人の私に対して、ここまで様々な事を真剣に聞かれる機会はあまり無かったので、予定が合う限り答えていきました。その結果、毎回毎回、日本/日本人ってこんな風に見られてるのか、と気付かされること多し。

中でも教授と少人数で議論するのは、こちらが学ぶことも多く、非常に良い機会。というわけで、教授と話をした部分を少しだけ紹介します。

(1) MOTの大御所名誉教授と、トヨタ問題について議論
HaasのMOT(Management of Technology)プログラム創設者の1人で、2003年に現役を引退された、Robert E. Cole名誉教授と、2回にわたるランチミーティング。1964年より日本の製造業・ソフトウェア産業の内側に40年以上どっぷり漬かり、働いたり研究やコンサルティングをしてきたことから、トヨタ問題については米国メディアからも多数の取材を受けていたそうで、彼自身の記事を公にする前に、何人かの鍵となる日本人の発言を参考にしたかったそうです。そこで、今回の私のミッションは、彼が送ってくれた幾つかの日本語記事を読み、彼の英語記事原稿にインプットをすること。

出来上がったものは、下記2つの記事となります。
If Toyota Sneezes, Will Japan Still Get Pneumonia?
No Big Quality Problems at Toyota?

特に下の記事で、日本でも日経ビジネスや週刊ダイヤモンドトヨタ“推定有罪”の世論を作った謎の人物とLAタイムズの偏向報道~『ザ・トヨタウェイ』著者の米大物学者が語る衝撃の分析!などの記事で取り上げられることの多い、ジェフリー・ライカ教授に対して、真っ向から対立する記事をすぐさま寄稿する様子(お互いを知る仲だそうです)など、大変熱い場面に遭遇でき、経営学者の世界を垣間見れました。

このような中で、ごく一部とはいえ私の意見も彼の記事に反映されていたのは、嬉しい限りです。さらに、この教授が昔から付き合いのある日本人Haas卒業生を紹介していただけたり、と、教授経由のネットワークの恩恵に多数預かることができました。

ちなみに、今回のランチの場所は、Faculty Clubという、Haasから徒歩2分の来賓用の建物。稲盛和夫さんがバークレーにいらした時にここですれ違ったりこともあります。$8程度で食べれるサラダが新鮮で美味しいので、普通のランチにも良く使います。
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(2) 少人数制授業2つの改良点の議論
少人数の授業は、教授や共通の興味がある友人と親しくなれる意味で、学びも人間関係も濃く築きやすい良い穴場です。実際、2つの授業でランチが開かれました。

7人しかとっていない今学期のInternational Financeでは、教授のおごりで私含め3人の学生と1時間のランチ。元の目的は、「せっかく7人しか居ないので、皆が興味ある分野の解説を重点的に行いたい」、という授業改良案の創出ですが、当然それ以外の話題でも盛り上がる。例えば私に関しては、日本の株価と為替の推移予測や国の借金の返し方、日本と他国にまたがるM&Aの機会などなど。このパキスタン人の教授は、過去日本に関しては全く無経験で興味も無いにも関わらず、巷の日本語ブログ等で語られていることくらいは知っている/あるいは話しながらその場で瞬時に理解していることに、改めて驚きます。また、私以外は、奇しくも2人ともアフリカ投資関連の仕事に全然別の角度から関わっていた方々。これまたマイクロファイナンスの現状や、アフリカ政治/NGO事情など、私の興味ある部分の話で大変勉強になりました。そして、このランチを受けて、先週からの授業の難易度が大幅にレベルアップ。リスク管理のモンテカルロシミュレーションやデリバティブの細かい計算に踏み込むなど、他の3つ分くらいの授業領域まで扱うことに。これら取らなかった授業の分まで色々試しながら学べることは、嬉しいことです。

このランチでは、Haasから徒歩5分ほどの、Adagiaというレストランに行きました。ここはランチでも$13-20と高いので、おごってもらう機会で初めて行けて、ラッキーでした。
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もう1つ、先学期8人しか取らなかった、Case Studies for Entrepreneurshipに関してもフィードバックを求められることに。教授の1人と1対1で30分の議論。実はこの授業、来年は大きく内容を変えようとしており、そのアイデアを一緒に練りました。「Haasの良いところは、学生の要望でどんどん新しい授業や教授を呼び込むことができる」、ということは入学前から聞かされていましたが、実際には良くできた授業が多く、あまり感じずにここまで来ました。しかし、こういう機会があると、まだ独立採算制になって間もない発展途上のビジネススクールであることを実感します。来年、どんな授業が出来上がるのか楽しみです。


