A Golden Bearの足跡 |
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一昨日、スピーチの授業の最終回があり、早くも1つ目の課目を修了したことになります。全5回ととても短い授業でしたが、周りの仲間に恵まれたおかげで、自分にとっては看板授業の1つになりうる濃い授業だったので、内容を紹介します。
まず授業の主要目的は、「威厳のあるスピーチができるようになること」。これに付随して、 - 「相手を説得するためのスピーチを創造し、演じられるようになること」 - 「批判的に聞く力を身につけ、相手を育てるスキルを身につけること」 - 「リスクを取り、自分にしかない独自の声を身につけること」 となっています。つまり、大統領候補のような演説を目指せ、と。 大学の基本方針で、Confidence without attitude(奥ゆかしく自信を持とう)と言っているそばから、随分アグレッシブな授業だなあ、と感じていると、最初の授業で早速 「このクラスの中で起こったこと、怒り、憎しみ、悲しみなどは、一切クラスの外に持ち出さないこと。」 との注意書き。全員で同意する羽目に。 進め方は、まず最初1時間はクラス全員で教授の講義を聴き、残り2時間で10人ずつに分かれてお互いスピーチを実演し駄目出しをし合う、という2部構成。最初の講義では、その日の学習内容を、15年以上のキャリアがあるベテラン教授が、60分1本勝負で威厳たっぷりにスピーチの演じる形で伝えます。この教授、白髪に黒いサングラス、スーツに派手なネクタイと、完全に西海岸とはかけ離れた格好で登場し、時折ユーモアを交えながらも基本的には大声で短く言い切り、沈黙を作る、というスタイルなので、毎回極道映画を見ているような気分になります。 また、たまにゲストスピーカーがスピーチをすることがあります。一度、学長が来て”どうやってHaasを良くするか”という題目の5分間のスピーチをした際には、学生の方から - 「あなたの構成としゃべり方では、どこが一番強調されているのか分からない」 - 「その内容はどのビジネススクールでも言えるので、独自性が無い」 などと、一応うちで一番偉い人なのに容赦なく厳しい意見が出まくって、かわいそうでした。 次にメインの2時間演習ですが、小部屋に分かれた10人を、2年生の指導役1人がまとめ役になって仕切る、という形で進みます。演習内容は毎回異なり、下記のようになっていました。 ・ 第1回 1分で考え2分で説明する ・ 第2回 3分間で、聴衆を自分のアイデア(現実に実現できるものに限る)に投資させる ・ 第3回 ディベート:2人組にあらかじめ題目が与えられている。授業で、コイントスで賛成か反対かどちらかの立場が決められ、1分後に相手を説得するスピーチ2分間を開始。お互いの質疑応答を経て、最後に意見をまとめ、どちらの意見が勝ったか聴衆が投票する。 ・ 第4回 4分以内で、物議を醸す内容をスピーチし聴衆の説得を試みた後、2分間の質疑応答に耐える。 ・ 第5回 第4回の質疑応答を反映し、6分以内で物議を醸す内容をスピーチし説得する 我々のチームは偶然にも、男性側は私の他には、クラスの中でもヤンキーという言葉が格別良く似合う活発なアメリカ人大男4人組と、イスラエル人2人、女性はアメリカ人2人(インド系&中国系)と、タイ人1人、更に2年生の指導役がユダヤ系イギリス人と、特に男性が非常に強力なメンバーだったために、非常に厳しくも楽しい議論となりました。また、この授業をとても気に入った何人かのメンバーで、授業の前の日や当日朝早く集まって30分練習したりすることになり、本番では成功したり失敗したりしながらも皆成長する軌跡が見れたことは、とても励みになりました。 第1回は、くじ引きで引いたお題2つのうち、1つを選んだあと、1分で考え2分で説明。TOEFLのスピーキング試験を思い出す。私の質問は、 - 「あなたが一番苦手なものと、その理由を説明せよ」 - 「もしあなたが世界平和を推進するなら、どうやるか」 TOEFLと違って、最初前者を選ぼうとして途中で後者に変えたため、準備不足で超緊張する。 すると、「視点、手の位置、トーンが不安定になる」、というフィードバックを頂き、大変参考になる。そういえば、前職で見習いの頃上司に「緊張というのは、消せるはずだ。どうやったら消せるか、問題解決して実践しろ」と言われたことを思い出し、まだまだ出来てないなと感じました。 