A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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MBAの成績の使い方 - 出揃った成績を見ての所感

少し前の話ですが、卒業式から1ヶ月ほど経ってようやくすべての成績が出揃い、無事卒業が確定しました。今まで授業の話は書いてきましたが、成績については書いてこなかったので、改めて眺めてみて面白いと思ったところや、高い成績が必要な人へ参考になりそうな話を書いてみます。(ちなみに、本ブログは当然ここのリンク先にあるHaasのルールを元に考察していますが、大学ごとに成績のつけ方は相当違うようですので、ご注意願います)

まず、そもそもMBAにおいて成績って何の役に立つのでしょうか。学部生の成績は、ある意味日本以上に学歴社会の米国では、結構その後の就職や転職・進学に大きく関わります。しかし、MBAの場合、成績が役に立つのかどうかは、完全に人次第のようです。たとえばMBAの成績を利用しそうな場面を思いつくままに並べると、下記のようになります。

○ 卒業要件:Haasの場合は、必要単位数の制限とともに、GPA(注1)が3.0以上無いと卒業できない。
○ 米国の一部の就職先で、GPAが脚切りに使われる、または、選考で重視される場合がある: (例) 金融関係、コンサルティングファーム、Google、一部のスタートアップなど。3.7が目安とされるっぽい。ちなみに、日本ではGoogleは米国と同じ基準ですが、金融・コンサルは米国ほど重視しない模様です。
○ ビジネススクールでPh.D(博士課程)への進学に重視される場合がある: (例) トップ5%の成績が必須、など
○ 社費派遣で問われる場合: (例)「最低3.5くらいのGPAは取って戻って来いよ」、と言われて送り出されるなど。年間、あるいは、昔からMBAを多く派遣している企業では、何かで人事考課に使われる可能性もあるのかもしれません。一方、社費でもこのような条件が全く無いケースもあるようです。
○ 超優秀な場合に、肩書きとして使いたければ使える: (例)ハーバードで上位5%に入ると、そういう人は日本人でまだ数人しか居ないので、肩書きとしてアピールできるでしょう。Haasでも成績優秀者は同様に表彰され公表されるが、使うか使わないかは自分次第でしょう。
○ ネタとして使いたければ使える: (例)ブッシュ元大統領(ハーバードビジネススクール卒)が、「成績がCでも大統領になれる」、と言っている、など

これらは私の場合は卒業要件以外意味が無いものでした。従って私にとっての成績の意味は、下記2つのみとなりました。
(1) 個別の1つ1つの評価: 卒業できそうな限りにおいては、「頑張って良くするもの」、ではなく、「自然体で学んだ結果、その日その時点で、将来使いそうな知識が身についたかどうかを確認する1つの指標」
(2) 全て出揃った時: 「全体を俯瞰して何が言えるか」の意味合いを抽出し、今後の人生に生かす(本日のブログ)

この(1)(2)を考察する前に、「成績は本当に(1)(2)を見る指標として役に立つの?」という疑問があります。そこで、先に成績のつけ方を確認してみます。まずは、成績の分布ですが、ここのHaasのルールによると、
○ 必修科目(卒業に最低必要な51単位中21単位分-Waiveした分)は、相対評価で、A = 15%, A- = 20%, B+ = 30%, B = 20%, B- or below = 15%、となっているらしく、平均が3.3程度になるように厳密に設計されているようです。
○ 選択科目(最低30単位分。Haasの場合は、上限なくいくらでも履修可能)は、明確なルールが無く、教授によりけり。多くの場合、特に答えが1つに定まらない定性的なレポートやチームワークをさせるような場合は、必修科目と同様の分布で平均が3.3になるようにバラけさせているようです。一方、特に資格試験に直結したり「○×」や定量的な点数がはっきりつきやすい授業の場合、絶対評価のみを基準にするケースもあるようです。