(3) 日本の今後の展望に関する議論
最後に、これは機密事項なので詳細は書けませんが、UC Berkeleyのある教授に特命の調査を依頼され、今後卒業までの2ヶ月間、日本語の文献調査のアルバイトをすることになりました。1つだけ印象を書くと、この調査はまさにOnly UC Berkeley Can Doのプロジェクト。最初引き受けるかどうか迷ったのですが、教授と会ってテーマを聞き、「これは文系理系問わずBerkeleyが強みを持つ分野の知識・知見を総動員するからこそ、できて意味がある、Berkeleyならではのものだ」と思い、やらせてください、と即答しました。お金まで貰えて地球の裏側から日本をある面白い角度で見てみる良い機会だし、私があるビジネスの側面から日本を調べたことが、他の数十人が他国の様々な側面から調べたことと交わり、最終的にどんな成果になって現れるのか、とても楽しみです。

このミーティングは、大学中央にあるTelegraph Avenueそばの、Cafe Milanoで、朝食時間にありました。アメリカにしては濃い目のコーヒーが美味しいです。
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本日ようやく春学期前半の期末試験&レポートの山をほぼ全て消化完了。明日からの最終学期、心機一転ラストスパートを掛けて、残りの貴重な時間、有意義に楽しみたいと思います。
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by golden_bear | 2010-03-15 22:39 | 学業

キャリアチェンジャーの最終学期考(後編): 学生のうちの経験

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「あなたの今回のパフォーマンスは酷いです。次回のテストの前に必ず、私のオフィスアワーの時間に来て、1時間のアドバイスを受けて下さい」

Chinese 1Bの、1回目の口述試験。課題は、月曜日の授業後に言い渡されたパートナーと2人で、5分間の中国語劇を作成し、それを丸暗記して、木曜日に学生全員の前で演じること。私のパートナーは文学部2年生。とても忙しそうだったので、先に私が火曜日中にあらすじを書いて彼女に送り、水曜日朝に打ち合わせしながら修正し彼女に引継ぎ。その晩に彼女から大幅に訂正があった最終版が送られてきて、それを夜中必死に覚えて、木曜朝7時から2人で練習。何とか演じきり、その直後に講師に呼び出されて受けたフィードバックです。合格点は100点満点中80点に対し、パートナーは96点になったが、私は75点。呼び出されたのは私1人。

今学期に入って、この中国語初級講座は受講生の数が半分以下に減少。内容が急に高度になり、元々語学が得意な上澄み層のみ残ったようで、誰から見ても私は完全にお荷物。ある10人くらいの組織で能力的に一番できない、ということが、どれだけ屈辱で辛いことなのか、貴重な体験をしています。ただ、読み書きの比率が高まった分、合計点数では平均よりやや下程度でついていけそうなのと、絶対的なスキルの伸びの意味でこんなに効率の良い環境はなかなか無い。周りに迷惑をかけない程度に、実益を兼ねた趣味、ということで続けてみます。

他に受講した授業を、前回定義した4種類の分類で、(4)→(1)→(2)→(3)の順に紹介してみます。
(4) 中長期的な視点で思考回路の幅&深さを今一度棚卸しする:
下記2つの授業は、毎回時間をかけて準備して臨むことにしました。

○ Managing Innovation:
 さすがにH.Chesbrough教授が創り上げて来た授業だけあり、非常に濃い。圧巻だったのは2回目の授業で、いきなり2時間で3つのケースを40分ずつキッチリやり切ったこと。通常は1つのケースで2時間使うので、3倍の濃度と学びがありました。しかも、半分工学部生という、リードしにくいMOTの授業。これは、よほど学生に伝えたいメッセージが意味のある形で明確になっていないとできない芸当だし、このような教授に対して生徒側も真剣に相当準備をしています。このスピード感で、今後1つずつのケースを深堀りしていくのは、非常に楽しみです。

 イノベーション論は、誰かが頭でわかっていても企業内で浸透させて実現させるのは本当にしんどく、知ってても宝の持ち腐れになりがち。それは、そもそもイノベーションのタネが無いところに理論だけ持ち込んでも意味が無いことと、タネがあってもその組織内の様々な専門家を一つに纏めて推進させることが難しい、という2点があると思います。この授業を受けながら、地球上からタネをどうやってほじくり出す/タネとして見極めるか、という飛んだ話と、様々な立場の方々をどう纏めるか、という実務よりの話の双方を、じっくり考えていきたいと思います。

