A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
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ザンビア人の生活とカルチャーショック - IBD体験記(15)

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前回載せ忘れた、ザンビアと日本との関係を表す看板の写真を1枚入れさせていただきました。今回は、ザンビアの人の生活状況について、現場で初めて見たことや驚いたことを中心に、社会インフラ(スペック/運用)、生活、教育、文化の順で、箇条書きの形で書き並べて見ました。基本情報として、人口1,300万人弱、ざっくりそのうち8割強が農民、1割強が銅、ニッケル、コバルトといった鉱物資源関係の労働者、残りを公務員や携帯電話含むインフラ、首都や観光地のサービス業といった業種で占めている国です。このうち、鉱物資源関係以外の人々を除いて、30本近いインタビューと3週間の日々の生活の中で、私が見聞きした内容と印象を、記憶を元に書いたものです。細かい点に関しては事実とは異なる可能性もあることを予めご了承ください。

社会インフラ(スペック面)
長いこと植民地だったこともあり、政府や行政が全てイギリス式そのままだそうなので、社会インフラは全てイギリスそのもの、と思っておけば間違いなさそうです(インド・ケニア・南アといった元イギリス植民地に準拠しているものも含む)。都市部では、電気では電源プラグの形は電圧やロンドンと全く変わらないし、車道も右ハンドル左側通行。実際に、都市部の中級ホテルに泊まる分には、食事の質含めてイギリスの中級ホテルの生活と大差なかった気がします。

ちょっと違うのが、電話網。アフリカでは固定電話ではなく携帯の方が普及している、と行く前からよく耳にしていたのですが、実際にその通りでした。固定網は貧弱で、中級ロッジでは、固定電話がそもそも受付以外に無かったり、そこから電話しても国際電話はおろか市外通話も出来ないくらい。一方、携帯電話は車が通る主要道路沿いでありさえすれば、基本的に田舎だろうがどこでも通じる。なお、携帯キャリアとしてはZainというインドの大手Bharti Airtels傘下で中東とアフリカで広くビジネスを展開している所が、ほぼ独占しているようなのですが、都市部では他の業者も2-3見かけました。

インターネットも首都では固定回線ではなくWifiのみが使えるところは、ロッジは勿論、空港やレストランなど結構あります。通信速度も普通のWebページを見る分にはさくさく動いて問題ない。しかし、Skypeが使えなかったり、動画が全く起動しなかったりすることから、スピードは先進国並み(ユーザーに近い部分で使っているルーターなどの機器自体は先進国と変わらない)だが、バックボーンの回線容量が全く追いついていない、という印象です。田舎に行くと金持ちが固定電話のサービスで繋げていたが、ダイアルアップっぽい遅さでした。

銀行はローカルの銀行以外にバークレイズ銀行が入っていて、両替はドルやユーロ、ポンドと現地通貨とでいつでも可能です。利率は、私が見たときには普通預金の利子2%、借りる時は38%と闇金並。話によると、38%でも貸してくれることはほとんどないし、貸したら帰ってくることもほとんどない、のだそうです。

スーパーは、ケニアや南ア資本で富裕層向けには下記のようなものがモールでそろっています。
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こんな感じで、少なくとも冬は気候が良く水も豊富なザンビアでは、表面的には本当にイギリスと大差ない生活が送れます。例えば、ザンビアに駐在しているパキスタン人の友人宅にお邪魔すると、まるで大使館のように厳重な鉄条網と壁の中にて、プールやレクリエーション施設完備の豪華な1戸建てのお屋敷群に住んでいました。
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この、元宗主国の言語はもちろん、インフラや社会システムをそのまま使う、という傾向は、ザンビアだけでなくすべてのアフリカ諸国であるようです。このことからは、最近流行の水ビジネス国際展開において、欧州の元国営のような企業が非常に強い/日本が現状弱い理由の一端を、垣間見ることができます。

