A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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IBD体験記(8) プロジェクト(1)ザンビアの有機綿花産業

卒業式から丁度3ヶ月が過ぎ、新しい環境にてMBA時代とはまた一味違う、刺激的な日々を送っています。この間、各大学のMBA卒業生の方々らも含め、様々な人々にお会いできました。お話をする中で、私がMBA中にした数々の経験の中で最もユニークなものは、やはり昨年のザンビア3週間(+α)プロジェクトで決まり、と気づきました。これについて、今後どこまでやれるかわかりませんが、当初の予定通りできるだけ書き残しておこうと思います。

先に、ザンビアプロジェクトの過去記事の紹介です。今まで下記7記事までアップしています。(画面右「カテゴリ」内の「IBD(ザンビアプロジェクト)」をクリックすれば全て出てきますが、下記クリックで各記事にも飛べます)

速報 ザンビア行き決定(か?) IBD体験記(1): IBDのプロジェクトになぜどのように応募して、最初の授業でどのようにチームメンバーが選抜されたか
ザンビア行きに必要な予防接種とは:IBD体験記(2): タイトル通り、予防接種の様子について
誰も望まないプロジェクト - IBD体験記(3): 1月から出発直前の5月までに、何が発生していたか。プロジェクトが2点3点し、クライアントの親団体と子会社現地法人とのポリティカルな対立に巻き込まれる様子を記載
無事帰国! と今後の記事方針 - IBD体験記(4): 今後書きうる記事の目次と、ザンビア国内の綿製品路上市場の写真
活動メモ(1) 5/22(金)出発-5/24(日)入国 - IBD体験記(5): 出国から到着初日までの様子を写真つきで
活動メモ(2) 5/25(月)開始-6/14(日)帰国 - IBD体験記(6): これはもはや私専用の備忘録ですが、残りの全日程分毎日印象に残った出来事の簡単なメモ
IBD成果報告会 - IBD体験記(7): 各チームの報告写真や、我々のチームの発表内容について。

以後は、IBD体験記(4)内で頭出しした下記の順に、とはいえ既に忘れている部分も多いため、未だに印象に残っている部分のみを簡潔に記載したいと思います。
- プロジェクト(1) ザンビアにおける有機綿花産業の可能性
- プロジェクト(2) Snarewearのマーケティング
- 週末旅行(1) ビクトリア滝・リビングストーン・ジンバブエ国境
- 週末旅行(2) ルアングウァ国立公園(サファリ)で見た野生動物達
- 文化(1) ザンビアと日本
- 文化(2) ザンビアの衣食住
- 文化(3) カルチャーショックと学び
- 携行品とおみやげリスト

というわけで、本日は2つ並行で行ったプロジェクトの片側、メインの有機綿花産業プロジェクトについてです。IBD体験記(3)内で書いたとおり、本社側がやりたいプロジェクトを現地側が完全に拒んでしまったため、最後の1週間まで本当に五転、六転し続けたこのプロジェクトですが、終わってみて振り返ると、プロジェクトの定義自体は下記のようなストーリーで語ることが可能です(1年前の記憶、かつ私の主観で書いているので、多少現状の実態とは異なる可能性があります)。

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クライアント(依頼主)は、100年以上の歴史を持つグローバルNGOで、野生動物の保護を目的としています。今回の目的地ザンビアは、ケニア・タンザニアと並び、全世界屈指の野生動物の宝庫。しかし、ここでは農業すらできない貧困層(国民全体の平均収入が$1/日に対して、$0.5/日程度)の人々が、仕方なく野生動物を狩って食べて生き永らえようとしていた。この狩りは農業に比べると当然成功確率が低く、ますます貧困になる、という悪循環が起こっていました。

この状況を見て、5年前にクライアントはザンビアに合弁会社を設立し、貧困に喘ぐ野生動物ハンターに農業を教えることで、貧困解消と野生動物保護を両立するプロジェクトを始めました。ここで、HaasのIBDプログラムでは、このザンビア合弁会社立ち上げ時以来、現地に住み着くことになった現地法人の社長と2人3脚で、組織構築や農作業トレーニングのプロジェクトを何度か繰り返し、成功させてきました。結果、主食に近いお米から始まり、ピーナッツバターやハチミツなど、作れる作物が徐々に増えてきて、5年間でなんと6,500人のもと貧困ハンターを、普通の農家へ戻すことができたのです。