○ International Finance:
 こちらは逆に、あまりにも酷すぎる授業。教授は毎回理論としては至極真っ当なことを言っているのですが、問題はその中身。全然現場感のかけらも無く、聞けば聞くほど、「グローバルな世界で通常のファイナンス理論は全然通用しないんだなあ」、と、教授の意図とは正反対の意味で学びがあります。しかも、毎週ケースを読んだ上で2-3人のチームで分析をしてレポートを書いて出さなければならない上に、中間・期末試験まで用意されている、という負荷の重さ。最初20人受講生がいたのに、結局7人にまで減少。ヤバイと感じた教授がケースの内容を差し替えて、前回学生が納得行かなかった部分によりわかりやすい説明を試みるも、かえってまた生徒の反発を食らう、といった悪循環。私も予定していたチームメンバーがみんな脱落しまい、やめる筈だったのですが、最後の最後土壇場で、この授業を取ることにしました。それは、残り物に福があったからです:
 - チームメンバーに恵まれた: 履修締め切り直前にチームメンバーを失った私は、一か八かでこの分野にとても強く、スキルも性格も生まれついての投資銀行家のような米国人の友人にメールを出すと、彼も丁度困っててチームを組むことを快諾してもらえる。さらに、インド人にも関わらずファイナンスクラブのリーダーをやっている友人も加わることに。私のチームメンバーではない他の4人もいずれも精鋭ぞろい。私だけ経験に乏しい、という意味では、まるで中国語のクラスの再現のような感じですが、だからこそ友から大きなものを学べる、と考えています。
 - 扱うテーマが面白い: International Valuation, ICAPM, Global Cost of Capitalなど企業価値やリスク評価がどう変化するか、という話に始まり、Structured Finance, Poritical Risk, Currency Hedging, Microfinance, Private Equity&Macro Market, Social Returnに至るまで、どれもこれもInternationalがつかなくても勉強しておきたいテーマが並んでいます。毎回チームレポート提出の宿題が重い分、それが自分の世界と視野を広げるのに良い機会と考えています。
 - 教授が情熱的: 人により感じ方は違うと思いますが、正しいことを正しいと主張し、質問にも真摯に答えている姿に、心を打たれるものがあった。


(1) 自発的にやりたくない、が、必要とされているものを取る:
これ、今の私には、会計関連の授業を指します。MBAに来る前までは、必修はともかく選択科目で会計関連の授業を取ろう、と思うようになるなどとは想像がつかず、自分でもびっくりしています。今でも、会計の勉強自体は全然好きではなく、できることならば避けて通りたいのですが、だからこそ取っているのは、下記の理由。

 - 諸先輩方からの有難いアドバイス: 前学期のPower&Politicsの授業レポート作成時をはじめ、今まで様々な機会で先輩方から、「MBAにいるうちに会計だけは学んだほうが良い。後々貴方のやりたいことに効いてくる」と言われる。まだいまいちピンと来ない部分もあるけど、素直にやるべきと考えています。
 - あまりにも予備知識が無さ過ぎる: Financial Reporting Conferenceを覗いてみましたの記事の拙さっぷりからもわかるように、概念も英単語も両方不十分。これでは、いまこの分野のニュースとかで見ても頭にぜんぜん入らない。少なくとも英語の授業でしっかり基礎固めをする意味があるとは思った
 - 他の専門知識よりはとっつきやすそう: 詳しくは(2)で
 - 今後面白いことが起こりそう: 「50年前に会計システムが別の形で作られていたら、今頃地球環境はこんなに悪くなっていないだろう」と誰かが言っていましたが、IFRSはもちろん、排出権取引、XBRLなどなど、今旬の話題がいっぱい転がっている。

実際に今から公認会計士や会計監査になろう、とは全く考えておらず、会計学とビジネスとの狭間で何が起こるのか、というテーマを学んでいます。具体的には、下記の2科目です。
○ Corporate Finance Reporting:
Financial Reporting Conferenceの時にたまたまランチを一緒にした教授が、初学者にも判り易いように丁寧に教えているので、好印象を持ち、最後ぎりぎりにやっぱり取ることに。基礎(といっても私には相当難しい)をキチンと教わるのはもちろん、初回の課題「ある企業の2008年決算書の怪しい箇所を探せ」で実は40箇所も怪しい部分があったり、2回目の授業「収益認識」では、IBM,Apple,Microsoft,GEなど世界に名だたる大企業が数年前に行っていたグレーゾーンの報告を目の当たりにするなど、刺激的な内容が楽しいです。

