A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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卒業半年後からのMBA振り返り(後編)

前回記事「卒業半年後からのMBA振り返り(前編)」の続きです。前回は下記(1)-(3)について書きましたので、今回は(4)‐(6)について記載します。

(1) 前提
(2) MBAに行って良かった点
(3) MBAに行って大変になった点
(4) 良し悪しはわからないが、MBAに行ったことで具体的に変わった点
(5) MBAに行っても大して変わらなかった点
(6) 学びその他雑感

(4) 良し悪しはわからないが、MBAに行ったことで具体的に変わった点
MBAを取得して変わったことを一言でいうと「外部環境」ですが、具体的に3点ほど書いておきます。

・ より高度な組織問題に自然に直面するようになる
これは卒業後に会った何人かの同期MBAホルダーの人々が軒並み経験していることのようですが、転職した人はもちろん、社費派遣で元の会社に戻った人も以前とは違う部門への配属となることが多いようです。そして、全く知らない上司や業務の中で、勉強しながら新たに社内や顧客との関係を続ける中で、大変な思いをすることは少なくないようです。

私のケースでも、研修後最初の数週間で早くもいくつかの組織的な課題に板ばさみになりました。敢えて大げさな表現をしてみると、2週目で自分自身すぐに転職せざるを得ないリスクを背負うピンチを招きました。さらにその翌週、私の裁量次第で部下を最悪解雇せざるを得ない判断を行う必要があり、その2週間後にはまさに倫理の授業で学んだような「利益面or倫理面」のジレンマに陥る。最近も以前の自分あるいは普通に考えたらYesというだろうという状況において、断固Noと言ったりして、よくまあ入社数か月でこんなこと言うなあ、と自分でも驚いています。偶然の要素も多いとはいえ、まだ業務も完全にわからない新入社員の状況でこんなに政治的な判断をする必要があるのか、と思いますが、これこそまさにMBAホルダーだからこそ経験しなければならない(or昔ならそもそも問題と気づかず突入し地雷を踏んでいたかもしれない)世界なのだろう、と考えています。

・ 「自分株式会社」という意識の飛躍的向上
上記のようにポリティカルな面で危ない橋を渡らざるを得ないこととも関連していますが、良くも悪くも頼れるのは自分の腕一本。責任は全て自分自身で取る、という意識が格段に向上した/せざるを得ない環境にあると思います。以前は人事制度にしてもキャリアパスにしても、最初に新卒で就職した1社の枠内でしか考えられなかったのですが、今は少なくともMBAの視点、新しい会社の視点の3点から見ることができます。このことは、自分の日々の24時間はじめ、週単位、月単位、四半期単位で何をして生きるか、という自分管理の考え方をより多面的に強固にしますし、その中で仕事と家庭の両立や、仕事が本当に忙しい中でどういう仕事以外の外部イベントに顔を出しておくか、といったすべての判断軸に大きく影響しています。

具体的なアクションとして変わったことは、例えば下記のようなことがあります
-(2)で書いた「どんなに忙しくても、毎日1時間、絶対に自分の長期キャリアパスを考える時間を確保すべき」の実践
-(3)で書いた「使える人材かどうかは、入って最初の(3日、1か月、3か月、半年、1年半)も経てば、ばれてしまう」に対して、自分でどういうPDCAを回すか
-普段からヘッドハンターとの関係を密に構築しておく
-お金の使い方:以前に比べ例えば、自腹の交際費が大幅に上昇。また、移動しやすい場所を得るための家賃、書籍等情報料、保険や健康関連の出費が増大する一方、これらに関係ない費用は低減

一見偉そうなことが羅列されていますが、よく欧米人のエグゼクティブがセラピストを雇う理由がわかりつつある、と感じるとっても窮屈な生き方です。とはいえ、今の環境ではこうした方がしないより良く、これは不可逆変化ですので、良し悪しはともかく続けてみたいと考えています。

・ Haas/MBAグローバル・ネットワークの構成員に
敢えて(2)の「良い点」にも分類した内容ですが、(4)の「変化」にも改めて定義したいと感じています。その理由は、まず私自身まだネットワークを最大限には有効活用できていないと感じること。「MBAをとっても日本人だけで固まっていては何にもならない」、とよく言われるように、単にMBAを持っていればネットワークができる、というのは大嘘です。既に(2)で書いたような具体例が毎月あるにしても、最大限広げているか、利用しているか、ネットワークに対して貢献しているか、という点で、私自身まだまだ足りないなあ、と思うことは多いです。

次に使い方を間違えると面倒な問題を抱える可能性があること。もちろんMBAのネットワークはとても閉じた世界ですが、どんなネットワークにもあるように、外部からアクセスしたい人はいくらでもいますし、内部で利害関係が生じることもありえます。良くも悪くもネットワークに付きまとう諸事情の管理は、半ば強制的な責任・義務のようにのしかかってくるものだなあ、と思うことがあります。


