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12月6日(土)、UC Berkeleyに日本人初のメジャーリーガー、村上雅則氏と、元読売巨人軍4番のウォーレン・クロマティ氏が登場しました。これは、UC Berkeleyの日本研究機関発足50年記念イベントの一環で、2日間に渡り"U.S.-Japan Baseball Symposium"という形で何人もの方が議論していた中の1コマです。 残念ながら私は一部しか参加できなかったので、クロマティ氏のスピーチは聞き逃してしまいましたが、村上氏の講演と、その後10分程度行われたパネルでのクロマティ氏を見れたので、その概略を簡単に説明します。 (1) 村上氏の講演 第一印象は、どこかで見た事のあるお顔と、NHK-BSの大リーグ中継の解説で聞いたことのあるお声。「この方が村上さんだったんだ!」と再認識しました。高校を卒業してからメジャーリーグに行き、大リーグのマウンドに立ち、2年後に日本に帰るまでの出来事をドキュメンタリーのように語っていました。 一番印象に残った内容は、講演の最後に「『我が人生に悔いあり』、と常に思って生きてきた」とおっしゃっていたことです。もともと南海ホークスから米大リーグに"留学"という形で送り出された村上氏は、2年間の間にメジャーに昇進しながら実績を積み上げて、3年目にメジャーとの大型契約を行おうとした矢先に、ホークスから帰国命令。恐らく色々もめたのでしょうが、「高校時代に『アメリカに行かせてやるからホークスに来なさい』と直々に誘っていただいた当時の監督の姿が頭に浮かび、そして実際に行かせてくれた恩義を考え」て、戻ることにしたそうです。「あの監督が一言、『もう少しアメリカにいていいよ』と一言でも言っていてくれたら、喜んで残っていただろうが、そううまくはならず。当時あと数年は米国でやれる自信と環境が整っており、その後の野茂などの活躍を見るに、もしあの時残っていたら自分の人生は全く違うものだっただろう」ということで、悔いあり、だそうです。 この話を聞いて、たまたま手元にある堀紘一氏の著作、「一流の人は空気を読まない」を思い出しました。実は私はこの本に関しては冒頭を少し眺めただけですが、そこでは「日本社会では、日常生活で空気を読むスキルがあるに越したことはない。しかし一方で、人生に何回かの重大局面では、空気を読んでしまったら、必ず失敗する。一流になるには空気を読んではならず、自分で空気を作る位でないとダメだ」といった内容が書かれています。これを当てはめると、村上氏は日本人的価値観を重んじて空気を読み、野茂氏はKYだったのか、と想像するに、自分が今後悔いを残さないために、いつを重大局面と捉えて、その時どういう行動を取るべきか、考えさせられます。 その他、心に残った内容を下記に記します。 ・ 私の時代は東京オリンピックが最優先で、私のメジャー挑戦はマスコミも一言程度しか取り扱っていなかったと思う。今の日本人大リーガーには通訳がついているが、私には当然なく、辞書を2つ持ってキャンプ地に行った ・ 1年目の終わりに対メッツ戦でメジャー初登板した際は、緊張しないように「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」を歌いながらマウンドに上がった。1球目で外角低め一杯にストライクを取れた後は調子にのり、1回を1ヒット2三振1内野ゴロに仕留めた。投げた日に感激はなかったが、翌朝NY TIMESで「初の日本人」と紹介され、初めてどでかいことをしたと感じた ・ 2年目に、アンパイアの判定に抗議し、ロージンバックを上に投げつけたところ、アンパイアが怒り狂って向かって来た。早口で聞き取れずよく分からない顔をしていたらますます怒られ、キャッチャーがなだめてどうにか事なきを得た。後にこの光景をテレビで見ていたサンフランシスコの日系人の長老から、「よくやってくれた」と感謝された。というのも、終戦後20年間、日系人は全く米国人の言われるままにしかできず、私が米国人に対して堂々と抗議しているのを見て胸がすっとしたそうだ。思わぬ貢献をしたと喜ぶ一方、戦争は2度としてはいけないと強く感じている (2) クロマティ氏 我々が小学生の頃、低くかがんで構える姿を真似してた人がいっぱいいましたが、そのひょうきんさは全く失われていませんでした。目玉を大きく見開く、ガムをかんでるかのようにほっぺたを膨らませる、質問者がクロマティの真似を右打者の構えでしたら「オレハヒダリダ!」と怒る、当時最高打率.378と紹介されたあと「今はイチロー」という司会者の声に本気で悲しむ。そして、終了間際に司会からマイクを奪い取り、「ミナサンサイゴハバンザイサンショウデシメマス。セーノ、、、」。これらのしぐさ一つ一つから、天性のカリスマを感じました。 そんな彼の一言は、「自分の成功に一番重要だったのは、日本の文化にどう溶け込むか、なりきるかだった。日本ではどこに居ても自分は目立ってしまったので、とにかく自分から全て何でも日本式に変えて行く事で、何とか受け入れてもらい、味方を作っていった」といったような内容です。これだけのカリスマを生まれ持ちながら、さらに人一倍の努力をして異文化の中に入り込み、成功を掴む姿は、ともすれば互いに批判することに価値を見出しがちなMBA生にとって、非常に見習う点が多いです。 討議後には、親切に写真とサインに応じてくれました。これを見えるところに飾り、今後人一倍アメリカ文化の「空気を読んで」溶け込めるよう頑張り、「空気を読まない」タイミングを見計らう感度を上げて行こう、と考えています。
by golden_bear
| 2008-12-06 22:11
| 学校以外のイベント
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