○ Managerial Accounting:
こちらは実は、人のモチベーションが、組織内でお金によってどうコントロールされるのか、という心理関係のテーマが半分くらい占めている。「お金が人に与える影響」は、MBAに来たいと思ったきっかけの一つだったし、イノベーション論との関連も含め、確立した一学問の観点からこのテーマを学べるのはとてもうれしい。短期的な実務のため、というよりは、中長期的なリーダーシップの発揮の仕方に効いてきそうな、良い授業と思います。


(2) 自力でできないものはやらない、でも、できるようにする:
自分に必要だけどあきらめたのは、まず法律関係。法学部の授業のシラバスも眺めたのですが、興味ありそうなのはすべて議論系の授業。さすがにいきなり実務経験のある弁護士の方と英語で法律を議論ともなると、全然ついていけそうに無く脱落。同様に、特許政治の話は、法律と同様、どうせ(4)の中でその場その場で出てくるので、さしあたり何が問題になるのか、を理解しておく方針に。

もう少しMBAよりの話では、まず通信・エネルギーや不動産などの特定の産業領域にも、修士の授業レベルで一通り眺めることに意味がありそうな面白そうな授業はいくつかありました。しかし、現時点では浅く広く俯瞰したい、と考えていて、長時間を割いてまで履修しようと考えるまでには至りませんでした。また、投資や金融工学系の授業も覗いたけど、これは極めようとするのは自分の方向性とは違う、と生理的に拒否反応が出ました。

と言うわけで、これらの話は基本的に、授業や本で出てきて気になった点を、つど飲み会などで聞いてみよう、というスタンスにしてみます。卒業まで近所の皆様、一杯飲みましょう。どうぞお付き合いよろしくお願いします。


(3) OnとOffをはっきりさせ、頭の回転の瞬発力を上げる:
まだ挙げていない中では、下記3つの気楽な1単位授業を受講しています。

○ Design Financial Models That Work:
まだ最初2回しか受けていませんが、皆が「感動した」という理由が判りました。人間がミスを犯すという性悪説の前提に立って、システム、視覚的デザイン、検査手法、そして根本の大方針と、ありとあらゆる手を総動員して最も速くミスを最小限にする手法を学び、実際に即実践で自分の手でできるようにする。初回の授業など、全くPCを使わなかったが、エクセルが上達した。良い形で瞬発力が上がります。

○ Private Equity:
日曜日丸2日を使う授業ですが、1月末に第1回が終わったため、あとはグループワークで宿題を2つ提出したあと、3月にもう1日受けるだけで完了。あるプライベート・エクイティのパートナーの方が講師を勤め、業界の定義、最新動向、多岐にわたる実務の数々まで、盛りだくさんに扱う。実際プライベート・エクイティ内で、投資をすると決めて実行しEXITするまでの間に、どんな検討や議論が展開されるのか。以前受講したVC&PEやM&Aの授業とはまた一味違う角度から疑似体験できることは、理解を体に沁みこませる良い場です。

○ Wine Industry:
こちらはOffの話。毎回異なるゲストスピーカーが来て、プレゼン&質疑応答をしながら、とにかく飲む、飲む、飲む。1回の授業内でグラス5-6杯はテイスティングする。全14回の授業で受講料$125を追加で払ったのですが、お店で頼むとグラス1杯最低$7はするだろうワインが5-6杯出てくるので、元は取れます。基本、3杯目くらいからは酔っ払ってしまって、味も講義内容もテキトーに、ただただ楽しい雰囲気が漂っている(私だけの感想かもしれません)。とはいえ、2時間の授業内では、定量データと経験、慣習、文化に基づく講演もキチンと行われ、1つの産業内における様々な経営模様が垣間見れます。すでに普段の生活向けに目鱗な話がいくつもあり、私自身、ワインの買い方、楽しみ方が変わりました。毎週木曜日夜ということで、ネットワーキングにも最適。そして、余ったワインは持って帰って良いので、極力妻にお土産として持ち帰り、その日学んだ内容をその場で共有する楽しみもあります。
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結局、こうして中国語とインターンを除き、基本的に週休5日を遵守できました。そして、(4)の2つの授業を除き、各授業への予復習は1時間で打ち切り、基本的に授業の時間内ですべて理解しよう(それ以上やるのは趣味)、というスタンスです。


