A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
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卒業半年後からのMBA振り返り(前編)

早くも卒業後7ヶ月が経過、本格的に働き始めてからも3ヶ月半が過ぎてしまいました。必修のマーケティング授業最終講義で書いた、「2年後の自分に送る手紙」がそろそろ家に届いているころなのですが、この前の日本人同窓会で、同期の約半数には届き、私含む残り半数には届いていないことが判明。このいい加減さがバークレーっぽい、と懐かしむ今日この頃です。

上記のマーケティング授業に限らず、卒業後数か月経った時点でMBAの2年間を振り返ることの重要性は、在学中に何度となく警鐘されていた気がします。明示的には、例えばPower and Politics講義の最終レポートでは、「就職3ヵ月後の自分に降りかかる組織力学上の困難を定義し、それに立ち向かう方法」を論ずることが1つの課題でした。教授にも色々な方がいましたが、ご自身の最終講義のスピーチで、卒業後の生き方について何も触れない人は少数派。さらに大学のスタッフの方まで、「卒業後3ヶ月以内に就職した学生の比率」が各種雑誌によるMBAランキングの評価指標になっていたり、大学に寄付金が欲しかったり、などという野暮なことは関係なしに、在学中も卒業後も親身になって様々な相談にのってくれます。

私自身に関しては、この数ヶ月間の間に、周りの環境、自分自身のスキル、諸事に対する感じ方などは、MBA以前の自分とは大きく変わったと感じています。また、思ったより変わっていない点もあり、それもまた面白い点です。MBAブログ内で卒業後について書いている人はあまりいないのですが、自分自身の反省も含め、ざっくばらんな箇条書きの形で、このタイミングで書き残しておこうと思います。MBAで学べることは100人100色であり、あくまでn=1であることから、前提も含めて下記6部構成を取ることにし、前編で(1) - (3)を、後編で(4)-(6)を記します。

(1) 前提
(2) MBAに行って良かった点
(3) MBAに行って大変になった点
(4) 良し悪しはわからないが、MBAに行ったことで具体的に変わった点
(5) MBAに行っても大して変わらなかった点
(6) 学びその他雑感

(1) 前提
バックグラウンド等、(2)-(6)を述べている前提について、最低限の内容を書いておきます

 ・ MBA以前の私
日本生まれ日本育ち。工学系修士卒後、コンサルティング・ファームに5年半勤める。仕事3年目に1年間の米国駐在が初の海外長期滞在経験

 ・ MBA取得の目的
当初は、グローバルビジネスの世界に通用する人材を目指す純粋なスキルアップが目的。しかし最終的に私費留学としたため、2年かけて、次にどんな職業を選ぶべきか、その後30年どう生きるか、をゼロベースでじっくり考えなおす場に

 ・ MBA中の私
このブログそのものですが、印刷すると数百ページになるそうですので、上記目的に照らして簡潔に
  - 1年目「自分探し」: そもそも自分は何が好き/嫌い、何ができる/できない人間かを知るため、敢えて元々興味のなかったことを含めて、極力浅く広くトライ
  - 2年目「自分探し結果の刈り取り、ただし幅広く」
   1.学問では短期的な弱点補強と長期的な興味の追及の2つに均等に重きを置く
   2.グローバルの実戦経験を積むため、各種短期インターンやクラブ活動に(普通1年目の人がやることに)今更力を入れる。
   3.家族の時間と実益を兼ねた趣味として、旅行、ゴルフ、中国語の習得

 ・ MBA後の現在の私
グローバル金融機関の東京事務所勤務。職種については、敢えて定義するのであれば法人営業。


(2) MBAに行って良かった点
MBA中に「良かった~」と思う点は過去様々書いているので、MBA後にMBAに行って良かった点を書いてみます

・ 自分の中でぶれない判断軸が、様々なレイヤーでできたために、迷いや不安なく判断が素早くできるようになった
MBAを経た結果、自分が何をしたいがために、何をしている、何ができる人間なのか、ということが、MBAの人が使う共通言語の概念を持って、8-9割方はブレない形で定義できるようにできました。こんなものまさか定義できるとも思っていなかったので、定義できたことだけでも十分うれしいです。が、さらに副次的に、諸事に対する判断が早くなったことは、明確なメリットになります。

