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A Golden Bearの足跡


UC Berkeley Haas School (MBA) における、2年間の学生生活の記録です。
by golden_bear
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GoogleがDNS事業に参入!!! (後編) メール内容と素朴な疑問(ご意見募集)

このニュースを見て衝撃を受け、友人からのメールを受け取って
- 10分考えて返答したメール
- それに対してすぐ返ってきた友人のメール
- それを受けての感想と、3つの素朴な疑問
を、個人名以外改変せずにそのまま下記に掲載します。この我々2人の議論、および、最後に箇条書きをした3つの素朴な疑問についてでも結構ですので、全体にでも一部にでも、もし何かご意見、訂正、補足、質問などありましたら、どうぞご自由にコメント欄にご記入お願いします。その内容は、このページのコメント欄に書かれた状態にしておく以外に特別に使ったりすることはないです。ちなみに、この友人は、米国でIT系エンジニアとして働きながら大学院にも通っている方です。

(以下、私のメール)
「御久しぶりです。ニュースどうもありがとう。丁度さきほど、この記事で見たところです。
http://jp.techcrunch.com/archives/20091203google-dns-opendns/

このDNSサーバーって、技術的に優劣はつく&特許でその技術をどちらかが囲い込めるような性質のものなのでしょうか。もし、とても強力な特許を取れるなら、それをやった企業の方が勝つと思いますが、少なくともGoogleが後から参入できた、ということは、OpenDNSに、鍵となる特許は現時点でないはず。すなわち、技術的な優位構築は難しいような気がしますが、どうなんでしょう。

もし技術的に大きな差異がないなら、単純によりDNSサーバーからの物理的な距離が近い方が速いはず。そして、両方とも無料なので、両者が性能競争でアピールするしかないなら、消費者は近くにサーバーがあってより速いほうのサービスを選ぶはずです。Googleは、最初は自社のサーバーの空き部分を転用すると思いますが、OpenDNSは、自社でDNSサーバーを相当買い込んで分散して持っているので、それに対抗するには、Googleは投資してDNSサーバーを複数たてなきゃならない。そこまでするメリットは、と考えると、仮説としては、次の3つのどれかでしょうか。
(1) 現在、世界に数箇所ある(場所は非公開)Googleの自社サーバーを、他のサービスも含めて今後分散して持つ意識がある
(2) DNSサーバーを持つことで、より多くの個人情報を得て、検索技術や広告マーケティング技術に反映する
(3) 今OpenDNSが収益源にしているように、GoogleもDNSエラーページなどなどに広告を配信する

(1)ならユーザーには嬉しいですが、(2)、(3)だと、ユーザーへのメリットがない(か、デメリットが増える)ので、物議を醸しそうですね。いずれにしても、最近のGoogleは、他の零細Web企業が儲かりそう、とわかったら、手当たり次第に参入して、10-20年前のマイクロソフトみたいな意味で嫌われ者になる傾向がありますね(しかも、無料にして価格破壊をおこしているので、より性質が悪い)。まあ、それでもマイクロソフトは勝ち続けたように、Googleも勝ち続けるのかもしれませんが、今後どうなるかは、注目したいと思います。」

(以下、友人の返答)
「http://tools.ietf.org/html/rfc3467
DNSサーバーの根本的な概念や仕様そのものは、RFCというかなり公な形式で公開されているので、それそのものを特許で固める、というのは難しいと思います。

DNSの運営の部分は、結構政治が絡んできます。今のところ、オリジナルのDNS、と指定されらDNSサーバーが世界で13台あり、それらが提供しているデータがオリジナルという扱いになっています。DNSの機能そのものを提供するソフトウェアは色々あって、その中でもオープンソースなライセンスで有名なものにBindというのがあるのですが、それがオープンソースである事からもわかるように、誰でもDNSの機能を提供する事は可能です。既に、本当は存在していないTLD、例えば.hogehogeというようなドメインの名前解決を出来るようにしたDNSサービスを提供している個人や組織もあります。

ここが政治的なものが絡むところで、これは、どのDNSサービスを使うかによってどのIPアドレスを返すか、というのが操作出来る、という事です。実際に、中国などでは、それらの13のDNSサーバーとは違う答えを返すようなDNSサーバーが運営されています。ですので、もし多くの人が特定の一つの組織が提供するDNSサービスを使っていると、そこが中性的な運営をしないと、その組織の利益になるような運営が可能になってしまいます。それが、今のところ13のDNSがオリジナル、と定められている理由ですが、OpenDNSやGoogle Public DNSによって、それらが、しかもユーザー達の意思で、変わっていくかもれません。Googleは、ケーブル会社から、今は使っていない回線をどんどん買い占めていると聞きます。そのうち、Googleが提供するインターネット、Microsoftが提供するインターネットなどが出てきて、お互いが物理的に繋がっていないような事になるかもしれませんね。