最後に、こうして、全体を通して眺めてみた感想を並べてみます。
○ 教授の熱意は授業決定の主要因: 今回履修した授業と、落とした授業との差は、内容そのものよりも、教授がどれだけ真剣に教えようとしているか、迫力があるかどうか、のほうが大きい気がしました。今の時代、色のついていない公開可能な情報だけなら、ネット上に幾らでもあふれています。従って、そもそも世の中に公開されない情報を秘める方々との議論から何を読み取り、それらの情報にどのように色がつき、何を自分に刻み込むか、がより重要。そのきっかけに、教授が火をつけてくれるかどうか、周りの友人たちが油を注いでくれるかどうか、が、わざわざ大学院に来て学ぶ意味。そして、私自身がどんな人と接する時にも、この熱意を持って真剣に話すという点は気をつけよう、と改めて感じました。

○ 授業選択の自由度は甚大: グロス(注1)で考えると、前学期までに51単位分取っていたが、今学期17単位分追加することになり、合計68単位分(ネットで63単位分)受講して卒業することになります。一方、MBA卒業に必要な単位は実はネット51単位で良く、ネット52単位以上取る人は、全体の2-3割だそうです。ここから言えるのは、私費留学生の貧乏性(苦笑)ということの他に、
 - "MBA"の範囲はとてつもなく広い: これだけ一杯取ろうとしているのに、まだまだ取り足りていない授業がありすぎるのがMBAの講座のラインナップ。同じMBAでも、人によって学んでいるものは改めて全然違うと思いました。裏を返せば、結局"MBA"という"資格"は必修授業によりのみ担保される。こう考えると、MBAの"資格"としての価値はそんなに高くないのは当たり前で、だからこそ時間と場所を買って実際に何を得たのかが重要なのでしょう。
 - Haasでラッキー: 他の大学では、卒業単位以上受講すると、1単位につき$1,500取られるところもあるらしい。私は17単位超過しているので、こんな受講の仕方では、$1,500*17=$25,500(約230万円)追加で取られるところだった。Haasは何単位超過しても無料でいいので、ラッキーです。

○ 仕事復帰に向け心境が変化: 午前中は中国語が毎日8-9am(+水曜10:30-11amの補講)のみ。他の授業は月と水の午後2pm以降にすべて集中させたので、インターンが暇な時は時間に融通が利きます。こうすると、毎日中国語直後に欠かさずゴルフに行くモチベーションが出る、など、いろいろやりたいことが出てきました。しかし、その中で一番大きな変化は、バークレーに来て以来全く弾く気を失っていたピアノを再開させようと思ったこと。恐らく卒業後仕事に戻ってからは、忙しくなり夜中に1日5分ピアノを弾くくらいの趣味しかなくなるだろう、ということを肌で感じているのか、また最近徐々に弾きはじめるモチベーションが出てきたのは、面白い変化です。


(注1) 卒業必要単位へ換算した場合に、単位数が割り引かれる授業を、割引前で考えたものをグロス、割引後をネットとした。例えば、中国語は5単位だが、学部初級レベルなので卒業時には3単位に換算。このとき、グロスは5単位、ネットは3単位の意味。
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by golden_bear | 2010-02-04 19:04 | 学業

キャリアチェンジャーの最終学期考(前編):興味の無いものこそやる

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1月中旬からもうかれこれ3週間毎日続いていたバークレーのぐずついた天気も、ようやく回復に向かい、晴れ間と共に満開の花々が見え始めました。授業も昨日から3週目に入り、もう卒業へのカウントダウンが始まっています。