例えば仕事においては、日々自分の業務の中で何をして何をしないか、どこまでは自力で考えてどこからは他人に聞くか、どういう人にはオフィシャルにあるいは裏からコミュニケーションをするか、など、を考えて判断するスピードが飛躍的に上がりました(その成功確率まで上がったかどうかはわからない)。また、日常生活でもお金や時間を何に使って何には使わない、という判断の仕方が、MBA前後で大きく変わった気がします。この点に関しては、私費で2年間無収入だったが金がなくても精神的には裕福、というカリフォルニア生活を経た要因が大きいと思われます。

言い換えると、「想定内が増えて、想定外を楽しめる」ようになりました。授業で様々なケースを解く、日米インターンの経験、ザンビア含めた各種チームワークなどなど、単純に場数をこなしただけでも、全く新しい環境で何が起きてもあまり動じることなく、物事を処理できるようになったと思います。

・ 十分な準備期間をかけて最低限の知識武装を持ったうえで実戦に臨めた
MBA前にもよく「MBAで習うことなんて、実戦では使えないよ」とは言われましたし、授業聞きながら少なくとも前職でやったことあることに関しては「議論が浅いなあ」、「そんなこと学者が言っても現場は動かないだろう」と思ったりしていました。実際、MBAで教えていることは、概念に立ち戻って幅広い人に通じる一般論ですので、個別の実戦で肝となる部分がそぎ落とされている入門編の議論にならざるを得ないことは確かです。しかし、その入門編の包括的な知識は、私が実行したような全く土地勘がない業界への転職に対しては、非常に良い準備となっています。

そもそも、実務で必要な知識は実務で学ぶことが一番。Haasの場合1単位は28時間の授業に相当するのですが、28時間は社会人換算では2日分。授業中に実務と同じことをやっても全く価値がない。従って、極論すると、MBAの授業ではファイナンスであればエンジニアにでもわかる(その逆も然り)レベルまでしかやらない。通常は授業内でそれ以上に深掘る意味はないのです。しかし、そのレベルであっても、様々な授業やゲスト・スピーカーのスピーチ、インターンやケース/ビジネスプランコンペなどのイベントの中で、2年間という長い時間軸の中で視点を多様に変えながら、繰り返し学べるところに価値があるのだと思います。

このような体験を得た後に、入社して数か月経って、MBAで学んだ概念や理論は、その概念・理論のレベルにおいては現場でも全く同じである、直ぐに役立つことにまず驚きました。その上で、実務ではMBAレベルで止まっていては全く付加価値がありませんので、全然深い所まで調べ上げたり計算したりしなければならないものが多い。さらに、現場では最先端の理論は使えないとされていることなども含めて、実戦で新たな学びが継続する楽しい日々とモチベーションに繋がっています。また、実務でどうしても詰まって判断がつかなかったときに、どこかで教授が言っていたことや宿題の中で考えていたことが頭に残っていて、紐解く手掛かりになっていたことが、3か月の間に5-6回はありました。2週間に1回くらいの頻度とはいえ、ほかの経験や論拠のない私にとっては、十分役に立っているといえると思います。

・ 学び方、特に先人の残した言葉からの学びが進化した
例えば、前職で新卒1年目の時に、仕事がとてもできる先輩に、「どんなに忙しくても、毎日1時間、絶対に自分の長期キャリアパスを考える時間を確保し実践すべき」、と言われていた。当時は「何でそんなことをする必要があるのか?やれと言われて1時間も考えるネタが持たない」、と思っていました。が、今は、私自身それを自然と実践してしまっています。

うまく言葉にしづらいのでたとえ話ですみませんが、要は「昔は意味わからず聞き流していたことで、私の場合MBAという場 (and/or転職) を経て初めて、非常に意味を持ってきているものが多い」ということです。中学校の国語の先生に、「この教科書の文章なんて今は全く面白くないだろうけど、多分20歳過ぎたころに読み直すと、涙が出るよ」と言われたのですが、それが仕事・人生バージョンでMBAの2年間のおかげで中学生から20歳になったイメージです。もちろん純文学なんて読まなくても生きていけるのと同様、生きていくために不可欠なものを得たわけではないですが、少なくとも学び方・学べるものを少しだけ超えた生き方・生きれるオプションが変化しより広がったことに関しては、MBAで得たものと考えてよいかと思っています。