根本的な技術は公ですが、その上に成り立つ技術で差をつける事は可能だと思います。例えば、DNSサーバーにおけるリクエストとそれに対する答えのキャッシュの方法などは、ものによっては特許が取れないこともないと思います。Google Public DNSは、それを売りにしている感じがします。

物理的な場所が近い方が早い、というのはその通りですね。

確かに、最近のGoogleはサービスも当たりが少ないですし、今のMicrosoftの様に、どこかの後追いを始めたら、もうダメになる一方でしょうね。」

(以下、感想と素朴な疑問)
このやり取りを受けて、前編に書いたMBAネットワークの価値の話以外に、改めて自分の専門分野外の専門家の方が近くにいる、ということの心強さに気付きました。実は、こんなメール&ブログを書いておいて恥ずかしながら、オリジナルのDNSサーバーが13個に定められている、といった話は知らないことでした。つまり、この友人がいなければ危うく、何も知らないことを知らない、という文字通り裸の王様状態で、他人に意見を述べたりしてしまうところだったのです。

さらに、この「オリジナルがあるけど、普通の人はそれを意識せず使っている」事実を知ったことで、今まで自分が勝手においていた前提が崩れ、いろんな素朴な疑問が頭の中に出てきました。3つ書き並べると、

○ OpenDNSが恨まれる理由とは: 
この事実を知る前は、これは市場を拡大してサービスを向上する、盲点を突くすばらしいビジネスだと思っていました。今まで広告がなかった場所に広告をつける「新たな市場・付加価値の創出」、ユーザーにはセキュリティーや通信速度を無料で上昇、しかもサーバーはリスクを取って誰にも迷惑をかけず、自分で投資している。では、なんでこの企業はよく叩かれるのでしょうか。

真っ先に思いつく理由は、不具合。言っているスペックが出てなかったり、他のソフトが使えなくなったり、といった被害はありそうです。次に、もうけすぎてることに対する妬みもあるかもしれません。

ここまでは思いついていたのですが、どうもそれでこんなに叩かれるかなあ、と不思議でした。しかし、今回DNSに13のオリジナルがある、という話を聞いて、よくよく考えると、広告を貼っちゃいけないところに貼って、公共の美観を損ねている違反広告物になってしまっているのに、撤去できないから、恨むよりないのかもしれない、と思いました。すなわち、道路のアスファルトの上に勝手に広告を張ったら、日本だと条例に引っ掛かるが、DNSエラーのページに広告を乗っけるのも、似たようなものかもしれない。問題は、道路だったら国や地方公共団体が取り締まれるが、ネットの世界は中国などの国でない限り、基本的にはieeeなどの非政府団体が性善説で運営していて歯止めが利かない、ことそのものが問題かもしれません

○ Googleが恨まれる理由とは: 
くしくも、上のOpenDNSが恨まれる理由の文章が、一言一句そっくりそのままGoogleにも当てはまります。しかし、Googleの場合は著作権やストリート・ビューの問題で、本当に物理的・金銭的に不利益を被っている人がすでにいっぱいいる。さらに、数万人の社員に創造性の高い仕事をやり続けさせるために、「そのうち紙おむつとかGoogleが作るんじゃない」と揶揄されるほど、新規サービス開発・参入のスピードは、全然衰える気配がない。このあたり、あまりに度が過ぎると、中国の例ではないですが、何かGoogleの息の根が突然止まるようなリスクが将来が発生したりするのかもしれません

○ そもそも無料って、良いことなのか: 
Cases for Entrepreneurshipの授業で1つ心に残った学びに、「オープンソース(無料でソースコードを公開し、皆の力を借りて開発を進めること)は、ローエンド品を開発するには、無限のリソース・パワーを与えるが、ハイエンド品を作るためのリソース・パワーは一切与えない」というものがありました。そのココロは、無料で提供されたサービスはどこかで必ず裏切るため、企業向けなど信用が第一のところには、無料ではかえって参入できない。なぜ裏切るか、についての簡単な例としては、今年のMBA生の夏のインターンでも、「無料でいいから仕事させてくれ」、という人がいっぱいいましたが、フルタイムの仕事を賃金ゼロで探す人はいないはずですので、インターン時期が終わるとそのリソースは必ず戻ってきません。Googleは、現在個人ユーザーには無料でサービスを、開発者には無料でAPIを公開している「オープンソース」な企業。一方、昨年から企業向けに有料サービスを展開し始めて、オープンソースからの脱却を試みているようにも見えますが、果たして既存のハイエンドユーザーがどれだけGoogleになびくかは、興味深いです。

一方、「無料より怖いものはない」とはよく言ったものですが、我々個人ユーザーがGoogleにいつか裏切られる日があるとしたら、いつ、どのような形で起こりうるのでしょうか。あるいは、Googleはいずれ個人ユーザーも「顧客」とみなして、サービスを続々と有料化することがありうるのでしょうか
by golden_bear | 2009-12-04 18:00 | ビジネスプラン
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