このザンビアの成功例を見たNGO本社では、「もし世界中どの国でも栽培可能な綿花で、ザンビアと同じことができて、横展開可能なら、とてもインパクトが大きい」と考えました。そこで、現地法人も綿花栽培も盛んなマダガスカル、綿花栽培はそこそこだが現地法人がしっかりしているザンビア、現地法人はまだ弱いが(有機)綿花栽培がとても盛んなウガンダの3カ国で、パイロットプロジェクトをやりたい。さらに、少量のパイロットで利益を出して自立させるには、単価の高い有機綿花(オーガニックコットン)でやりたい」ということで、プロジェクトを設計。HaasのIBD側でも、マダガスカルで2チーム、ザンビアで我々1チームがプロジェクトに入る予定でした。

しかし、これに困ったのはザンビアの現地法人。今までのハチミツやピーナッツバターは、作ってパッケージにしてから売るまで、全て自分達だけでまわす事ができました。しかし、綿花となると難しさが全く違います。まず、最終製品に至るまで、6プロセスあります。
 1.綿花の栽培 → 2. 綿花から種を取って綿に → 3. 綿を紡いで糸に(必要ならここで色をつける) → 4. 糸を編んで生地に → 5. 生地を、Tシャツなりシーツなりへと加工 → 6. 加工された商品にプリント等最終仕上げ

このプロセスの中で、ハチミツらと違うのは、(時系列的には行く前から判明している分だけでも)下記の点となります
(a) 2.には数百万円の、3.には数千万円-億単位の投資がかかります。もちろん昔ながらの手作業でやってもかまわないのですが、今回はオーガニックコットンということで、最終的に先進国市場を目指す。となると、高品質を保つ機械が絶対に必要なのです
(b) 1.の段階までにとどめて、どこかに綿花を売ることで生計を立てることも考えられる。この場合、売り先は2.の業者となる。しかし、実は2.はグローバルの農業企業が、政府との強いパイプを梃子に、世界各国の拠点で事業を展開している。普通にごく少量で売ろうとしたら、奴隷・搾取と言われるギリギリの価格まで買い叩かれてしまい、赤字が見込まれる。
(c) 1.2.の段階までやって(実は2.の装置なら、中国やインドの中古を安く入手可能な可能性あり:実際にそうしているところばかりだった)、3.で売る計画もあった。しかし、2009年4月段階で、ザンビア国内で唯一3.をやっていた業者が倒産。つまり、3.をやるためには、タンザニアやジンバブエなど隣国の業者に輸出してお願いすることになる。が、当然関税がかかる上、関税無しで近い国内業者との戦いとなる
(d) かりに3.まで隣国パートナーを探せて何とかなったとしても、4.以降はグローバルの戦い。そもそも綿なんて、シカゴの取引所等で値段が一律に決まってしまうコモディティ商品。中国やブラジル、インドの高効率・高品質な綿花に一般的には勝てない(から、ザンビア国内では3.の業者が全滅した)。こんなところに勝負を挑めるのか。
(e) 仮に稀有な最終製品のお客さん(例えばユニクロ)が、「ザンビア気に入ったから、ザンビア発の有機綿花をうちが買い取りましょう!」、と言ってくれて、まさに製造小売のやり方で1.から6.まで全て面倒見てくれることになったとしよう。(ちなみに、ここなどから、ユニクロは実際にバングラディッシュで似たようなことをやるようです。)その場合でも、オーガニックコットンを「本物のオーガニック」という為には、3年間化学農薬・化学肥料を一切使っていないことを証明するトレーニング・プロセスを得なければならない。この証明・監視に莫大な時間・コストがかかる
(f) しかも、折りしも時はリーマンショック直後で世界経済が最も落ち込んだ2009年前半。こんな中で、高級品のオーガニックコットンは全く売れていない(と、バークレーでの事前インタビューで嫌というほど思い知る)
(g) これらを通して採算が取れる値段を、農家に示してあげないと、農家が有機綿花を作りたいなんて思わない(または、農薬使いたくなる)はず、、、