従って、必修の成績は絶対的には母集団(Haas)の質次第となりますが、少なくとも異なる科目間で何が良くて何が悪いのか、を見る基準としては使えそうです。逆に選択科目の成績では、他科目同士を比較するよりは、絶対的な評価点を見たほうが良さそうです。そして、どちらのケースでも、指標として下記の問題を含むことは、考慮しておく必要がありそうです。
○ 自他で求める品質精度の違い: 自分の将来にとっては99.9%の点が必要な知識でも、95%できてればAがついてしまうような場合は、たとえAでも今後注意が必要
○ フリーライダーの問題: MBAの授業では多くの場合チームワークとなるので、自分の仕事ができなくても、チームメンバーが良ければ、自分の実力が無くてもよい成績となってしまう可能性が結構ある。この問題はもちろん現実社会でも発生するが、社会人になっても再現性を持って良いチームを形成するスキルをつけられたのか、あるいはチームが悪くても自分に実力があるのか、を切り分けて考える必要があり。
○ 受講生の偏りの問題: たとえば10名以下しか受講しないケースでは、教授も受講生のレベルに講義内容を修正していく。従って、その全員がエキスパートの場合と、その全員が初学者の場合とでは、絶対評価となっていても相対的に良し悪しが出る可能性がある
○ 教授が恣意的すぎる場合: 情に脆い教授は、数十時間かけてものすごい分厚いレポートを出すことで、内容はともかく成績が良くなるケースがある。また、選択科目では、人によって鬼(B-以下の成績を乱発)や仏(Aを乱発)しているケースも、ごくまれにありそうです。

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これらを頭に入れて、改めて私の成績を全て俯瞰してみると、まず一見して、下記のような気づきがありました。

○ そもそも、「このくらいだろう」、と思っていた成績の事前予想(期末試験/レポート後)は、ほとんど外れている
当たったのは、10個に1個くらいで、良くも、悪くも、成績は全然期待通りにならないのです。その理由は、下記に続きます。

○ 自分にとって学びが深いものほど成績は悪く、何にも学んでいないものほど成績が高い
 このブログでも過去に「これは素晴らしい」、「面白い」と書いたような、学びの多い課目ほど、成績は酷いのです。Aだと思っていたものはB+となり、A-かB+位だろう、と思っていたものはBやB-になってしまっています。これは「倫理」の授業のような特殊事情(注2)もありますが、一般に新しい知識を教室内で吸収できたばかりの状態では、実務でやっていた人には全然立ち向かえない、ということを示している気がします。

 反対に、「つまらない」、「期待はずれ」、「聞くだけ時間の無駄」、と思っていた授業は、AやA-になっている傾向が強いです。これは、単純に元々知っていた、ということもありますが、「授業がつまらないとチーム課題で頑張って理解しようとして、実はチームワークの配点が高かったりして楽しんでいるうちに成績が良くなる」、ということも大きい気がしています。やはり元々自分が知っていたり実務で経験していないと、こんな芸当はできないことから、MBAの成績そのものには実務経験の方が反映されやすい気がします。あるいは、私の努力不足が、こういう結果を招いたのでしょう。

○ 選択科目のほうが、必修より成績が良くなりやすい
 多分この一番の理由は厳密に成績のランク付けを管理していないからだと思います。が、周りの学生も、選択科目より必修科目のほうが頑張っていたように見えます。これは、就職活動時期の影響が大きく、最初の1学期目のGPAでインターンで良い所に行けるかどうかは全て決まってしまい、いいインターンができたかどうかが卒業後の就職に大きく響くことを考えれば当然です。逆に、最終学期の成績は、就職活動中に表に出てこない(卒業後の最終GPAを就職に使うような時点では、GPAを重視する就職先はそれほど多くない)。

○ 努力の有無は±1個程度影響する
 今までの記事でも結構、「友人に学んだ」、「チームに学んだ」、と書いていましたが、自分が学んでいるだけでチームメンバーに大して貢献できないような場合では、結局成績は悪く、逆にチームをリードできたような場合には成績は良い。「フリーライダー戦略」は結構見破られてしまうようなのです。また、教授の合意の下で他の人がやらないような難しい企業をあえて選んで分析したケースなど、頑張ったものは報われている印象がある。要は、手抜きは結構見られているし、地道な努力は案外効果的、というイメージです。