この、2年制MBAの最後の半年の使い方は、人によって本当に様々です。ある欧州MBAの教授が来日時に「MBAは1年だと短すぎ、2年だと長すぎ。学期がずれてしまうデメリットがあっても、1年半くらいが丁度良い」と言っていました。確かに大学経営の立場では、1年では必修を超詰め込んでその上で無理やり選択科目も就職活動もやる。効率的とはいえ、引越し等の手間を考えても、学習効果と学生の満足度を上げるのは共に大変かもしれません。逆に2年間は必修には長すぎるので、学習効果と満足度上昇には、選択科目を多く用意する必要が生じる。この点、Haasは1学年240人に対して70種類以上の講座があって、よく経営成り立っているな、とありがたくも心配にもなります。
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このある意味冗長かもしれない期間、学生はどう動くのか。まず、最終学期の大変さは、前学期までの取得単位・成績の状況や、次の進路が完全に決定しているかどうかで大きく変わるのは、日本の大学生と同様です。ただ、次の進路を確定している人々でさえ、「1日でも早く仕事に戻って勘を取り戻したい」という方、「1日でも帰還を遅らせて学生生活を楽しみたい」という方で、方針が全く逆。その達成の手段も、授業だけでも、少数精鋭で厳しいものを取る人、楽目のものを多く取る人、自分でプロジェクト作って単位にする人、とにかく授業を取らない人など、様々です。そして、授業以外では、大学にすら行かないでバイト・インターン中心の生活にする人もいれば、芸術・ゴルフなど自分の趣味を極めるために使う人もいます。

このように非常に自由度が高い中、私自身は、前回の記事春学期開講と1/2定年記念日:大方針と授業選択の様子で当時取得予定の授業を仮説的に書きました。しかし、実際に2週間過ごしながら考えて、結局多少変わりました。これは、もちろん幾つか受けた授業が予想と違ったこともありますが、一番の要因は、実際に最終学期に入って、「私はキャリアチェンジをしなければならないのだ」、ということ、と、その意味を、改めて意識したからです。

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まず、第1に意識したのは、柔軟に構えてどんな事態にも動じないこと。特に不況下では、様々な理由で卒業直前にでも次の進路を変更した/せざるを得なかった方が結構いるので、それに対応できることです。

第2に意識したのは、近い将来何が起こった場合でも、「業界」、「業種」、「地域」のうち、卒業直後かそう遠くない未来に、必ず2つを変える道を選択するだろう、ということ。一般的に、わざわざMBAにまで来て転職するからには、多くの方がどれか1つか2つを変えることにするようです。その選び方は様々ですが、私の場合、前職の「業種」に戻ることは恐らく無い。そして、自分のやりたいこと&過去の実績にMBAの2年をプラスしたこと、が、人類や社会の需要にどのようにマッチするのか、、、直近に対しては今までの就職活動やインターンを通じて、そして長期的にはここ数年間の経験(とくにザンビアで考えたことが大きい)を通して、ある程度見えてきました。それは、この枠組みで語った場合、「業界」を同じにするなら日本以外に行くべきだし、逆に日本なら「業界」を変える必要がある、ということでした。
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つまり、「業種+地域」の変更、あるいは、「業種+業界」の変更。これが、短期的にも中長期的にもどういう形かわからないが、間違いなく起こるor自分から起こす。こう考え、授業の選択、及び、受講の仕方が、下記の4つの方針に基づくことになりました。

(1) 自発的にやりたくない、が、必要とされているものを取る:
よく、「今しかできないことをやりなさい」、とは言われますが、上記のようなキャリアチェンジをする人にとっては、多分これ。興味があるものなら、実務でやらざるを得ないときに本読んだりして、多分何とかできるので、授業を取る意味は無い。なので、興味が無いが必要な授業を取るべき。

(2) 自力でできないものはやらない、でも、できるようにする:
MBAを取って転職先にズカズカ乗り込む、というのは、数年実務経験がある生え抜きの人と、対等な仕事ができなければならない、ということ。死に物狂いで頑張る、というのは大前提だけど、幾ら時間があっても全部自分じゃできるわけ無い。できるようになるまで頑張っちゃだめ。ただ、他人にお願いできるくらい、わかってるorわかってなくても何とかできる必要はある

(3) OnとOffをはっきりさせ、頭の回転の瞬発力を上げる:
勉強以外にもやりたいことはいっぱいあるため、とりあえずOffの時間は先に確保してしまう。その上で、Onの時間に無理やり詰め込めば、三十路過ぎてても頭の回転速くなってくれないかな(という淡い期待)

(4) 中長期的な視点で思考回路の幅&深さを今一度棚卸しする:
(1)~(3)だけだと、なんか詰め込みの専門学校みたいで、それこそ通信教育でも出来てしまう。せっかくのこの最高の気候・環境を生かして、授業・授業以外にも、自由に飛んだ発想を楽しみたい。


というわけで、授業&スケジュールを選んでしまったので、あとは目一杯楽しんでやるのみ。具体的に何をどうスケジュールしたかは、次の記事に回します。(今PCの状態がとても悪く、OSの再インストールをするので、しばらくアップが遅れるかもしれません。)
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by golden_bear | 2010-02-01 20:36 | 学業

