A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
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米国で良心的な歯医者に出会う

先週から今週に掛けて突発イベントが多発。その全部は書けないのですが、いくつかまとめて紹介していく予定です。今日は2つ。まず、自分にとって比較的影響が少なく面白かった突発イベントとして、再度の大学ストライキ。朝、Sather Gateという門が封鎖されていて、
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仕方なく脇の川を飛び越えることに、、、
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一方、影響が大きく面白くなかったものは、寝ていたら突然銀歯の詰め物が取れたこと。これには正直あせった。というのは、諸先輩方に、「米国で歯医者に行くなら、日本までの往復航空券を買って、日本で治療した方が安い」という話を聞いていたから。しかし、私費留学の私には現在、日本の健康保険証が無いため、日本に帰っても結局高い。ここまで必死に生活費を削ってやっと卒業直前までたどり着いたのに、ここで数十万円の出費は痛い。何とか避ける方法は無いものか、、、咄嗟に、いくつかの考えが頭をよぎりました。

○ 今は直さないで、就職後健康保険証の発行を待って病院にいく: 真っ先に思いつくのは、そもそも病院に行かないという案。しかし、就業開始は7月以降になるため、今から4ヶ月以上放っておいてもっと悪くなったら悲惨

○ 接着剤を買って自力でつける: 次に、米国なら取れた銀歯くらい自力でつける接着剤とか売っているのではないか、と考え、ちょっとWebを検索。しかし、そもそも銀歯(Silver tooth?)とか、接着剤がどの英語になるかもわからず、eBayでいくつか入力したが、全くヒットしない。Googleでは"貴方の金歯を換金する方法"など怪しい世界の話しか出てこず、断念。

仕方なく、ここはおとなしく安い歯医者を探すことに。まず、MBA同期のメーリングリストの過去ログを見てみると、何人かがお勧めの歯医者を挙げていたが、多くの医者は、学生保険(SHIP=Student Health Insulance Plan)が使えない、とのこと。

次にYelpという地域情報WebSiteで評判の良い近所の歯医者をいくつか当たってみる。YelpやYahooなど個人向けインターネットサービスがこれだけ発達している米国なんだから、医者もOpentable(あるいはぐるナビ)みたいな感じで簡単に予約できるのかと思いきや、全然違った。とにかく、電話を掛けるか直接訪問して、先に予約をとる、しか、普通に医者に会う方法が無いのだ。

3人のお医者さんに電話をしてみる。が、うち2人は複数の病院を掛け持ちしていて不在。ここで、「別の先生でいいです」、と言わない限り、各病院の秘書さんの間をたらい回しにされてしまう。このため、せっかく学生保険が使える、と書いてある病院に電話しても、別の病院に飛ばされて、「この先生はその保険使えないルールだった筈だよ」、と言われてしまう。また、そもそも民間保険の種類がありすぎるからか、2つの病院からは、「その保険が使えるかどうかは、やってみないとわからないね」という反応。これでは怖くて予約できない。

詳しい仕組みは全く知らないので、この段落は上記3人とのやり取りだけから書いてますが、日本だとまず病院ありきで、その中に先生がいる感じ。つまり開業医でも勤務医でも「○○病院の」××先生、という枕詞が着くのが一般的で、病院のやり方はどこも大差なく、評判は先生と病院の総和で決まる。一方、米国では医者個人がブランドを持つ個人事業主で、病院は単なるオフィススペース、という感じ。今までビジネスプランコンペなんかで、普通の企業が持ってて当たり前のようなシステムを「医者向けにしました」とするだけで、案外反響の大きい起業アイデアになったり、「それは大変難しい」と言われる光景を結構見てきて、不思議だったのですが、この「場所を固定しない個人事業主の集団」相手のビジネス、ということもその要因の一つかな、と思いました。従って、収益性など他の条件が同じなら、まだ病院が比較的画一的な日本の方が米国よりIT化しやすいような印象も受けました。

結局、保険が使えそうにないところばかりで、あきらめて多大な出費を覚悟しようと思ったところ、偶然韓国人の友人にすれ違う。念のため、「良い歯医者知らない」と聞いてみると、「あるよ。僕の行っているところは、完全に学生保険が使えて、いい医者だよ。」とのこと。早速電話をしてみる。「アンニョンハセヨ」と言われたものの、こちらが英語で話すと「ニホンジン?」という反応。以後英語のやり取りに。とりあえず土曜日の朝一を予約する。金曜日にもわざわざ「明日は往診日だよ」という連絡を頂き、マメな感じ。