 実は上記プロセスをはじめ、このプロジェクト、2年前の段階から既にオーガニックの認証を取る活動が始まっていたのです。その結果、これだけ面倒なことが次から次へと判ると、現地法人側はもう辞めたくて仕方が無い。でも、本社側はかなりの投資を経て、今年の3年目を乗り切れば認証がようやく取れるところまで来ている。さらに、一番有力候補だったマダガスカルが、09年春に政情不安で事実上オフィスごと撤退せざるを得なくなってしまった。そこで、唯一の頼みの綱になってしまったザンビアにて、「"Conservation Cotton(環境保全活動をした綿花)"という言葉でマーケティングができないか」、などなど、我々にもかなり奇抜な調査、アイデアを要求してくるような状況で、始まったのです。。。が、IBD体験記(3)にも書いたとおり、現地側はついに喧嘩別れし、我々には一切の現地サポートが与えられず、行ってからの調査は全て独力でやる羽目になりました。
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ここまでがザンビアに行くまでに判っていた経緯となります。そして、行ってから実際に行った調査は、独自調査なのでクライアント関係無しでもよかったのですが、やはり最終報告する相手に何か示したい、という意味で、「このプロジェクト続けるべきか、やめるべきか」にしました。というわけで、下記4点を順に調べてまとめることになりました。
(1) 各プロセスのコスト積み上げる(または、途中のプロセスで売る)ことで、長期的に採算が取れるのか
(2) 仮に採算が取れるケースがあった場合に、具体的に各プロセスで誰がどのように動くのか。それは誰が全体の旗振り役になって、実現可能なのか
(3) (2)で決めた「やらなければならないこと」は、実際の時間軸でどのようにはまるか
(4) (3)を見て、現実的にやるべきか、やらないべきか

3週間のうち、最初2週間で調べきって、最後1週間のうちにまとめる予定でしたが、元々現地クライアントがアレンジする筈だった各プロセスへのインタビューが、行く3日前に全部キャンセルになったので、出発2日前から当日にかけて、ありったけの参考文献に連絡先(~10件で精一杯だが)にメールを出しまくる。結果、ザンビアについた日(日曜日)に、幸運にも次の火曜日と水曜日に農業訓練所2件へのインタビューがセットされている状態でした。以後、この2箇所の農業訓練所から、芋づる式にインタビュー先を増やして行き、翌週火曜までに、国内/近隣諸国の各プロセスの企業や工場数社、クライアント以外の農家、国内の衣料品店、海外へ衣料を売る商社、政府(農林水産省)、農業統計をとるシンクタンク、他国で同様のプロジェクトを神がかり的に成功させてきた方(この方からの学びはとても簡単には表現できないので、別記事で紹介します)などなど、手分けしながら電話や対面で、無理やりインタビューできました。最後の方は皆さん紹介する人が互いに一緒になっていったので、首都ルサカ周辺に存在する国内の関係団体のほぼ全てから、数少ない定量・定性情報を集めきったと思います。

そして、翌週水曜から次の月曜まで、飛行機で東部の農業地帯に飛んで、クライアントの農家5件(及び、現地の高級織物土産物店兼工場)にインタビューに。ここで実際に、1日0.5~2ドルで生活する農家の人々の生の実態に触れたことが、今回の旅で最も衝撃的でした。プロジェクトに関係するごく一部の話だけでも、下記のような話が実際に見て取れたからです。(プロジェクトに無関係な内容で驚いたことは、別記事で紹介します)
- どの作物を作るか、のシビアな選択(Crop Competition): この農家の方々は、まともな教育も受けれず算数の計算も100%とはいえない。しかしながら、食料は死活問題。自分の周りの畑の広さや質、水の量、女子供の労働力などから、どの作物をどれだけ作るかの計画は、現実に利益が最大化されるように、定量的な計算に基づいて選択される
- ザンビアの土壌の特性: 他のアフリカ諸国に比べて、水も土壌が豊かなザンビアでは、害虫が思いのほか多く育つ。従って、有機栽培にしただけで、収量が一気に落ち込んでしまう。「こんなのじゃ全く採算が取れない」ということで、2年目から一気に辞めてしまった農家の人の言うことも、実際に彼の畑から取れる綿花の質を見て納得せざるを得なかった。
- 一方で、化学肥料や農薬が大嫌いな農家も多い。数年で土地が駄目になってしまったり、子供が農薬で病気になってしまったりしている経験から、絶対に使いたくない、としている農家もあり。

こういうわけで、最終週の火曜日から木曜日までしっかり丸3日分析期間を取っていたにも関わらず、チームレポートのまとめは困難を極めました。まず、上記6プロセスのどこをどうするか、という話の組み合わせで、現実的な論理解だけで数十通り出てきます。その中から、結局様々な過程を組み合わせて残ったのが、下記5シナリオ
解(1): 全て面倒見てくれるエンジェル的な顧客(例:上のユニクロ)にプロジェクト: 実は当時具体的に2社発見していており、その顧客が要求している情報もおおむね今回のプロジェクト内で整理できていた
解(2): 顧客はいないが、拡大路線: プロセス2.の装置を買い取り、自社で綿花→綿まで作れる事を担保する
解(3): 顧客はいないが、現状維持: プロセス2は自社では行わず、現地企業に依頼。
解(4): 顧客はいないが、縮小: 当面、綿花は「オーガニックではない通常綿花」に混ぜて、同じルートで売ってしまう。当然赤字だが、完全撤退はしない
解(5): 完全に撤退する