社会インフラ(運用面)
一方、イギリス式をそのまま持ち込んで、現地の人に運用させても、100%のサービスの質が発揮されるわけではないことも実感。ガスや水道、風呂、トイレも、私が宿泊した1泊$30程度の中級ロッジでは普通に使えるのですが、
○2日に1度くらい、シャワーの水は出るがお湯が出ない
○3日に1度くらい、夕方頃2-3時間の停電があり、インターネットが使えない(携帯電話が使えないことはあまりなかった)
このようなインフラの質はともかく、働いている人々が上から言われた通りやっているだけで、考えてないような印象があります。例えば、
○政府がかける税金の税率も、全くイギリスと一緒で、例えば所得税に40%: そんなに税金とって何に使うんだろう、という声はよく耳にする
○スーパーの価格表。下記のように、サイズとパッケージと価格に全く一貫性がない
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極めつけは、あるリゾートホテルでのランチ。
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友人が$7のハンバーガー、私が$9のチーズバーガーを頼む。そこから待っても待っても食事が出てこない。待つことなんと90分、、これがハンバーガーだ、と言われて出てきたもの。
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普通にチーズが入ったハンバーガーでおいしそう。私が頼んだチーズバーガーには、さぞやチーズが一杯入っているのか、と想像していて出てきたものを見ると、なんとチーズの量はそのままで、肉が入っていない。すなわち、ハンバーガーから肉だけを取ったものがチーズバーガーで、しかもハンバーガーより$2割高なのです。「そんなわけないだろう、料理か、価格かのどちらかがおかしい」とコックに言っても、「いや、これがチーズバーガーで、この値段だと言われた」、と言われるだけで、埒があかないのであきらめました。

こういうことが起こるたびに、いつもインド人やパキスタン人(ザンビア人同様に英国が元宗主国)のチームメートが、半分笑って半分本気で、「現場のことは、欧米が押し付けずに現場のやり方に任せたほうが一番良い」と、3週間で5-6回は言っていたことが、とても印象に残っています。

生活編
ザンビアでは、国連や外務省のページを見ると、「平均日収が$1に満たない、世界最貧国の1つ」といった表現がなされている。さぞかし貧しい生活なんだろう、と思い、実際都市部のスラムのようなところでは下記の写真のような光景も一杯見られます。
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が、農村部まで行くと、人々の顔は一見皆明るく、全然貧しそうには見えないです。(ちなみに、ちょっと郊外に行くと、道端で何十キロもありそうな道を歩いている人がうじゃうじゃいて、一日の生活の大半が徒歩移動なんだろう。それでいて社会が回ることから、ふつうなかなか定義できない「国の生産性」の低さが目に見えました。)
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そこで、この平均日収$1を、もう一段ブレークダウンしてみます。ざっくり、推定日収$2、$1、$0.5の3種類の農民の生活があるとして、勝手なステレオタイプを私の妄想で描写してみると、この3つの中で相当な貧富の差があります。

○ 平均日収$2: 夫婦ともに働き者。家は土嚢で固められた壁に木かプレハブの屋根がある丈夫な作りで、テレビや携帯電話など大抵のインフラはそろう。子供が全員普通の服を着て学校に通う。水の豊富な土地で手入れされた畑を持っていて、野菜など手がかかるが売値が高い作物を工夫して作っている。

○ 平均日収$1: 旦那はすでに他界したか蒸発したかでいないため、女手一つで8人の子供を育てながら、農作物を育てる。母親は朝4時に起床、深夜12時に眠るまで、育児、炊事選択、農作業に追われ続ける。8人の子供のうち2-3人は学校に通うことができるが、残りは学校に行けず小さいころから農作業を行うのみ。家は藁葺屋根。まじめに働いてテレビを買うことが夢。

○ 平均日収$0.5:  女1人で足をけがしており、満足に歩くことはできない。旦那も子供もいない。裕福な家の軒下に住み、脱穀など座っててもできる農作業をして食いつないでいる。あるいは、このレベルになると、以前書いたSnarewearプロジェクトの前提のように、野生動物を狩って食いつなぐが、その確率は低いので、ますます貧困になる悪循環。

共通しているのは、女性は皆とても勤勉で何についてもテキパキと働いている一方で、男性は全く何もしないこと。ザンビア農村男性の典型的な一日は、朝起きたら酒を飲み、昼にバーに集まり酒を飲み、夜に家に帰って子作りをしてまた酒を飲み、寝る、というものらしい。ちなみに、このとき良く飲まれるお酒は、Mosiというブランドのザンビア産ビールと、Shake Shakeと呼ばれる、地元のMaize(トウモロコシ粉)を発行させて作った体に悪そうなお酒(写真はチームメイトでザンビア人ではない)。
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なんで女性ばかり働き男性は酒を飲むだけなのか、という理由の1つが、一夫多妻制。農村だと、1人の男性が4人くらいの妻を持つのが普通らしく、労働力だからか宗教上の理由だからか病気が多いからなのか、とにかく子供を産むことが奨励される。1人の女性は一生に8人くらい子供を産むことが良い、とされているらしく、子供の数が6人に満たないとダメな女性、という烙印を押されてしまうのだとか。つまり、1人の男性は4人の妻と合計32人の子供を産まなければ一家の長になれず、妻からは常にそのプレッシャーがかかるそうなので、男性は人生の中心を子供づくりに置かざるを得ない社会構造(したがってエイズが蔓延しやすい)かもしれない。一方、そもそも男が余って結婚できなければ、飲んだくれるしかないのかもしれない。また、旦那が奥さんと一緒にいる確率が1/4だとすると、珍しく勤勉な男性がいる家は、とても裕福になるのでしょう。