・ グローバル社会の一員としての、ネットワークの広がりと深み
MBAで得るものとしてはネットワークが最重要、と考える人が多いようです。私の場合MBAでネットワークは実際にとても広がりましたし、既にその効用を実感するメリット、また単なる繋がりを得るというよりはそれを得て自分の行動がどう変わったかのほうが重要だ、と感じています。具体的に、メリットおよび私の行動が変わった点を書くと、下記のようになります。

- MBAのアラムナイ・イベントが毎月のように発生
例えば9月にはTesla Motorsのアジア支社長が講演会を開催、11月には某企業元支社長の講演会にて直接お話を聞く、さらにMBA出願者向け説明会もあり、プチ・アラムナイパーティーに。12月にクリスマス・ランチ、今後も1月にイベント1つ、3月にJapan Trekの飲み会と、本当に毎月のようにイベントがあり、自分の会いたい方々に会うことが可能です。

- MBA時代の友人が外国から毎月のように訪問
例えば8月末にタイ人のクラスメートが親を連れて訪問、10月にMOTの授業を一緒に取った工学部Ph.Dのご夫妻、11月に韓国人クラスメートなど、これまた毎月のように外国から東京にビジターがあります。このほか当然同期日本人だけで飲むこともあり、一生の仲間と飲む機会には困りません

- 東京でなくアジアに戻ったという実感と動き方: 
グローバルの入社研修で仲良くなった同期MBA入社の中国人が、11月末に香港で結婚式を挙げる、というので、何のためらいもなく有給を消化し妻とともに香港へ。すると、その日たまたま香港には、Haasの1つ上の世代の日本人が1人、2つ上の日本人が2人集結していて、軽いHaas Reunionが裏で開かれていた。これには出席できなかったものの、翌日や翌々日に香港駐在の方々といくつかランチやディナーをセットし、色々な現地の動向を聞けました。

このように、香港で多数の人と会う機会を自分からセットするマインドセットや、実際に気軽に行ってしまう、ということは、MBA以前には起こりえなかったことと思います。


(3) MBAに行って大変になった点
MBAに行って必ずしも幸せになった人ばかりではないことは、様々なレベル・期間の様々な形で見聞きしていたので、ある程度覚悟はできていました。が、まだ本格的に働き始めて3か月半という段階でも、大変だと思うことが多々あります。在校生によく「MBAにいるうちに準備しておくべきことは何」と質問されますが、「これらの大変さを楽しいと思えるためのあらゆる準備」と答えたくなるのが、今の正直な心情です。

・ MBAを経た後の中途の処遇の大変さ
転職プロセス、という視点で考えると、私が経た「業務に移る前に、MBA2年間、インターン、在学中入社前研修、および入社直後にオフィシャルなトレーニングがある」は、単に転職した場合と比較すれば、恐らく最も「転職者に優しい」、「新卒に限りなく近い」部類のものだと思われます。しかし、それでも尚、「中途入社」の厳しさを感じることが多々あります。

組織によって程度の差はあれ、生え抜きが大事にされる、能力・実績の無い人にいきなり良い仕事は回ってこない、といったことは、世界中どこでも一緒と思われます。これらに加えて、MBAを経た、ということだけで、例えば「あなたにはこんな仕事簡単すぎますよね」といった形で、先方の期待値が上がる。(あるいは、例え話で書いたこの言い方は、実務経験ゼロの私にはできないことが分かった上で、敢えてされてしまうこともありえます)。このように、最初はとにかく「お手並み拝見」モードにならざるを得ない。

従って、最初にやることはいわゆる「社内営業」の日々。ある時は思いっきり背伸びして「できます」と言って、徹夜で調べて何とか間に合わせたり、また周りの席の人々や上司・部下に頭を下げまくって色々と教えてもらったり。前職だと30分くらいでできたような作業に3時間かかる位、社内ルールになれない中、またコンプライアンスに関する点など前職と違う点を無意識に間違え頭を下げる日々。