この中でどれを選ぶかは、困難を極めました。最終的にとても複雑なモデルとなったコスト計算がなかなか精度良く合致しないこともありましたが、実は、都市部の関連企業・団体のインタビューを全て聞き終わった段階で、ほぼ「無理」という結論が仮説だったので、解(5)だけ考えていて、計算をストップさせていたのです。しかし、農村で農家の話を聞いて、「もし、彼らがやりたい、というケースがあれば、それを停める理由はどこにあるのか。大目的が『動物保護のために農業をさせる』ことならば、もし今全く採算が合わなくても、将来の景気好転にかけるシナリオがあっても良いのではないか」、と考えるようになっていったのです。

結局このことから、最終的に(4)のケースを提案することに。実際、6,500名の農家のうち、自分の持っている土地の条件などから、オーガニックコットンを作りたい/作らざるを得ない人が100-200名ほど居そう、という予想が立てられたため、以後これを元にどれだけ赤字を最小化できるか、という点で細かいパラメータを調整しました。

これだけでは終わらず、最後のコミュニケーションプランを作るところでもしびれました。実はこの解(4)、クライアント本社と現地法人両方にとって不利益な耳の痛い話で、正直最も危険な解だったのです。しかし、大上段の目的「動物保護+環境保護」、及び、農家の立場に建つことで、本社の面子を保ちつつ、現地法人にもしぶしぶ了解してもらえる「痛み分け」、に持っていくストーリーに。結局、最終日昼までプレゼンの構成を何度も練り直しました。

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こうして3日間の突貫工事で、Word48ページ、Powerpoint15ページの最終報告書を書き上げ、最終報告書の報告へ。我々など見たくも無い、という感じだった現地法人の社長も、最後だから、ということで、5分だけ、という形で話を取ってくれました。

最初は我々が見たままに、如何に有機綿花栽培が大変な事業か、ほぼ無理だ、という話から入り、彼の「やっぱりそうだろう」、という同意を得ます。しかし、「当然廃止だろう」、と彼が主張したところで、我々が努めて物腰柔らかに、「しかし、本当にやめてしまっていいものでしょうか」という反発に入ります。ザンビア全体のサプライチェーンが疲弊し皆撤退状態で、トップダウンで新規参入できればチャンスでもある、というマクロな話から入り、農家の人が日々何を考えて綿花を作っているか、ごく少数ではあるがこのプロジェクトを辞めないでほしい、と切に考えている人が居ること、そしてそれを継続するだけなら、赤字も全然たいしたことは無いこと、最後に、継続することで本社の面子も保てること、、、それとなく話すと、紅潮していた現地社長でしたが、しぶしぶ我々の提案を納得してくれたようでした。。。

。。。と思ったら、彼のほうから逆提案。「1.-6.のサプライチェーンを全て買い取ってしまったらどうだ?」。ええっ、という全く想定外の解が飛んできましたが、実は6,500名を農民にして、ピーナッツバターやハチミツを作っているうちに、この企業、数億円の投資ならやる気になれば余裕でできてしまうくらい、現地の超優良企業になってしまっていたようなのです。高々百数十万円の赤字をどうするかで、シナリオ分析で相当頭を抱えていた我々には、まさに晴天の霹靂。そんなに投資できる資金の余裕があるなら、最後の丸1週間、分析の前提からして全く違っていたじゃないか、、、。事前にクライアントと仲が悪いと、このような基本情報すら共有されず、死にプロジェクトになる、ということを、身をもって体験することとなりました。


この2週間後、米国のクライアント本社に今回の話を電話会議で報告。本社の方も、まずは継続の方向で話が進んだこと、次に、想定顧客らと本レポートを元に建設的な議論ができそうなことで、とても満足していただけたようです。。そして何より、ザンビアの現場で何が起こっているのか全然知らなかったらしく、「初めて知ったことが一杯ある、48ページきちんと読ませてもらうよ」とのことでした。そして翌年、今年もIBDでこの同じクライアントでザンビアでのプロジェクトが取れたと知り、ああ、我々の仕事が果たせたのだなあ、という実感が沸いています。
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これにてプロジェクトの中身自体は記載完了ですが、25人ほどインタビューした中からの学びや驚き、そして上記に至る各ポイントで、中国人やインド人、パキスタン人のチームメンバーが、どれだけ協力的/非協力的な動きをしたのか、などなど、毎日カルチャーショックの連続だった部分については、また別の「文化」という記事でまとめられたらそちらで紹介できれば、と思います。
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by golden_bear | 2010-08-16 16:43 | IBD(ザンビアプロジェクト)
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