土曜日の朝、オークランドの町のど真ん中にある韓国人街にある病院に行ってみる。
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中の表示も韓国語。
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受付のお姉さんに話そうとすると、医者本人が出てきて、自ら全部説明してくれる。どうやら、アシスタントの人は英語が堪能ではないようだ。
 
「紹介してくれたのは、XXさんか。彼はバークレーの工学部の学生だっけ?ああそうか、MBA生だったか。どっちにしても、勉強大変だろう。学生保険証見せてくれるか?これだこれだ。」という感じで陽気に話が進み、驚いたのは次の一言。
 
「うちは特別な治療で無い限り、患者の学生の紹介があった学生からは、治療費を取らないことにしているんだ。保険からおりるお金だけで十分だから、貴方は基本無料だよ。安心して治療を受けなさい」

 無料、と言われると、本当に大丈夫なのか、と却って恐ろしくなってしまったが、とりあえず言われるがままに中に入り、見てもらう。最初に取れた銀歯を見せると、「こりゃ、こんな奥の歯にこんな形で作るなんて、すげー、見たこと無いよ。日本人のやり方だなあ。」、と驚かれる。次に、他の歯も含めて、レントゲンをとったり、1つ1つ綺麗にしてもらいながら確認してもらう。

米国の歯医者は高いけど素晴らしい、と聞いていたが、ここは設備的には特に目新しくもなく、水のコップが隣に無く椅子から降りて歩かないと口を濯げないことを除けば、子供の頃に行った歯医者と全く同じ。20年くらい前にタイムスリップした感覚で、むしろ「これなら安いのもうなづける」と安心感があった。また、スキル的には、歯石を落とす様子などは、力が入っていて、恐らく日本人の歯医者がやるより痛い。が、別に問題なく許容できるレベル。

そして、最後に、「おお、貴方の歯はバクテリア(歯垢/歯石のことらしい)で一杯だ。もう何年も歯医者行ってなかっただろう。全部無料で直してあげるから、卒業する前にあと4-5回来なさい」と言われる。治療費稼ぎのために無理やり治療箇所を増やしているのか、と思ったが、こちらの負担はゼロだし、どっちにしても保険証をもらうまで日本で歯医者にいけない、かつ、就職して保険証を貰った頃は忙しくて歯医者にいけないだろう、と思い、4-5回行って見ることにしました。

私の治療が終わって外に出てみると、待合室に韓国人のおじいちゃん、おばあちゃんが一杯。1人日本人で気まずい空気だったので、さっさと外に出てみたところで、この歯医者が何で私を無料にしているかの理由に思い当たる。それは、そもそもとても安い治療費しか受取らない、善意の医者だろう、ということ。

オバマ政権の目玉にもなっている医療保険改革ですが、米国では全国民の約6分の1、約4700万人の方が無保険だそうです。そして、ここはオークランドという全米屈指の貧しい都市の、ましてや韓国人街。そもそも韓国人の移民は日本でコンビニの店員さんをやっているアジア人に近いイメージで、欧米人より裕福になる可能性は低い。また、韓国料理屋などの個人経営者やその家族の場合、べらぼうに高い保険料がかかる(注1)。従って、この病院にかかる方の中にも、無保険の方が結構いると思われ、ここで正規の医療費を取ったら、とても医者にはかかれず、医者の「仕事」(ビジネスではなく)が成り立たないのかもしれません。こんな中では、私のような学生でさえ、保険料を満額取れる意味で相当な上客扱いになる。そして上客が来なくてもやっていける低コスト体質を築き、金儲けを基本としない良心に基づく医者。こんな人が米国にもいるのだなあ、と驚きました。

個人的には無料で歯医者にいけることになって大変助かりましたが、一方で米国が抱える医療や貧困格差の問題の一端に直面し、複雑な気持ちになった、土曜の朝でした。

(追記) バークレーの学生(SHIP有)の方で、この歯医者の治療を私経由の紹介で受けたい方が居ましたら、非公開コメント等でご連絡お願いします。

(注1) ある個人事業主の方に聞いたところ、米国で起業/独立開業をする場合、一番高くついたのが保険だったそうだ。独立前に入っていた保健と同じものをしようとすると、自分の分だけで月8万円の負担となり、家族4人では20-30万円になる。ましてや大企業から数人優秀な従業員を引っ張ってくることを考えると、とても大変。「米国は起業しやすい国だが、起業を妨げる一番の要因がこの医療保険の高さ」とのことでした。
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by golden_bear | 2010-03-11 01:46 | 社会・風土
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