○ 英語力の無さは確かに成績を+0.5~1個程度(例:A-⇒B+)押し下げる
 これは致し方ないのですが、やはり数字が入らない組織論やリーダーシップなど、全て文章によるレポートを書く場合など、教授も留学生ということを多少考慮してくれているとはいえ、苦しいケースが多く見えます。さらに、数字が入っていても、授業の発言や議論構成が重視される授業では、AやA-にはなりにくい印象があります。ただし、この影響はあってせいぜい±1段階程度。実際に内容を学べているかどうかの方が、成績に大きな影響を与えるようです。

このような傾向から、日本人の方でどれだけ居るのかどうかわかりませんが、成績を上げる必要がある方は、下記のような方法は有効なのかもしれません。

○ 就職活動のため、最初の学期のGPAが重要な場合: 相対評価の中で人に勝つ、とはどういうことかの基本に立ち返る。敵を知り、己を知った上で、最低人一倍努力をした上で、真っ先にチームに貢献してチームの力を自分のため(英語力不足を補うなど)に使えるようにする。
○ 社費の方等で最終的なGPAを気にする場合: それまでがどんなに酷かろうと、最終学期に自分が元から得意な分野で仏の先生を取り捲ることで、挽回できる可能性がある、

そしてもちろん、成績が必要ではない人は、むしろ上記の逆をして成績を気にしすぎない方が、チームワークの中にも自分の目標を立てて、より有意義なMBA生活を送ることができるように思います。

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最後に、全体を俯瞰しての私自身に対する意味合いです。結局、前職で実務で経験したような内容は、どんなに手を抜いてもAかA-になる傾向が強く、全く面白くないか、面白くても物足りない感じでした。一方、まだ仕事で未経験の分野、それも短期ではなく3年~10年後にやりたくなりそうな分野は、ことごとくB+以下の成績となっていましたが、そちらのほうが大変面白く、学ぶ価値があったと考えています。そして、そもそもこうなったのは、キャリアチェンジャーの最終学期考(前編):興味の無いものこそやるキャリアチェンジャーの最終学期考(後編): 学生のうちの経験で書いたように、自分の転職をイメージした時に、将来有用となるはずの授業ばかりを選択した結果です。このことから、下記が私自身に対するメッセージとなります。

○ 自分が次の就職先に選んだ道は、今後数年の面白さ、やりがいを考えて、正しかったのだと安心して前へ進むことができる。もし前職を続ける前提でMBAに来ていたら、取った授業が物足りない授業ばかり、かつ、良い成績ばかりとなってしまい、ここまで面白いという気分になれなかった気がする。後付ではあるが、MBAに来て転職をするという決断を2-3年前にできたことは、私が今後新たなモチベーションを持って働くために丁度良いタイミングだったと今、心底思えることは、とても幸せなことだと思う。

○ また、もともと必要だが興味の無かった知識や業界・業種への転職に対して、上記のようなことを思えるように自分が変化してきたことも含め、MBAは転職をする心構えのために、自分に十分すぎる時間と題材を与えてくれた。もしMBAに来ないですぐ転職していた場合、何を目標にできただろうか、と想像すると、3年後の将来は全然違うものになってしまうように思える。

○ 一方で、次の就職先に行くにあたっては、現時点の私のスキルは、恐ろしいくらい使い物にならない。絶対評価でA+++位が必要な所でB+以下が並んでいるこの状況は、仮に前職を続けていて同様の成績のMBA生が私の下に入ってきた状況を考えれば、本当にぞっとする。MBAは卒業後の方が全然大変とは、本当に色々な方に言われるが、一刻も早くキャッチアップできるように、スタートダッシュの準備を整えなければならない。ただし、そのキャッチアップは、実務経験に入ってからの方がMBA内でやるより効果的、というか実務経験でなければできない部分も多いので、そうスムーズにできるための準備が重要。

(注1) Graduate Point Average。米国で一般的に用いられる成績の平均点の計算方法で、A=4.0, A-=3.7, B+=3.3, B=3.0, B-=2.7, C+=2.3 などとして、単位数の加重平均を合計したもの

(注2) 一説によると、今後学生に倫理の問題を深刻に考えてもらうために、全員にヒドイ成績をつけた、といううわさもある。
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by golden_bear | 2010-06-14 23:08 | 学業
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