第2回は、大学時代の研究活動が最近ついにビジネスになったので、その市場を北米に拡げるという内容でスピーチ。このときに受けたフィードバックは、 - 「単位はポンド、インチに直せ」 - 「聞いててネガティブになる内容(否定表現、過去に”苦労した”話)は内容に盛り込むな」 - 「顧客に夢を見せる部分をもっと強調しろ」 、、、いかにもアメリカらしいです。 第3回、私に与えられたお題は、「政府は労働時間を40時間に制限すべきである」。イスラエル人と対決。コイントスの結果、私は賛成側。個人、企業、政府それぞれにメリットがある上、実現可能、という趣旨で論じると、流石は法務部出身のイスラエル人。3点それぞれに、「これは私の論調を強めてくれてありがとう」という形で、絶対ロジックでは譲らない。こちらも彼の論理の飛躍と無理を突き詰めていい線行ったと思ったが、結果は1対7で負けました。 負けた原因を聞くと、 - 「最後の最後にフランス政府の例を出したが、そこで”実験中”という表現を使ったため、逆にまだ出来ないんだ、という気持ちにさせられた。それを出さなければ勝ってた。また、実際にフランスは35時間の政策に失敗して撤回しているはず。」 - 「途中で相手の弱点を突くときに、相手の反論が弱いにもかかわらず、頷いたり、Yesと行ったりしてすぐ次の質問に移ったのが、勿体無かった」 前者は、私の前にディベートをした他のグループが皆、事実に基づく議論を効果的にしていたので、急遽私も聞きかじった話を元に付け足しで述べてみた結果。事実の調査不足と準備不足は仇になることが、見事に証明されました。後者は、Noと言えない日本人の気質のせいかな、と思っていましたが、次のディベートで、それまで大差で負けていたタイ人の女性が、最後に発した「アウトソースは品質が問題になる」という意見に相手のアメリカ人の大男が一瞬同調したのを見逃さず、そこから一気に「品質、品質」と押し捲って逆転勝ちしたのを見て、私も頑張らんといかんなと反省。 第4回&第5回は、物議を醸す議論、ということで、他人の意見を聞いて、質問することもとても楽しい。例えば、 - 「性犯罪者隔離施設は廃止すべきだ」 - 「MBAは意味が無い」 - 「地元産の食品以外食べるな」 私は事前に指導役から「あなたの専門知識が通じない、文化が異なる部分で、アメリカ人が嫌がることにYesと言わせろ」、という指示を受けていたので、妻とも相談した結果、 - 「チップを廃止しろ」 という題に。ここまで慣れてくると、演技も恥ずかしくなくなってくるので、 「せっかくアメリカのビジネスを勉強しに来たのに、チップを払うという差別的で不透明で世の中の為にならない前近代的な行為は昨今の金融危機以上に残念で心が痛い。日本やスターバックスでは払わなくてもサービスは良いし、ここはバークレーだから払わずにでも生きていける。時代の潮流からも徐々に廃止の動きにあり、お前らわざわざMBAまで取りに来た若者だから評判なんか気にせず先陣を切って勇敢になれ、店に対してイノベーションを起こせ、これでもまだ不安なやつは来年の日本ツアーに参加しろ!」 といった内容で押し切ったところ、威厳はともかく、アメリカ人の笑いのつぼにははまったようです。余談ですが、このスピーチでは毎回持ち回りでお菓子と飲み物を持ってくることになっていて、私の当番だったので、妻にメロンパンを焼いてもらい、皆に振舞いました。これを用いて、 「今メロンパンを食べて、ありがとう、と言った人は、本当は私にではなく私の妻に対して言いたいのだと思う。だけど、直接言うことはできない。これと同じで、チップもウェイターしか受け取れないのは差別の一つだ」という話も中に入れたのですが、私の英語力では比喩が難しすぎたのか、あまり伝わらなかったようです。 他の人では - 「死刑がいかに酷いか」を生々しく語ったイスラエル人 - 「募金しないと世界の命が危ない」と悲痛な声で語ったタイ人 のスピーチは、全員の心を打つ素晴らしいものでした。 というわけで、全5回と短いのが残念でしたが、 - フィードバックを受けることで毎回の進歩を肌で感じられたこと - しゃべることに対するリスクを取れるようになったこと の意味で、私にとっては非常にありがたい授業でした。 これで1単位。卒業までに51単位必要なので、この51倍成長できるように引き続き楽しんで頑張りたいと思います。
by golden_bear
| 2008-10-09 20:46
| 学業
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