春学期開講と1/2定年記念日:大方針と授業選択の様子

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(1月17日(日)午後4時、バークレーの裏山Grizzly Peakより撮影)

バークレーはここ最近、豪雨やあられなど、毎日異常なほどぐずついた天気が続いています。気温も最近は最低気温が10度を割る日が多いです。そんな中、本日、いよいよ最終学期が開講しました。そしてこの日は、私の32歳の誕生日から丁度丸6ヶ月が経ち、32.5歳を迎えた日。65歳定年と考えた場合の折り返し日でもありました。

そんなわけで、仕事人生の後半にさしかかるにあたり、その最初に与えられたこの貴重な4ヶ月間の"Paid Vacation"(注1)。学生最後の猶予を如何に過ごそうか、冬休み中何度か考えていたのですが、決まったことは、月並みながら下記の大方針のみ:

○ 卒業後の32年間に備えて、「心・技・体」をリフレッシュする
- 今しか出来ないこと、及び、卒業後の第1歩&32年間ずっと通して考えること、に向けて今準備できること、のみを実行する
- 特に、家族とのんびり過ごす時間を増やし、興味の向くままに自然にいろんなことができるように、ゆとりを持って予定を空ける
- 具体的には、週休5日を目指す:中国語を除き、授業は基本的に月曜水曜の2日間に集中

最近の天気のように、のらりくらりとしたスタートですが、下記に現状の授業選択の状況を記してみます。実際に何を取ったかは2月1日に決まります。ちなみに、Haasで春学期に選べる授業のリストはここで見ることが出来ます。MBAのうち必修授業を除いて、約70個のクラスから選択可能です。これに加えて、UC Berkeley全体から授業を取ることも可能(一覧はここで見れます)で、私が取っている語学もそうですが、法律学、政治経済学、情報工学などを履修している人も結構います。一学年240人という小規模にして、この機会の多さは嬉しいところです。

(受講すると決めた授業)
・ Chinese 1B (月-金、8-9am): 秋学期のChinese 1Aの続き。基本的なスタイルは変わらないが、特に聴く・話すを重視して、より様々な場面の中国語を身につけていく。本日1回目を受けた感じでは、先生が変わり、前学期よりさらに厳しくなった印象。

・ Managing Innovation (月: 2-4pm): "Open Innovation"の著者H.Chesbrough教授による、イノベーション論。彼は他に2つ授業を持っているが、恐らくこれが一番イノベーションを網羅的に扱っている、人気授業。Haasに来る前は、Haasではイノベーションを一杯勉強しようと思っていたが、実際来てみて、ビジネス&学問の側面から大上段に構えて語ったものを聴くよりは、自らシリコンバレーの内側に飛び込み様々な話を断片でも大量に拾った方が面白い、と思うようになった。従って、この系統の授業はあまり選んでこなかったが、今までに拾ってきたものをまとめて昇華させるため、この大御所の授業を一発MBAの締めに取ることに。

・ Managerial Accounting (水: 2-4pm): いわゆる管理会計。本で勉強できるといえばその通りだが、Udpa教授という個人的にとてもつぼに嵌った面白い教授が、米国&IFRS基準双方に対応して教えてくれる、貴重な機会。

・ International Finance (水: 4-6pm): 前学期のCorporate Financeで学んだ内容の一つ一つが、国境をまたいだ時にどうなるか、というトピックを網羅的に扱う。教授は新しい人で未知数だが、今この内容にとても興味があるため、最悪教科書で自習するつもりで受講を決定。

・ Private Equity: A Focus on Leveraged Buyouts (日: 8am-5pm x 2日間): 日曜日を丸2日潰して、要は「ハゲタカ」の小説や映画の、実務に相当する部分を演習で行いつつ、今後この業界で何が起こるかを議論する。たった丸2日で何が出来るようになるとも思えないが、生徒からの評判は良いので、昨年消化不良だったM&Aの授業の学びを、ここで少しでも補完したい。


(受講するかどうか迷っている授業)
・ Designing Financial Models that Work (月 4-6pm、春学期前半のみ): 誰が見ても使っても分かりやすく間違えないようなエクセルの表を作る、という、それだけに特化した授業。こんなものMBAでやることか、とも思うが、エクセルという言葉を取っ払って、「何も知らない他人にデータを最も分かりやすく伝達する」方法論を学ぶ、と考えれば、何か本質的なものが得られるのかもしれない。実際に過去の受講生から「感動した」というコメントが多いのと、時間が丁度良いので、恐らく受講するでしょう。