ちなみに、都市部では都市化が進んでいることもあるのか給料が少ないのか、一夫多妻制とはいえ、「2人以上の妻を持つなんてマネージするのが大変だ」という男のほうが多いらしいです。

教育編
上でも学校に行けない子供の話を書きましたが、ザンビアで一番問題とされることが多いのが、この教育。まず、大学が国全体で3つしかなく、うち鉱山の近くにある工科大を除いた2つの総合大学では、多くの人が弁護士と医者、官僚を目指す。この3つの職種すら人が足りておらず、こんな状況で自国の産業を自国で育てることなどままならないのだそうです。また、初等教育では、服と教科書を買うお金を出せずに、子供を小学校に入れることができない家庭が大きな比率を占めるのだそうです。

したがって、実質的な教育あるいは仕事に就くために必要なスキルの訓練は、外資系企業が社内でトレーニングを行うか、国連やNGO/NPOや教会などがプロジェクトで鍛えるなど、外国人が実現している状況。しかし、この取り組みの恩恵にあずかれる機会はわずかな上、全体の教育レベルが低いと、いくらその時外国人が教育しても、居なくなったら終わり、という形で継続しないのだそうです。

文化編
今までの話を無理やり一言でつなげると、「インフラは整っているけれども、運用する人の価値観や考え方は欧米人と違い、その内側には格差もあり、教育が整っていないこともあり抜け出すきっかけがつかめない」、となります。当たらずとも遠からずですが、本質的にはそうでもない気がする。というわけで、最後に、ザンビア人が何を将来や希望に見ているか、文化、というくくりで話してみます。

教育は無くても、テレビがある程度普及していて、皆アフリカ&中東版のBBCを見れる/口伝えに聞く環境は、国全体でそろっているのだそうです。したがって、欧州とアフリカ、米国と中東の間で何が起きているか、については、自動車の運転手程度の人でも相当詳しく知っていました。

こういう情報がそろっていると、国全体でまずは南アフリカみたいになりたい、と思うのだそうです。南アフリカ人はとても裕福で、ファッションや音楽・ダンスは皆南アフリカの流行を真似するし、メジャーデビュー=南アフリカを目指すことだそうです。ちなみに、CD屋に行くと、日本であれば「ワールド・ミュージック」の棚に置かれてあるような黒人アーティストがずらり。うち、7-8割くらいが南アフリカのアーティストで、次にザンビア人、たまにケニア人やジンバブエ人などが混ざるそうです。あと、ボブ・マーリーはここでも別格で神様のような扱いになっていて、2日に1度くらいは彼の曲をどこかで聞いていた気がします。
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一方で、南アフリカは非常に問題がある国だ、とも思っているようです。「ジンバブエもそうだが、黒人が政権を取ってから国の治安が全く守られなくなり、貧富の差が広がり、ひどい状況だ。ああはなってはいけない」、ということは明確に認識し、反面教師にもしているそうです。したがって、黒人が白人より上に立つ、のではなく、何とか白人と調和してうまいシステムで平和に国が運営できると良い、というのが、国民の基本的な考え方なのだそうです。この点に関しては、今のところうまく回しているように見えました。

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こうして、そもそも聞いたことも見たこともない状況、またその大変な状況を抱える中でも前向きに素晴らしい環境を模索する人々を見ると、自分は何が好きか/嫌いか、長期的に何を求めて生きていくべきか、という価値観の根本が大きく変わった気がしています。また、農民のほとんどが1日に数十キロも徒歩で移動しているような状況の国に比べても、日本の成長率は長期にわたって全然低い。いったい日本は何をやっているのだろうか、私は一日本人として何ができるのか、と強く考えるきっかけにもなった、このザンビアの生活体験でした。
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by golden_bear | 2010-11-23 18:04 | IBD(ザンビアプロジェクト)
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