このような下積みを経ても、経験豊富な生え抜きの人々に比べると、実務のスキルレベルが短期で追いつくことはありえない。従って、よく採用側の理由に言われる「MBAの人には生え抜きの人に無いものを持っているから採用する意味がある」から自分に鑑みて、実際にそんなものなかったとしても、そう証明して見せなければ、いい仕事が回ってこない→スキルがつかない、という悪循環にすぐはまってしまいます。「使える人材かどうかは、入って最初の(3日、1か月、3か月、半年、1年半)も経てば、ばれてしまう」(カッコ内は時と場合に応じて言い換え可能)とも言われますが、そのフィルターに照らし合わせてどうなのか、常にラーニング・カーブとタイム・リミットに終われる戦いの日々なのです。

・ MBAで学べることと実業のギャップ
(2)で述べた良かった点の裏返しになりますが、やはり実務上MBAが全然カバーしていない領域について、入社後ゼロから学ばなければならない点は多々あります。全く知らないことに関して、勉強のきっかけがつかめない&スピードが遅いだけならともかく、顧客や他部門、自分の部下をMBAホルダー=管理者としてマネージしなければならない。これは、一発でプロジェクト/会社から外されるリスクを背負う意味でも、とても大変です。

・ 2年分の若さを失う
MBAで2年使ったこと、かつ未経験の他業種に移ったことから、生え抜きでMBAにも行かずに頑張っている人に比べて、職位上は最短距離で来た人に比べて数年分、余分に年を取っていることになります。具体的には、私の直属の部門で1つ職位が上の上司は全員年下だし、2つ上の職位の中にも同年齢の人がいるくらいです。私の場合は、前職時代に年上の部下を指導したりした結果、「もう少し年を取ろうかな」と思って自分で選んだ人生であり、さらにインターンで気が合う人々ということを確認できた上で選択した進路であるため、上司が年下という点はあまり問題にならないです。が、この環境は人によってはつらいと感じる人もいるかもしれません。

逆に想定と違ったのは、体力面。MBAで丸2年休憩を取って多少若返ったとはいえ、実際に若者に混じって毎晩夜遅くまで働くと、体力的なハンデはあるのだなあ、と改めて実感。やり方そのものを考え直さなければ、と真剣に頭をフル回転させる日々です。

・ ゆっくりした人生にならざるを得ない
MBA自体は2年間ですが、その準備には最低半年~数年かかります。そして、MBA取得すべてにかかわる出費を貯金しておけば、良いアイデアさえあれば十分起業資金にもなりうるでしょう。私の場合はMBAに行こうと決意して準備を開始したのが2007年1月、この文章を書いているのが2010年12月ですので、丸4年の時間を経ているわけです。

この2007年‐2010年の4年間、世の中はリーマンショックなど大幅な変化がありましたが、元同僚や友人達を見渡しても、軒並み、昇進・転職・起業のうちどれか1つは経験しています。また結婚や出産はもちろん、ゴルフはじめ様々な趣味を極めていたり、新興国や中東などで活躍していたり、など、「もしMBAに行っていたら起こりえなかった」人生のステップを着々と進めている人々も一杯います。

このような友人たちに鑑みると、私の取った「MBAを取得し、MBAを生かしたMBAならではの転職を実行」というのは、現時点の時間軸ではスローペースと考えざるを得ないと思います。実際いろんな方に、「いろんな経験を広く浅く積んでいるようだけど、結局何をやりたいの」と聞かれますし、それに対する答えがある程度あるとはいえ100%明確になっているわけではない。こんな状態では、極端な話、新卒で投資銀行・コンサル・プライベートエクイティファンドなどのプロフェッショナル・ファームに入り脇目も振らずに前だけを見てパートナーに昇進した30代前半の人々、あるいは20代で起業して今まさに一刻も早く会社を大きくしようと頑張っている人々から見ると、なんとスローな人生か、と思われざるを得ないでしょう。

競争社会の中で時間は後戻りできない以上、このゆっくりさがハンデになってしまうならそれを克服し、むしろメリットとなる土俵を自分で作る生き方を選ぶ必要がある、という意味での大変さを感じます。

(後編に続く)
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by golden_bear | 2010-12-26 23:59 | 全般
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