(5) MBAに行っても大して変わらなかった点
極論すると大して変わらない点は「私自身」です。(4)で変わった点を「外部環境」と定義したこととは対照的です。ここでは、3つの例で書いておきます。

・ MBA以前からの人生の積み上げの重要性
新しい仕事について、職種は完全に変わったのですが、担当業界や仕事のやり方は、前職での経験、及び、MBAにいたシリコンバレーにおける学びが、無意識に相当反映されてしまいます。簡単な例では、現在東京オフィス中に直近2年ベイエリアに住んでいた人は私しか居ない。従って、ベイエリア/シリコンバレーで学んだことが生かせる分野の仕事が自然と回ってきて、その分野であればたとえ未経験でも自然とリーダーシップを取れる、といったことが普通に起こります。他にもこのような事例は枚挙に暇がなく、結局、MBAをもってしても過去と将来は切り離せず、全部つながっているようなのです。

・ 箔
MBAという肩書自体には何も意味がない、というのは本当のようです。例えば、名刺にMBAが書かれることはないし、今まで顧客との会話上MBAホルダーであることが話題になったのは、ある接待で部屋の中にいた全員がMBAホルダーだった時のただ1回だけだったからです。これは、話題のレベルとしては「出身地どこ?」と同じ程度にしか価値がないので、全然費用対効果がありません。さらに、単にMBAというだけでは本来ポテンシャルとして増えるネットワークも全然増えないです。やはり前章(4)で書いた通り、MBAの2年間での「共有体験」や「ネットワークの生かし方の経験」には価値があるのですが、MBAそのものにはあまり価値はない、と今のところ考えています。

・ 知識・能力
知識そのものも(2)で書いた通り入門編としては必要十分なのですが、それ以上難しいことは現場とかけ離れてしまうので、直接仕事で役に立つことはあまりないと思います。上で書いたようなシリコンバレーの知識も、卒業後半年は使えたものの、もはや陳腐化が始まっています。また、この前日銀の研究所から米国の経済学修士(/Economics 。経営学修士/MBAではない)に留学した友人と議論した時、彼のEconomicsの知識と実践力はMBAで習うレベルをはるかに超越しており、専門知識を深めて仕事に生かしたいならMBAではなく他の専門学部で勉強すべきとの理解を一層強くしました。

残念ながら英語力も日本に帰って来たら一瞬で衰えました。ただ、発音の矯正等はあきらめるとはいえ、知識にしても英語にしても、それらをMBAの2年間で使う場数を踏んだことは、確実に生きています。これからもゴルフ同様に一生継続して場数を踏み続けることで、少なくとも生き抜くことはできるのではないか、という実感はあります。


(6) 学びその他雑感
最後に現時点で感じていることを、(2)-(5)のまとめやそこに分類できなかったことも含め、ざっくばらんに箇条書きしてみます
・ (2)から(5)を要約すると、今のところMBAで
― 得られたものは、使える判断軸・転職準備に必要十分な知識・学びの方法・アジア人としてのネットワーク形成のマインドセットと実行力
― 大変になるのは、置かれる境遇・学問と現実世界とのギャップ・2年の歳月・若さを失う・ゆったり人生になること
― 変わるのは、嫌でも目線を上げさせられる・自己責任を強要される・ネットワークの中に置かれること
― 変わらないのは、自分の過去・箔・知識・能力
・ 多くの人が、授業中では全く役に立つまいと思っていたOB(Organizational Behavior)系の授業は、早速役に立ちまくっている。授業中には「薄い議論だ」と思っていたが、瞬時に様々なことを判断するには、その程度でも十分使いやすい
・ 極論すると、MBAは、最大2年間の履歴書を傷つけずに顧客や上司から離れる権利と、合法的にその土地に学生という肩書で居住できるビザ、そしてその大学という場に集まった人を含む資産に自由にアクセスできる権利、の3つしか提供しない。この3つを、数千万円ではとても買えない凄い価値があるものにできるかどうかは、選んで使う本人次第
・ MBAを取ると決めてしまったからには、MBAにいる間には、MBAという場でなければ得られないものを得られるだけ得ておくべき
・ 結局、MBAを取った後のメリットは確実にあるので、降りかかる大変さや変化を楽しんで生きていくことができるかどうかが重要。それには、そもそも自分にFitするMBAを選べたか、MBAそのものをどれだけ存分に楽しめたか、が重要

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いよいよ次が最終記事。本記事では卒業後半年を振り返りましたが、最終記事では目次のようにMBA時代の2年間を再整理再構築して、完結とさせていただきます。
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by golden_bear | 2010-12-27 00:10 | 全般
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