・ Wine Industry (木 6-8pm): 毎週木曜日の夜にワイン業界関係者(ワイナリー(畑・醸造)の人以外にも、流通関係や一流レストランなどなど多岐に亘る)の人を呼び、ワイン片手に業界知識やテイスティング・スキルを上げる授業。こういう遊び(スピーカーシリーズ)系の授業は2単位までしか卒業単位(注2)に考慮されないのに、既に2単位取ってしまい単位換算されないのと、このためだけに木曜夜に大学に行く意味があるかどうか、1回目を受けて決める予定。

・ Investment (月 6-9:30pm): 金融工学を元に、株・保険・不動産等の各業界でどのように投資が行われているか、理論と実践を学ぶ。しかしとても評判は悪い。実際に投資家になった卒業生ですら、「この授業で習う理論は難しすぎて、現実にはごく一部のヘッジファンド位しか使っていないと思う。とても大変で取ったら失敗する」、というくらい、不人気で負荷も甚大な授業とのことだが、行動ファイナンスを本で読んだ上で、こちらを授業で受ければ、投資家という生き物がどういう行動原理で動くのか、理論的に理解できるのでは、と考えてもいる。今年から教授が変わったので、おっかなびっくり第1回目を受けてみて判断したい。


(受講できなかった授業)
・ Pricing (月・水 9:30-11:00): マーケティングの一要素でしかない価格決定のみを徹底的に扱う授業。確かに価格決定こそがビジネスをビジネスたらしめる(法・政治・社会・心理学などの世界で価格のみを徹底して扱うことは通常無い)し、この魑魅魍魎の世界が本当にある程度でも理論にできるのであれば、その理論・考え方は今後の人生においてもとても有益だろうと思い、ビッド時に持分1000ポイント中525ポイントを投入。しかし、過去の受講生全員が薦めるほど評判が良いこの授業、今年は666ポイントが足切りラインとなり、敢え無く受講できず残念。


(受講をやめた授業)
・ Negotiations and Conflict Resolution (火&木、2-3:30pm): 交渉術の演習を毎回シミュレーションで行う。前学期取ろうとしてやめてわざわざ今学期に回したが、前学期受講した友人数人の感想が、「楽しいし、予復習もいらないけど、所詮練習。非ネイティブなら英語の練習には良いと思う」という感じ。これを聞き、それなら前職でやったことのあるトレーニングと大して変わらないと思い、前学期なら取ったけど、学生最後の今学期にわざわざこのために火曜と木曜を潰すのは勿体無いと感じ、結局取らないことに。

・ Entrepreneurship (月 6-9:30pmまたは木 8-11am): 看板授業であり、前々からこの知識が無くて失敗したな、と思うことは数あれど、そんなこんなでこの授業に関連する授業を幾つか取るうちに、大体何やるかがわかってしまった。そして、木曜は中国語と被るし、月曜夜は教授が変わってしまい評判も悪い。ということで、これも結局却下することに。

・ Hedge Funds (火 4-6pm): 毎回ヘッジファンドの人を呼び、手法やどういう人・行動原理で動いているのか、を学ぶ授業。冬休みに関連本を2冊ほど読んで、それで良いや、という気になった。


今学期火曜と木曜を空けるために「受講をやめた授業」の上2つを見る限り、何事も後回しにすると結局一生できないんだな、と改めて感じざるを得ないです。まあ、前を向いて生きて行きたいと思います。

そんなこんなで、今後しばらくは、授業選択が最終決定する2月1日まで、たまっていた昨年夏のIBD(International Business Development)/ザンビア関連の記事を少しずつアップしていきます。今後もどうぞ宜しくお願いします。



(注1) 通常の英語では「有給休暇」の意味。ただ、米国人の友人たちと、MBA最終学期というある意味「金を払って得た休暇」をどう過ごすかの話をしてたら、その状態も英語では"Paid Vacation"だろう、ということになった。本当かどうかは知りません。

(注2) 卒業に最低必要である単位の51単位はほぼクリアしている(前学期までに既に46単位取り、今学期中国語が終わるだけでも6単位増え52単位に)。が、留学生は各学期最低8単位以上取ることが義務となっており、あまり少なくしすぎると、もし何かで不可がついたときに卒業不能となってしまうリスクがある。
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by golden_bear | 2010-01-19 22:27 | 学業


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